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【読書メモ#30】幕末史 半藤一利 新潮文庫

「幕末史」 維新とは革命だった。

1853年6月にペリー率いる米艦隊が浦賀に。そこから25年の間に封建社会を打ちこわし新政府を樹立。激動の時代が何をきっかけに、どんな社会的なフリクションがあり、どのような葛藤、それぞれのキーマンの想いから成り立ったのかを筆者独自の視点て語られる一書。

まさに、今、時代の変わり目を迎え

2021年、新型コロナの蔓延が世界を轟かせ、DX及びカーボンニュートラルという新たな世界的な社会的パラダイム変化の局面にいる。1900年以降の近代産業を基軸にした経済社会の中で成功してきた日本。次の局面はどこに向かうのか。しかし、向かうためには何かを劇的に変えていかなければいけない。まさに、この幕末の時代に起きた、「剣から蘭学」「着物から洋服」、「丁髷を切り落とす」「馬から戦艦」「藩から県」・・・という大胆なパラダイムチェンジである。その点で為政者の心の機微、その時の判断含め当書で紹介されるエピソードは学びがおおい。

変わらねばならぬ大義を示し変わること
変化がマジョリティーになるまで徹底して行うこと。

本当にひとりひとりの意識を変えるまでのパラダイムチェンジは容易ではない。ほぼ無理といっても過言ではない。一度身に着けてしまった伝統、考え、行動意識を変えるのは難しい。だからこそ、変えるものは覚悟が必要だ。
筆者は本書のむすびの章で少し本音を入れて以下のように記載している。

「維新」とカッコよく呼ばれていますが、革命であることは間違いないところです。将軍を倒し、廃藩置県によって自分の属している藩の殿様を乗り越え、下級武士であるものが一斉に頂点に立つ。では、つぎにどんな国を建設するのか、という青写真も設計図もヴィジョンもほんとどなく、なんです。

 本書のよいところはある歴史的な人物を礼賛する記載はありません。勝海舟のように先見の明をもって日々憂うひともいたし、山縣有朋のように考え方を紆余曲折しながらいち早く軍事国家のための礎を作ったひともいた。それぞれその時々の環境条件があり悩み判断する、その姿を描いています。
 時代を振り返ると正解が何かは判断できますが(それもある視点からかもしれませんが)その時を生きるものにとって何が正解かなんてわかりません。まずは何ができるか、からです。
 本書はそんなことをよく考えさせてくれる場面に多くで合わせてくれます。

答えは「五箇条の御誓文」にあり?

本書のなかに日本近代民主主義の原点となる「五箇条の御誓文」の記載があります。様々な政治的な見方もあるが、私の知識不足でどのようにとらえられたかが良く分かっていないので、ここでは一旦歴史的な背景は除いて考えた場合に、私の腹には落ちたので再掲します。少し現在に当てはめて考えてみると気づきがおおいと思うわけです。

一、広く会議を興し万機公論に決すべし
一、上下心を一にして盛んに経論を行うべし
一、官武一途庶民に至る迄、各其の志を遂げ人心をして惓まざらしめん事を要す
一、旧来の陋習(ろうしゅう)を破り、天地の公道に基づくべし
一、智識を世界に求め、大に皇基を振起すべし

以上、なにが起きるかわからない時代だが、できることは「温故知新」。
過去に学ぶことだともうのです。
読了に時間がかかってしまったが非常にいい視点をいただいた書。
同じ著者が「昭和史」も出しているので引き続き読みたいと思います。

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