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グレイステクノロジーと監査

みなさんこんにちは。遅ばせながら、先日不正経理が発覚し明日2月28日に上場廃止となるグレイステクノロジーについて、特別調査委員会の調査報告書を読んでみました。私も売上に対する監査手続を行なっておりますが、正直ここまでされたら不正は見抜くことができないな・・と言うのが感想です。


しかしながら、それでもnoteにまとめておいて、手続を行う上での教訓にしようと思いました。

【マネジメントレター】

マネジメントレターというのは監査上で発見した事項について経営陣に共有する文書です。意見に影響を及ぼす事項までとは言えないけれど、懸念がある場合にマネジメントレターにしたため改善を促します。

色々な会社向けのマネジメントレターを見たことがありますが、改善策のクオリティは玉石混交で、クライアントのビジネスを深く理解し、改善策が具体的かつ効果的なものもある一方、指摘事項で終わっており改善策が記載されていないものあります。まさに会計監査人の技量が問われるものですが、同時にクライアントに価値を提供することができるものでもあります。

グレイステクノロジーの会計監査人は売掛金の回収遅延に対してマネジメントレターを発行していました。しかしながらマネジメントレターの件は監査役会では共有されず、監査役も覚えていないとのことでした。会計監査人はマネジメントレターの改善策の実施状況について必ず確認が必要ですね。

【会計監査人に対する偽装工作】

会計監査人に対する偽装工作は章立てされて記載されておりますが、その中でも気になったものだけ下記に挙げてみます。

①入金の偽装

売上の実在性をテストする上で、入金の事実まで追いかけることはどの監査法人でも行われております。どんなに怪しい取引でも入金があれば、まぁお客さんが入金しているんだから売上はあっただろう・・と。

この不正では、不正→新株予約権での株式ゲット→売却→入金偽装の流れで株式売却の代金を入金に偽装しておりました。しかもお客さんの本社のある銀行の支店からお客様名義で。これは会計監査人は通常の懐疑心では見抜けないだろうと思います。

②残高確認状の回答偽装

会計監査人は売掛金の残高について、お客さんに確認状を発送し、お客さんの買掛金残高を記載して(もしくは会社の売掛金とお客さんの買掛金の金額に相違がないか回答を記載)返送してもらいます。確認状は第三者から直接会計監査人が回答を得るものであり、一般的に証拠力が強いものだと言われております。

この確認状を会社がお客さんから何らかの形で入手し、勝手に会社印を押したり、金額に相違がないと記載していました。

確認状の発送や回収は主に監査法人の新人の仕事であり、会社印の押印や回答者の役職など確認状に不備がないかを確認します。時々個人印で返送されることがあって、そういう場合は再発送を行います。

回答するお客さんには「お願い」することになります。なので時々再発送すると嫌がられるんですよね・・会社の方からお客さんは大事なビジネス相手だから迷惑をかけることはやめてくれと強く言われたりすることがあります。今回の報告書にもお客さんが迷惑しているから個人印で良いじゃないかと突っぱねるような記載があり、「自分が嫌がられた確認状はまさか」と思ったりもします。

③メールアドレスの偽装

売上の実在性に対する証憑としてお客さんとの商談メールのやり取りを依頼することがあります。今回はお客さんのメールアドレスも偽装されているということで正直ここまでやるか!という気持ちです。

監査手続上、メールアドレスについてはドメインが実在しているかについてや相手が実在している人物なのかについて確認しますがおそらくその上を行く偽装工作を行っていたのでしょうね。

以上簡単ではありますが、偽装工作の中身と監査について書いてみました。

詳しいことは下記のリンクに記載されておりますので気になる方は是非読んでみてはいかがでしょうか。会計監査人に対して行った偽装工作はP74以降にございます。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/6541/tdnet/2072811/00.pdf

正直上場して機関投資家からのプレッシャーがあるのは当たり前で、それが理由で不正に手を染めるなら初めから上場なんてすべきではないと思います。

また今度!


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