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”不自由”な”自由”の女神-直島旅行記vol.2-

プリンを食べた後、元気を取り戻した自分は「家プロジェクト」の一つである「はいしゃ」に向かった。各「家プロジェクト」の作品は徒歩10分もあればたどり着ける。はいしゃに向かう道中、おもむろにカバンからイヤホンを取り出したがつけるのを止めた。普段はイヤホンをつけることで周囲の雑音から逃れ、自分の世界に浸っているが、今はつけるべきではないと思った。周りと分断するのではなく、一体となって「自分は今ひとりで直島に来ている」と実感したかった。

そういうわけで、ビニール傘が雨を弾く音をBGMにしてながら「はいしゃ」に着いた。と、同時に「これは好きなやつだ!」と直感で目の前の物体に対して高揚した。「はいしゃ」は歯科医院兼住居であった建物を、大竹伸朗が丸ごと作品にしたものだ。外見はまさに「廃家」。錆びたトタンや薄汚れた木板、昔ながらの看板やネオンサインが建物全体に貼りめぐらされ、圧倒された。

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建物の中に入ると、外見以上に狂気を感じテンションが一段階上がった。床はガラス張りでガラスの下には、どこかわからない風景写真や海外紙幣、手紙など(1つ1つに意味はあるのかもしれないが)意味の分からないものが所狭しと挟まれていた。壁には幼稚園児のクレヨンの落書きみたいなものが無数にあり、自分がこっそり書き加えてもバレないようにだろうと衝動に駆られたが止めた(大変大人になってしまったものだ)。

部屋の奥にはなんと自由の女神が立っていた。1階の屋根を突き破って、家の中に自由の女神がとても窮屈そうに存在したのだ。1階からは女神のほとんど下半身しかみえず、実際に自由の女神は見たことはないが(そもそも海外旅行童貞である)、そこにいた女神は実物よりも遥かに大きく感じられた。

"自由"の女神が”不自由”に窮屈そうに家の中に立っている様は、本物の女神よりいくぶん”自由”に感じられた。女神の周りの壁には、実物の写真やイラスト、記事などがこれでもかというくらい貼り付けられていた。階段を上り、2階に上がると女神のご尊顔をまじまじと拝見できた。2階は普通の木床で壁に落書きもなく、一般的な住居といった感じだった。1階にいるときは周りのアバンギャルドさによって感じなかったが、2階に来て初めて「家の中に自由の女神が立っているのはおかしいよな」と思った。(自分もいつか日本家屋のなかにスフィンクスでも鎮座させようかな)

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最後まで読んでいただきありがとうございます!! 東海道中膝栗毛の膝栗毛って「徒歩で旅する」って意味らしいですよ