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護王神社-直島旅行記vol.3-

「はいしゃ」の興奮冷めやらぬまま、家プロジェクトの最終地点である「護王神社」に向かった。これは、江戸時代から祀られている護王神社を杉本博司が改築したもので、本殿と拝殿そして拝殿の地下の石室からなっており、拝殿と石室はガラスの階段でつながっている。地下の石室は杉本によって設計されたらしい。

護王神社は山の上にあり、ほかの作品に比べて少し遠い。全ての家プロジェクトは午後4時半に終わるが、現在時刻は午後4時。女神に時間を取られすぎた感は否めないが、早歩きで山頂を目指した。護王神社については以前から知っていた。去年の夏ごろ緊急事態宣言も解除され、京都にある京セラ美術館が改装されたとのことで赴いたのだ。そこでちょうど開催されていたのが杉本博司「瑠璃の浄土」であり、本展でたまたま護王神社の存在を知ったのだ。真っ暗な地下の石室の中からみえる外光、そして長い石室の通路を抜けた先に広がる瀬戸内海。そのときは護王神社のレプリカと映像しか見ていないが、その壮厳さゆえに「これって実在するんですか?」と館内の役員さんに尋ね(当たり前のことを聞いてしまったと今更恥ずかしさを感じる)、「実際に行って、中に入ることもできますよ。」と言われたことを克明に覚えていた。

早歩きで山を登り、どうやら中間地点らしき所に辿り着いた。そこからは、本村地区が一望でき、反対側には瀬戸内海が広がっていた。と、景色を楽しみたいのはやまやまであったが、時間がないので一瞥して先を急いだ。そこから少し歩くとお目当ての護王神社に着いた。

「見たことあるやつや!」と声に出してしまった。「ほんまに階段ガラスでできてるやん!」とも。幸い周りに人はいなかったが、間違いなく神社の厳格さにはふさわしくないリアクションをしてしまった。務めて冷静を装いながら神社の周りを一周した後、本殿から少し下った石室への入口に向かった。入口は狭く、自分が一人ギリギリ入れるくらいのサイズであった。入口から続くコンクリート製の狭く暗い通路を進み、どんつきまで差し掛かると右手に拝殿より続くガラスの階段が地上からの僅かな日光を反射して輝いていた。それ以外そこには無かったので再び来た道を戻ろうと振り向くと、狭く暗い通路の先から外の光が見えた。その日は雨であったから外にいるときは薄暗く感じられたが、石室から差し込む光は真っ暗な石室に差し込む唯一の光であり、外にいるときには考えられないほどの輝きを放っていた。通路を進むにつれて光に包まれていた景色が鮮明なり、目の前に広大な瀬戸内海が広がっていた。この一連の流れは去年美術館で映像で見たのに、先に同じ「見たことあるやつや!」とはならなかった。映像からは汲み取れない感覚がそこにはあった。

ちょうど終了時間になったので下山し、再び小野さんに迎えに来てもらった。相変わらずがたつくパジェロミニに揺られながら宿に戻った。


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最後まで読んでいただきありがとうございます!! 東海道中膝栗毛の膝栗毛って「徒歩で旅する」って意味らしいですよ