やるときはやる、寝るときは寝る
そろそろ冬の気配。
私は今年、よくスカパーのプロ野球中継を観ていました。ひいきのドラゴンズがまあまあ強かったこともありますが、これほど野球の試合をテレビで観たのは数年ぶりのことです。
ステイホームで時間があったこともありますが、野球中継は仕事しながら観ることができます。サッカーは忙しすぎてダメ。野球は「ながら観戦」にちょうどいいのです。
今年の「無観客試合」中継には、いくつもの新鮮な発見がありました。
そのひとつが無観客だからこそわかる「ピッチャーの声」。投球の際、1球投げるごとに声の出るピッチャーがいます。これに対し、黙々と投げ続けるピッチャーがいます。
声の出るほどの全力投球、そして淡々とした投球。
私はこの対照的なスタイルを、つい、仕事に置きかえていました。
ベテランの持ち味とは?
1球ごとに気合い十分、「おりゃあ」と投げるピッチャーは終盤登場するリリーフ(抑え)に多いです。1イニング「3人だけ」を抑えに出るリリーフが全力投球で飛ばして行くのは当然。しかし、長いイニングを投げる先発投手はこれではもたないのか、淡々と投げるタイプが多いようです。
そしてもうひとつ。
声を出すタイプは20歳代の若手に多く、ベテランには少ないです。経験豊富なベテランほど「力を抜くところと入れるところ」のメリハリを理解しているのでしょう。これこそが経験豊富なベテランの持ち味なのですね。
実はこれ、ビジネスでも大事なことです。
力を抜くべきところでは抜く。そうでないと「いざ」というところで力が出せません。すべての場面で全力で乗り切るのは体力的にも精神的にも無理というもの。経験と年齢を重ねるうち、そのことを体感的に理解できるかどうかが長く働けるかどうかの分かれ道。
「ここ」という局面では全力を出すが、そうでないところでは手抜きして体力・気力を温存する。ここで問題は、本人にその見極めが出来ているか、ということです。
仕事にメリハリを付ける
私は仕事よりも、主として競馬やポーカー、麻雀などの賭け事でこれを学んできた気がします。すべての局面で全力で前に出ると必ず負けます。「降りるべきところでは降りる」勇気を持たないとトータルで勝つことができません。賭け事において「降りる」のは逃げではなく積極的な態度なのです。
この点、賭け事などしたことのない私の弟子などはいつも精一杯に頑張ろうとします。「もうちょっと手を抜けよ」と怒るわけですが、手の抜き方を知らないのか、「先生、ちゃんとしてください」と反撃してきます。本当に困ったものです。
私の弟子に限らず、さいきんのビジネスマンは「ペースを変えずに仕事する」タイプが増えてきたように感じます。しかも、どういうわけか、かなり一生懸命。まるで1球入魂のリリーフ投手のごとく、目の前の仕事すべてに全力で取り組もうとする。
私からみると、「そんなんじゃ睡眠不足になって身体壊すぞ」と心配でなりません。コロナワクチンと一緒に、人の性格を「いいかげん」に変える新薬でも現れないかと期待しているところです。
「ここ一番」を見分けられる感性を
脱サラして自営業・フリーランスになりたての新人にも全力投球タイプが多いです。やる気十分だし、経済的な不安もあるから一生懸命がんばってしまう心情はよく理解できる。
しかし、自営業・フリーランスこそ「力を入れるところと抜くところ」の見極めが必要です。やろうと思えばそれができるわけだし。毎日to doリストを片付けるような仕事ぶりでは、大事な仕事とそうでない仕事がごちゃごちゃになって「ここ一番」を見分ける感性を失ってしまいます。
「やるときはやる」
この前提として「やるとき=勝負どころ」を見極められる感性が必要。そしてもうひとつ、それ以外の「やるべきでない=どうでもいい」ところでは抜けるだけ手を抜く”脱力技”を身につけたいものです。
まだまだコロナは心配ですが、私はこれが収まったあとのことを心配しています。
経済が悪化し、売上が下がっていくと「1イニングから全力で飛ばす」仕事ぶりが増えてくるにちがいない。実は、景気が悪いときこそ必要なんですよ、「やるときはやる、寝るときは寝る」仕事ぶりが。そうでないと長続きしませんって。
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