見出し画像

【修了考査】税務実務の勉強方法

みなさん、こんにちは。(少し間が空いてしまいましたが)今回は税務実務の学習について書いていきたいと思います。


1.試験範囲について

税務実務の試験範囲は論文式試験よりも広く、修了考査の科目の中でも圧倒的なボリュームとなっています。特に普段から税務に触れていない方や論文受験時に租税法を苦手にしていた方は、学習時間の大半を税務実務に割くべきといえます。論文式試験との範囲の違いは次の通りです。

①論文式試験と共通
法人税(個別論点、組織再編税制)、消費税、所得税
②修了考査から追加
法人税(連結納税(グループ通算制度)、国際税務)、相続税、地方税

2.学習ツールについて

(1)テキスト

要点がまとまっているページがあったので、そこに答練などで気づいた事項やひっかけポイントなどを集約し、直前期で高速回転できるようにしていました。またテキストの例題には過去問が多く掲載されていたので、重要な論点についてはひととおり目を通しておくと良いと思います。

(2)答練

取り組み方は他の科目と変わりませんが、なるべく時間制約を体感することと問題の取捨選択の練習ができるよう意識することが大事です。また、試験直前期は答練の暗記がメインになりますが、すべてを暗記するのは効率的ではありませんので、ある程度は捨てる勇気を持つことも必要です(参考問題など出ても差がつかないものは捨てていました)。

(3)講義

どんなに忙しくても①過去の出題実績と今年のヤマ当てを話す回(全体的なものは初回か最終回、分野ごとの詳細版は各分野の初回だったと思います)②修了考査から追加になる分野の回は視聴することをおすすめします。またある程度時間の取れる方は、講義内で重要な例題を指摘して下さるので、該当の例題をメモしておくと良いと思います。

※補習所テキストについて

詳細は後述しますが、相続税の一部についてのみ利用しました。リスクヘッジ目的の利用であり、結果的に出題もされなかったので、基本的には不要かと思います。

3.各分野の対策について

最後に各分野の方針を記載したいと思います。まわりと比較してだいぶ網羅的に学習したと思っているので、みなさんの状況に応じて取捨選択いただければと思います。(個人的には法人税と消費税をしっかり固めることがポイントだと思います)

(1)法人税(個別論点(グループ法人税制含む))(★★★)

①出題のされ方

毎年第5問の大問1で出題され、年によっては第6問でも大問として出題されることがあります(直近だと令和2年度)。第5問での出題形式は論文式試験と同様に別表1・4を埋めていく総合問題で、第5問の配点の40%ほどを占めています。第6問で出題される場合には、グループ法人税制、税務仕訳や別表5、税務処理に関する論述問題などが問われたりします(令和2年度の第6問法人税は正直予想外でした)。

②方針

論文式試験と同様に重要性の高い論点を中心に学習し、点を取りこぼさないことを心がけましょう。私の体感ではありますが、論文式試験よりもシンプルな問題が多いので、なるべく高得点を狙っていきたいところです(各種別表の書き方や税率が分かっているだけで回答できる問題も出題されます)。重要性の高い論点としては、受取配当等、減価償却、租税公課、交際費等、寄附金、給与等、貸倒損失、税効果会計、所得税額控除、グループ法人税制あたりだと考えています。余裕があれば第6問対策として、別表5、過年度遡及、欠損金あたりまでカバーできると安全だと思います。

(2)法人税(組織再編税制)(★★★)

①出題のされ方

第6問の大問1で出題されます。内容としては適格要件や税務処理に関する論述問題、税務仕訳、別表5、欠損金の処理などが出題されやすく、出題された場合の配点は第6問の40%~60%ほどを占めています。第6問の大問1で出題されうる分野の中では、最も出題実績が多くなっています。

②方針

特に出題実績の多い適格要件、合併・分割(適格・非適格とも)、欠損金については、例題や過去問などで演習しておくと良いでしょう。そのほかの部分は答練で出題された箇所を中心に、税務仕訳などを確認しておくと安心です。論述問題については、最低限書かなければならないポイントさえ把握できれば十分だと思います。暗記すべき箇所が意外と多いため、直前期はある程度時間を確保したいところです。

(3)法人税(連結納税)(★★)

※連結納税制度は、令和4年度よりグループ通算制度に移行しますので、あくまで参考としてご覧ください。

①出題のされ方

第6問の大問1で出題されます。内容としては連結欠損金の処理、時価評価、投資簿価修正、計算の流れのうち個別納税と異なる部分などが出題されやすく、出題された場合の配点は第6問の40%~60%ほどを占めています。特に時価評価については連結欠損金の処理にも絡んでくる論点のため、注意深く対策したいところです。

