サンフランシスコのブラック・メタル・バンドWeaklingを聴く
今回は、ここ数年来愛聴している、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ出身のアトモスフェリック・ブラック・メタル・バンドWeaklingについて。
バンドの来歴
1997年、ギタリストのJohn Gossardとギタリスト兼ドラムプログラマーRobert Williamsを中心に結成。その後以下のようにメンバーが加わった。
John Gossard: guitar and vocals
Josh Smith: guitar
Sarah Weiner: bass
Casey Ward: keyboards
Sam Foster (a.k.a. Little Sunshine): drums
1998年12月に唯一のスタジオアルバム『Dead as Dreams』をレコーディングしたが、Gossardはメンバーの献身に満足せずに脱退し、バンドは1999年に解散。1stアルバムは翌2000年になってからリリースされた。
『Dead as Dreams』レビュー
1.Cut Their Grain and Place Fire Therein
荘厳で分厚いリフと激しいツーバスで開始。フレーズを執拗に反復するミニマルな進行も大いにブラックメタル的。中盤でドゥーミーにスピードダウンし、その退廃的な世界観は本作の幕開けとして相応しい。
2.Dead as Dreams
20分に及び大曲。アトモスフェリックなイントロからディプレッシヴなパートへ雪崩れ込む。ヴォーカルもディプレッシヴ・ブラック・メタルに多い絶叫系で、スケール感と緊張感を次第に高める。ブレイクを入れるタイミングも絶妙。特に中盤以降のドラマティックなパートが聴きどころで、ニヒリスティックな情念を強めていき、ドローン的なフェードアウトも強烈。
3.This Entire Fucking Battlefield
壮大なサウンドで荒廃した戦場をイメージさせる。捻じれたようなアヴァンギャルド系リフの不穏さは尋常ではない。この曲のヴォーカルスタイルは比較的Burzumに接近しており、強い孤独や疎外を感じさせる。特に終盤のキーボードとリフの絡みはインテリジェンスな美しさがあって、螺旋のようなこの黙示録を劇的に閉めてくれる。
4.No One Can Be Called as a Man While He'll Die
より壮大でムーディーな音楽になってきた。特に4分半以降のベースソロはアンビエント的なアプローチで、音色は実に病的だ。続くパートはドラムの演出力が冴えている。終盤は聴き手を追い込むようにリフが加速、このあたりはオーソドックスなヘヴィメタルに近い。
5.Desasters in the Sun
ラストは更に荒廃の進んだ終末論的な世界観に到達する。ヴォーカルが逆に闘争的なスタイルなのも特徴的で、緊迫したリフの反復と加速と相まって怒気の旋風を巻き起こす。休止パートの後のブラックメタルの王道的なブリザード・リフは、メロディックな陶酔がある。最後は不協和音の深淵の中へ溶け込んでいく。なんとも支離滅裂なフィナーレ。
総括
USBM史上、ここまで壮大なスケール感と破壊的なカタルシスを併せ持ったアルバムもない。多様性や前衛性、革新性に訴えるのではなく、また幻想性や神秘性に訴えるのでもなく、ひたすらダークなリフを濃密にペイントし続けることで終末論的な世界観を構築している。
5曲76分というのは長い気もするが、基本的にはミドルテンポで、ギターリフ自体よりも、ブラックメタルらしからぬエフェクトや憎悪に満ちたフィードバックのふんだんな活用が特徴的で、それが圧倒的なダイナミズムに寄与している。
全体としてはBurzumやDarkthorneの影響下にある厭世観と憂鬱に満ちた重苦しい音楽であるが、同時に圧倒的な力強さを持ち合わせており、メロディックなフレーズやドラマティックな展開も相まって、ある種の品を感じさせる美しい名盤に仕上がっている。
その他のデモ音源
『Rehearsal』(1998年)
10分弱の「This Entire Fucking Battlefield」の初期バージョン。
『Live Practice』(1998年)
1998年5月25日収録。1stアルバムのうち「Dead as Dreams」を除く4曲が収録されている。
どちらもインストルメンタルにとどまっており、彼らが長らくヴォーカリストを探しつつけ、適任者が見つからずに最終的にJohn Gossardが担当することになった背景もうかがえる。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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