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風俗営業と照度規制のはなし お店にスライダックスがあると風営法違反なのか

最初に余談から。
2023年11月2日に私が所属する神奈川県行政書士会で県警本部の方からご講話いただいた際に、いわゆるスライダックスが存在していても、スライダックスで照度を最小限に絞ったうえで総合的に照度を維持できている状態であれば問題なしとする旨のお話がありました。私の認識では若干の規制緩和にあたると思います。今後の運用で多少の疑義または混乱が起こるかもしれませんので、気になることが起きましたらお知らせいただきたいです。

風俗営業者にとっての照度規制とは


もっぱら風俗営業の話として、照明器具の問題を取り上げます。
風俗営業では「構造及び設備の技術上の基準」というものが規則で定められていて、たとえば風俗営業の1号(社交飲食店:いわゆるキャバクラなど)では「第三十条に定めるところにより計つた営業所内の照度が五ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。」と定められています。
この基準を維持していないと風俗営業許可をいただけないし、許可後もこの基準を維持しながら営業しないと構造設備維持義務違反という違反行為になり、行政処分を受けるおそれがあります。

警察が照度をチェックする方法


風俗営業許可を申請した際には必ず警察の店内検査がありますが、その際に飲食系風俗営業の場合は必ず照明設備のチェックをされます(パチンコ営業の場合はあまり気にされない傾向があります)。
申請時に照明設備と音響設備について詳細に記載した図面を提出し、立ち入り時の設備状況が図面と一致しているかを確認されます。
何ワットのダウンライドがどこに何個、といった記載があり、さらにそれぞれの照明器具の配置箇所をレイアウト上に表現した図面です。
これがトイレや調理場など営業所全体にわたって表記しろと言われるので、こういった図面を作成するのはかなり骨がおれる作業です。
常識的には「客室だけでいいじゃん」とは思いますが、法令上は「営業所内の照度が」となっていて、それを真に受けて行政側も「営業所全体で規定の照度を維持するべき」という現実離れした解釈を持っています。
それを改めましょうよと業界団体の会合などで提案しても無視されてきたし、本部への質問でも何度か確認したので、私としてはもう知らん、という気分です。
ちなみに5ルクスというと<新聞記事がギリギリ読めるくらい>とよく言われますが、人間の目の精度は日光などの影響で大きく変わるのであまりアテにできません。
警察職員が照度をチェックする際には、照度計という小型の器具を使用しまうす。私も持っていますが、昼間だと店の小窓が空いているだけで照度はかなり変わりますので、正確な照度を測れない場合が多く、あまり使用したことがない測定器です。

スライダックスの問題

飲食系の店舗では店内を暗くするために意図的に照度を調節したいという事情もありえますが、最近は照度が明るめのお店の方が主流なので、掃除のときにもっと明るくしたいから、といった理由でスライダックスなどを設置しているケースがあります。
行政書士が社交飲食店の風俗営業許可申請を扱う際には、初期の段階で「スライダックスあります?」とお客さんに質問します(スライダックスって何?とよく言われます)。
もしスライダックスがあるのなら、警察が来る前に撤去してくださいとお願いしますが、この工事は電気工事士の資格が必要なので、ママさんがその場で知り合いの工事業者さんに電話して相談したりします。
配線状況にもよりますが数万円の費用がかかるので、事業者さんたちにとってはため息の出る話です。
ですから、クラブやバー営業のために居ぬき物件を賃貸するのであれば、調光設備の有無を事前に確認しておきましょう。
調光機能が存在する場合は、警察検査の際になにかしらの問題が起きると覚悟しておいてください。つまり、調光機能はきれいさっぱり存在しない状態にしておくのがお勧めです。
警察職員が立ち入った際には照明器具のスイッチの場所を聞いてきます。
「ここです」と案内すると、スイッチを点けたり消したりして調光機能の有無を確認します。
ほとんどの場合は客室部分しかチェックしませんが、私の経験では、倉庫やトイレをチェックされたこともあるので油断なりません。
ところで、最近はいろいろな照明器具が安く売られていますね。
事業者さんはエンターテイナーですから、いろんな設備を置いて営業したい気持ちはわかるのですが、図面を作る立場からすると、これは非常に困った問題でもあります。

図面にどこまで表示するのか

営業所全体の照明設備を細かく図面で表現するのはかなり大変です。大きい照明設備だけでいいんじゃない、とは思っています。でも実際の検査の際には、豆電球みたいなのが棚の中についてるヤツとか、テープタイプの細くて長いヤツとか、使うのか使わないのかわからない飾り照明なども表記しろと言われることがあり、図面を作り直して差し替えるのが面倒なものですから、とりあえずありとあらゆる光りモノを図面に表記してしまいます。
そうすると警察職員側もそんな図面を見て「そんなもんか」とそれを当たり前だと思い込むようになり、やたら小さいものでも書いてくれと言ってくるわけです。
警察関係のお偉いさんが「意味ないからそこまで書かないでいいよ」と不退転の決意で宣言しない限りこれは続く恐れがあります。
ただ、最近は徐々に緩和されて、何ルックスなどの表示は不要とか、個数は書かなくていいといった傾向もでてきていますが、これは地域により時期によりいろいろです。
また、営業所全体を表記するのも実に手間がかかります。
風営法施行規則では照度を測定する方法が定められており、その方法のなかで具体的に想定される場所、たとえばパチンコ店であれば、客席のある場所と賞品提供場所(つまり客室)のみで表記すればよいと思いますが、現状ではそうはなっていないことが多いです。

