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豊島横尾館-直島旅行記vol.5-

二日目の朝。清々しい朝だった。昨日の曇天とは打って変わって満天の青空だ。今日は月曜日で、直島の美術館は一堂に休館日だったので隣の豊島(これで”てしま”と読む)に向かう予定だ。豊島へは宮ノ浦港から小型フェリーで行くので、気持ちいい空気とともに宮ノ浦港に向かった。チケットを買い、船内に乗り込んだ。小さい船内には想像以上の乗客がおり、自分は席と席の間の非常用椅子に渋々座った。小さなフェリーだったため、波をつき進む衝動がドドドと直に感じられ、窓を覗くと水面が日光をまばゆいほど反射していた。20分ほどで豊島の家浦港に着いた。港に併設されているレンタルサイクルで電動自転車を借りた。初めて電動自転車に乗ったので自転車の自走力を制御できず、まるで懐いていない暴れ馬に乗っているようだった。今日の目玉は豊島美術館であり、ここは入場予約が必要なため自分は12時に予約をしておいた。現在時刻10時、予約の時間まで時間があったので家浦港からほど近い「豊島横尾館」に暴れ馬をなだめつつ向かった。2~3分ほどすると赤いガラスが特徴的な建物が見えた。これが豊島横尾館である。豊島横尾館は、アーティスト・横尾忠則と建築家・永山裕子により集落にある古民家を改修して作られたものである。既存の建物の配置を生かした作品展示や、庭や円柱塔のインスタレーション、そして色ガラスで光や色をコントロールすることでその空間は生と死を同時に想起させる場となっている。

馬から降りて入口向かうと大きな赤ガラスの壁があり、その向こうには日本庭園が広がっていたが、赤ガラスによって色彩は全くの赤だった。検温をし消毒をし入場券を購入して入った。展示空間は「母屋」「倉」「納屋」に分かれており母屋が入場口であった。母屋にも何点か作品があったが、同タイミングで入場した家族連れが、ツアーなのかガイドさんが1つ1つ丁寧に作品の説明をしながら進んでいたので、そそくさと母屋から出で庭に出た。目の前に現れた庭は、赤く塗られた石、川の底はカラフルなタイルで彩られており、そばには金の亀と鶴のオブジェ、水中には錦鯉(こちらは本物)がいた。入口の赤ガラス越しに見たとき、向こうの庭は勝手に石は灰色で全体的に落ち着いた自然色だとイメージしていた。が、フィルターを外し自身のの想像とはかけ離れた光景にあっけにとられた。

赤ガラスから庭を見ると死んだときの光景(実際に死んだことはないが)のように見えた。赤ガラスによって色彩がコントロールされ、向こうの風景は生きていた時に見ていた馴染みのある風景の色に見えた。死後の世界から生きていた世界を憧憬しているような。

庭を抜けて、納屋に入った。そこには山水にたたずむ男、その男の顔は福笑いのようにぐちゃぐちゃであり、そばには庭と同じように鶴と亀そして梅と松の木が鎮座しており、いかにもおめでたい絵。だと文面上では思うが、細かく見ると、男の手には骸骨を携えており、おまけに足がない。その横には無数の屍の上でタキシードやドレスを身にまとい優雅にダンスする3人組が描かれていた。また、有名な春画をリメイクした作品など、生と死を面白くコラージュしていた。

その後、倉や銀ピカなトイレのインスタレーションを見てその場をあとにした。


最後まで読んでいただきありがとうございます!! 東海道中膝栗毛の膝栗毛って「徒歩で旅する」って意味らしいですよ