②方針

①で述べた論点を中心に、例題や過去問で演習しておくと良いでしょう。また時価評価については、対象資産の要件や時価評価対象外子法人の種類などが論述問題として問われやすいため、ある程度の暗記が必要です。ちなみに講師の方いわく連結納税の出題はきれいに3年に1度の周期があり(直近は平成30年度)、また令和4年度からグループ通算制度に移行するため出題できるのが令和3年度で最後であることから、令和3年度の出題可能性が高いとのことでした。そのため昨年度は答練でも出題されませんでしたが、万が一出題された場合にはダメージが大きいことを考慮し、重要性★★としました。

(4)法人税(国際税務)(★★)

①出題のされ方

第6問の大問2もしくは大問3で出題されているようです(直近は平成27年度)。内容としては外国子会社合算税制(いわゆるタックス・ヘイブン税制)に関する用語の穴埋め問題、計算問題が出題されています。出題された場合の配点は第6問の10%~20%ほどを占めています。

②方針

国際税務は主に外国税額控除、移転価格税制、過少資本税制、過大支払利子税制、外国子会社合算税制から構成されます。そのうち、出題実績のある外国子会社合算税制と、寄附金に関連してくる移転価格税制をカバーできれば十分だと思います。外国子会社合算税制については、用語とその定義を暗記したうえで、余裕があれば計算も確認すると良いでしょう。正直出題実績と配点を考えれば重要性は★としたいところですが、昨年度は答練で出題されたため★★としました。

(5)消費税(★★★)

①出題のされ方

毎年第5問の大問2で出題されます。内容としては論文式試験と同様の総合問題や納税義務者の判定が中心で、その他取引区分の判定などが問われることもあり、配点は第5問の40%ほどを占めています。

②方針

方針は論文式試験と同様になると思いますが、令和2年度に税率変更があり計算方法が複雑化しているため、計算問題を解く訓練が必要です。私の体感ではありますが、論文式試験よりも部分点が取りやすい出題となっているので、論文受験時に消費税を苦手としていた方でも5割以上は得点できるようにしたいところです。また総合問題では税抜経理方式が出題されることもあるため、指示を見落とさないように注意が必要です(平成30年度が税抜経理方式の問題となっているため、計算方法を確認しておくと良いでしょう)。

(6)所得税(★)

①出題のされ方

第5問の第3問や第6問の第3問などで出題されます。論文式試験のような総合問題というよりは、特定の所得についての個別問題や他の税目(法人税、相続税、消費税)と比較させる問題が出題されやすいです。年によって配点にばらつきがありますが、科目全体の10%~20%ほどになると思われます。

②方針

出題形式にばらつきがあるうえに、配点も大きくなりにくいことを考慮すれば、あまり学習時間をかけないことが得策だと考えています(費用対効果が悪い)。私は答練で出題された論点(個人・法人間の譲渡、国外転出時課税)と、比較的出題の多い給与所得にしぼって学習しました。令和2年度は予想に反して所得税の出題が多くなりましたが、答練が当たったことと条文を参照できたことでなんとか耐えることができたと思います(おそらく配当所得は初めての出題だったと思われます)。

(7)相続税(★)

①出題のされ方

第6問の大問2などで出題されます。内容としては相続税計算の流れを問う総合問題、財産評価(株式)、みなし相続財産などが出題されています。年によって配点にばらつきがありますが、第6問の10%~30%ほどになると思われます。

②方針

法人税や消費税と比べると優先度が低くなるため、出題実績のある論点や答練で出題された論点にしぼって学習すると効率的です。最低限計算の流れは押さえておきたいところです。ちなみに私は補習所考査で財産評価(土地)が頻繁に出題されていることから、この部分について補習所のテキストを参照しました。修了考査での出題実績は無いようなので、余裕が無い方は気にしなくても問題ないと思います。

(8)地方税(★★)

①出題のされ方

平成30年度に初めて第5問の大問3として出題されました。内容としては外形標準課税の総合問題で、配点は第5問の30%ほどを占めています。

②方針

外形標準課税の総合問題にしぼって学習すると良いでしょう。外形標準課税は満点を狙いに行くと時間がかかりますが、60%程度の得点であれば短時間で狙いに行くことができるため、リスクヘッジとして学習することをおすすめします。(付加価値割の報酬給与額以外の部分で点数を積み上げることができれば60%程度は確保できると思います)


いかがだったでしょうか。冒頭で申し上げたとおり税務実務は範囲が膨大であるため、戦略立てて学習することが必要です。修了考査の合否は税務実務にかかっていると言っても過言ではないので、しっかりと取り組まれることをおすすめします。次回は監査実務・職業倫理について書きたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?