そもそもどうして照度規制が必要なのか


風営法が店内照度にこだわる理由は<暗いといかがわしいことをする>という発想だからです。
暗くて見えにくいことをいいことに、本来許されないような過激なサービスをする可能性がある。
実際にそういう店は世の中に存在していますからね。でもほんのごく一部です。
パチンコ屋さんも照度規制を受けていますが、パチンコ店の中に暗い場所を作ってそこで怪しいことをする、なんてことは今どき考えにくいです。
しかも、倉庫、トイレ、事務所、駐車場まで含めて照度を維持しろなんて、どうかしてます。
大型パチンコ店の駐車場を営業所に含めて営業許可申請したときに、巨大立体駐車場の蛍光灯を細かく図面に記載していたのですが、検査のときに警察職員から「ここの蛍光灯切れてるけどどうする?」と言われ、「交換します」と伝えたら、「じゃ、交換し終わったら連絡して下さい。また確認に来るから。」と言われたことがあります。それで、再度確認に来たら「あれれ、別の蛍光灯が切れてるけれど・・・」
そりゃ何百という数の蛍光灯があるのから、数日たったらどれかが切れてるでしょうに。
これでは検査が永遠に終わらないと思い、社長さんにお願いして古そうな蛍光灯を全部交換していただきました。
こんなバカげたことも起こりうるので警察の検査はなめたらいけません。

調光機能があっても諦めるのはまだ早い

スライダックスなどの調光設備が一つでも存在していれば、警察職員にそれを探知された場合、なにかしら問題になります。
しかし、その問題をクリアできる場合があります。
風俗営業許可申請の場合、警察検査でスライダックスが存在していたとしても、許可条件を付与することで、スライダックスが存在したまま営業許可をもらえる可能性があります。ただしこの対応は都道府県によっていろいろなので、この方法は通用しない可能性が高いことをご理解ください。
さらには、調光機能が影響している照明設備が全体のなかの一部である場合は、調光機能がない照明設備だけで規定の照度を上回ることが確認できれば許可される可能性があります。
これも都道府県によって解釈が異なっていると思うので、この点ご承知おきいただきたいです。
いずれにせよ、照明設備は面倒くさい話になりやすいのです。
パチンコ店の構造設備検査において、事務所や倉庫の調光設備を指摘された経験が何度があります。
風営法の規制を受ける業種の皆さんには、この点ご理解いただきたいです。
無駄な解釈が少なくなりますように。。。

電話有料相談もあります

以下の<ココナラ>の案内ページから電話有料相談がご利用になれます。
さらに詳しく、またはほかのテーマでも、風営法に関連してお聞きになりたい方のための電話相談サービスです。
相談時間をあらかじめ取り決めて実施できます。
1分ごとに課金されます。

バー、遊技場ほか風営業界の手続と法規制を解説します
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(風俗営業に係る営業所内の照度の測定方法)

風営法施行規則第三十条 法第十四条の営業所内の照度は、次の表の上欄に掲げる営業の種別の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定める営業所の部分における水平面について計るものとする。

法第二条第一項第一号から第三号までに掲げる営業

一 客席に食卓その他の飲食物を置く設備がある営業所にあつては、当該設備の上面及び当該上面の高さにおける客の通常利用する部分
二 前号に掲げる営業所以外の営業所にあつては、次に掲げる客席の区分に応じ、それぞれ次に定める客席の部分
イ 椅子がある客席 椅子の座面及び当該座面の高さにおける客の通常利用する部分
ロ 椅子がない客席 客の通常利用する場所における床面(畳又はこれに準ずるものが敷かれている場合にあつては、その表面)

法第二条第一項第四号又は第五号に掲げる営業

一 営業所に設置する遊技設備の前面又は上面
二 次に掲げる客席(客に遊技をさせるために設けられた椅子その他の設備及び当該設備を使用する客が通常利用する客室の部分をいう。以下この号において同じ。)の区分に応じ、それぞれ次に定める客席の部分
イ 椅子がある客席 遊技設備に対応する椅子の座面及び当該座面の高さにおける客の通常利用する部分
ロ 椅子がない客席 客の通常利用する場所における床面
三 ぱちんこ屋及び令第十五条に規定する営業にあつては、通常賞品の提供が行われる営業所の部分


以下、解釈運用基準より関係部分を抜粋

施行規則第7条の表中「営業所内の照度が10(5)ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有する」とは、一般的には、照度の基準に達する照明設備を設けていることで足りる。ただし、施行規則第2条第2号に掲げる客室(客席のみにおいて客に遊興をさせるための客室に限る。)を除き、照度の測定場所について、照度の基準に満たない照度に自由に変えられるスライダックス等の照明設備を設けることは認められない。また、照明設備のほかに、営業時間中に常態として光を発することが想定される設備が設けられている場合は、当該設備と照明設備の双方の光によって、常態として照度の基準に達するのであれば、「必要な構造又は設備を有する」ことになる。

照度の規制法第14条は、風俗営業に係る営業所内の照度について、規制の内容を明確にするため、数値により規制することとしている。この規制により、風俗営業者は、施行規則第30条に規定する方法で計った照度が常態として施行規則第31条に規定する数値を超えるようにしてその営業を営むこととなる。ただし、法第2条第1項第2号に掲げる営業における施行規則第2条第2号に掲げる客室(客席のみにおいて客に遊興をさせるための客室に限る。)については、個々の営業時間につき半分未満の時間に限って、いずれかの測定場所の照度を5ルクス以下とする場合は、本条の違反には当たらないこととする。

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ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 <(_ _)>