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英語教育は中学からでも間に合うのか?

かの有名な東大卒タレント・林修先生が、早期英語教育を否定したらしい。

「番組では、収録後に渡英を控えた紗栄子の英語教育が話題になり、紗栄子は2人の息子について『1歳の終わりから英語教育しています』と明かしました。
…(中略)…
林先生は『子どもに早期英語教育をやらせている東大出身の親に会ったことがない』と紗栄子の考えを否定。…(中略)…さらに、林先生は『英語できなかった人ほど、自分の子どもに小さい頃から英語を習わせる』とも指摘。(芸能ライター)

このような意見はネット上にも散見される。

英語教育を始める時期については、①英語学習をどのように進めるのか?②いつまでにどのレベルを目指すのか?③好き嫌い、語学への適性、の3つで決まるので一概に言えない。しかし、外資系企業の足切りと言われるTOEIC800を就職活動の始まる大学3年で突破できる英語力を身につけるが目標であれば、中学生スタートは99%の人にとって厳しいと感じている。

時代の変化を考えると、中学スタートの英語は厳しい

根拠のひとつとして以下の表が挙げられる。

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大学3年次でTOEIC800を目指すのであれば、おおよそTOEIC平均700を超える大学を狙う必要があるだろう。このレベルの大学に受かる英語力を身につけている人は、帰国子女も含め、多く見積もって全人口の5%に満たない。つまり、非帰国子女であれば、一部の天才を除いて大半の人が外資系の入社試験の足切りレベルに達しないのである。

冒頭の林先生の言葉について補足する。1965年生まれの林先生が学生の頃は、バブル景気も真っ只中で、日本企業が強かった時代である。この時代は外資系企業など、わざわざ受けなくてよかったのだ。さらに言うと、センター試験でリスニングが導入されたのは、2006年のこと。林先生の時代にはリスニングの対策は全く必要なかったのである。つまり林先生が若い頃に求められていた英語能力は、今より断然低かったと断言できる

しかし、今や日本企業の賃金が上がらない中、給料が日系企業より高くなった外資系企業に入社するのは、一種のステータスとなっている。また、少子高齢化が進む日本国内のみではビジネスが成り立たないため、日系大手企業でもTOEICを足切りにしている企業も増えている。すでにグローバル化へと舵を切った、お隣の韓国ではTOEICの点数がそれなりに取れないと、大手企業に就職する道が閉ざされてしまうそうだが、日本でもこの流れになりつつあると考えて間違いない

すでに、日本も小学校からの英語を教科化しているが、「英語は中学生スタートでも間に合う」は過去の話である。海外在留の日本人も、1990年頃と比べて倍以上の人数になっており、それに伴い帰国子女も珍しいものではなくなっている。このことは英語のスコアの平均を押し上げる方向に働くので、昔より今の学生に求められる英語力の水準はより高いものになっていくだろう。

早期英語教育の欠点

では、一方で早期英語教育を否定する声も強いのはなぜだろうか?

ひとつの理由には、嫉妬とコンプレックスに起因するものだと思う。要約すると、「自分は英語を話せないけど、それがなんだ?自分は十分稼げているぞ。小さい頃から英語を習わせて何になる?バカじゃない?」というものだ。これは、上で述べた通り、今と昔で違うという話に加え、「そもそも、なんで英会話学校がこんな繁盛しているのですか?みんな必要性を感じているからでしょ?」という反論が成り立つ。

もうひとつ加えると、早い時期に英語に取り組めば、リスニングと発音がよくなるのは間違いないが、継続して学習を行わないと、語彙や文法のレベルが低レベルな状態に留まって、仕事で使うには今ひとつという状態になることだ。日本人の幼稚園児が話す日本語を思い浮かべてほしい。地球温暖化がどうとか、不動産の売買がどうとか、大学入試やTOEICの英語の文章に出てくる語彙が、子供の会話に出てくるだろうか?子供並みの英語力では、日本の大学入試を突破するのも難しい。

