日記:離任式と素数の話
高校の離任式があった。
離任された先生は何人かいたが、その中のひとりに数学Aを教えてくれたS先生がいた。
離任される先生の紹介とともに、その先生一人一人が全校生徒に向けて最後の話をする時間というものがあった。
数学を担当しているS先生は、この最後の挨拶のときに「素数が好きだ」という話をされていた。
「ふと、空を見上げて見ると、無数の星空が私たちを照らしてくれていることに気がつきます。そんなとき、私は(今、目に映っている星の数よりも圧倒的に素数のほうが多く存在してるんだなぁ)と思ってしまうんです。それが数学のロマンであり、私はそんな数学と素数のことが好きなんです」
これを聞いた私は、とても美しい話だ、と素直に思った。
先生方の話が一通り終わると、体育館の壇上に横一列に並んでいる先生に向き合う形で、生徒が花束やメッセージを持って並び、それを送る時間というものが設けられていた。
あるクラスの担任だった先生の前には、おそらくそのクラス長であろう人物が立っており、マイクを通して生徒が先生にお礼を言い、花束を渡すという流れで進行されていた。
担任を持っていないS先生の前には、生徒会長が立っていた。
いよいよその生徒会長がS先生に花束を渡すターンだ。
生徒会長は、S先生が生徒会を担当していたということで授業内外でとてもお世話になったということをS先生に伝えていた。
その後生徒会長は、先ほどS先生が話していた素数の話に絡めた話をしていた。
「先ほどS先生が話されていた素数の話、とても感動しました。私自身も、素数にとても興味があります。19や31、57など、どのようなタイミングで素数が出るのか、素数は無限に存在するのか。考えただけで眠れない夜もあります(笑)、、、」
、、、あ。
グロタンディーク素数だ。
まさか離任式でグロタンディーク素数に出会えるとは、思いもしなかった。
グロタンディーク素数とは、「57」のことである。正確には「57」は素数ではない。グロタンディークという数学者が57を素数と間違えて説明してしまったことから、この数をグロタンディーク素数と呼ぶ。
生徒会長が例としてあげた素数の中に、たまたま素数ではない数(57)が混じってしまったのだ。
当然S先生は瞬時にこの事に気付き、「57は素数じゃないよ笑」と一言入れていた。本当にこの先生は頭がいいんだなあ。
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