巷によくある英語教室は、週に1回英語の歌を歌って、踊って、ちょっと会話のフレーズを覚えて、といった内容の教室が多い。これで身につく語彙では、大人が仕事で使う英語に達するのは難しいことは明らかだ。

私は自分の子供に0歳から英語の歌を聴かせている、どちらかといえば英語教育に熱心な親である。が、短い時間で効率よく学習するのであれば、母国語が確立したあとに英語を学習するのがよいという考えも持っている。もし、自分が英語の教師で、「週1、2回の授業で、高度な英語力を身につけるカリキュラムを組む」というテーマで教育をデザインするとすれば、英検をマイルストーンとし、小学生以降に英文を丸覚えするような、割と古くからあるような学習にするだろう。大分の田舎町からHarvardやYale大学などへの合格者を出した、ひろつるメソッドが私の理想形である。(以下に本のAmazonリンクをあげるが、学習法が平凡で目新しい所がないという理由でこの本はあまり評判が良くない。だが、考案者の娘さんがハーバードに受かったエピソードなど、この母娘の考え方は学ぶことが多い。)

幼稚園児が、せいぜい週1回、英語の歌をみんなで歌って踊るレッスンは、「英語が楽しい」という感覚は身につくかもしれないが、それだけで「難しい英語を自由にあやつる」レベルに到達するのは難しい。未就学児の英語教室がコスパ悪いと言われるのは、その辺りに原因があると思われる。

英語教育はいつから始めるか

それでは、何歳から英語教育を始めるのが最適だろうか?これは結局のところ、子供の個性や、各家庭が英語教育に費やせるお金の限界、親の英語力(語りかけができるか?発音はいいか?)の要素もあるので、最適解は存在しない

あえて、大半の人に通じる方法を挙げるとすれば、3〜5歳頃にひらがなの学習をするのと同じように、英語の学習を始めるのが1つのやり方である。このくらいの年齢の子でも取り組めるように設計された、ポピー Kids Englishや、公文式の英語などを利用するのもいいだろう。こういったプリント学習と並行して、YouTubeやNetflixで英語の動画を見たり、興味に合わせて英語の絵本やゲームに親しんでいくのである。

お金に余裕ある家庭であれば、インターナショナル・スクールに入れるのも手だろう。その場合には、日本語が未発達にならないように、家庭で日本語のフォローをしっかりすることが大事である。

プリント学習のできない2歳以前では、できることが限られているが、以下の記事の通り、英語の歌を繰り返しかけ流す取り組みは手軽でおすすめである。親に最低限の英語力があれば、英語の絵本を読み聞かせるのもいいだろう。

0歳からの英語教育のすすめ

日本語がある程度頭の中で確立すると、英語の音を拒否してしまいがちになる。英語に限らず、人はよく見知ったものに親しみを感じ、よくわからないものに近づかない。聞きなれない言語がずっと流れている状況は、ストレスになる。が、反対に、何度も歌などで聞いていると親しみを感じるようになる。

私が息子に対して0歳から英語を始めた大きな理由はここにある。英語に対して特別な感情をいだく前に、英語の音をよく聴かせてしまうのである。

生後半年から毎日、英語の歌を聴かせていた我が子だが、1年経った今では、英語の歌がむしろ大好きになっている。風邪をひいて不機嫌になっても、いつも聞かせている英語の歌を流すと、泣くのを止めるほど楽しんでいる。

脱線してしまったが、結論としては、英語は気楽に長く続ける前提で、早めに始めるのがベターである。

※ちなみに、冒頭の林先生の「東大卒の親が、早期英語教育をしているのは見たことない」旨の発言だが、私の周囲では全く逆の印象を抱いている。外資系に勤めるなど、英語を仕事で使う機会の多い人ほど、子供が小さい頃から少しずつ取り組んでいる印象を受ける。

ただ、そういう人は周りに言わないんですよね。教育ママと思われて、ひかれるので。

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