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【書評】 TRICK スティーブ・ジョブズを教えYouTube CEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法

①この本は何についての本か
著者はシリコンバレーにある高校の教師で、生徒の自主性を尊重した授業プログラムを展開し、その功績が高く評価された。また、その3人の娘もYouTubeのCEOや医学部准教授を務めるなど顕著な成功を果たしている。

②この本でもっとも重要だったと思う点
著者の経験から、人生をより良く生きる秘訣は、Trust(信頼)、Respect(尊敬)、Independence(自立)、Collaboration(協力)、Kindness(親切さ)であるという。親が先回りするよりも、子どもの意思を尊重し、他者との関わりを大切にしつつ自立を促すことが大事だと説く。また、成功を目指して打算的に行動するばかりでなく、他者に対する親切な心も忘れてはならない。

③この本で、心に残った名言や素晴らしい発想

怖い話や恐ろしいニュースばかりが目に入るが、みんなオンラインの情報に惑わされすぎている。統計を見て、危険すぎるという思いこみを見直したほうがいい。(中略)FBIと司法統計局のデータを見ても、暴力や窃盗は1990年からずっと減り続けている。それなのに、アメリカでは10人中6人、つまり半分以上が、犯罪率は年々増加していると信じている。(中略)子どもたちにいちばんよくないのは、人を信用するなと教えたり、過保護になりすぎて自立を奪い、自分で自分を伸ばせない人間にしてしまうことだ。子どもたちが世界に対して心を開き、人生の可能性を閉ざさないことこそ、親の望みなのではないだろうか?
いい大学に入るための得点稼ぎに社会貢献活動を使わないでもらいたい。コミュニティ活動を出願書類に書けば見栄えはいいが、ただの得点稼ぎのためにボランティアをする生徒がいることを大学側はよくわかっている。大学が面接をはじめた 理由の一部もそこにある。会ってみれば生徒が情熱を持っているかどうかがすぐにわかるからだ。 本当に他者を気にかけているのか、それとも大学に入るためにやっているのか見分けがつく。 大学に入るためのボランティァ活動を勧めると、子どもに間違ったメッセージを送ってしまう。 自分の得になるかどうかがすべての判断基準だと子どもに思わせてしまうし、そんな考え方こそ 打ち消さなければならない。
子どもの感情を親がコントロールできるというよくある思いこみは、大間違いだ。 シリコンバレーで尊敬される小児科医のジャネスタ・ノーランド博士も言うように、「親たちは何がなんでも子どもをいい気分にしておかなければならないと思いこんでいる。子どもの幸せを親の責任だと感じ、幸福をコントロールできると考えている」ようだ。 親がどんなことをしてでも子どもが苦しんだり傷ついたりしなくてすむように力を尽くすと、 子どもたちは困難や逆境を乗り越える必要がなくなってしまう。すると、独立心ややり抜く力は育たず、子どもたちは周囲の世界を恐れ、みずからイノベーションをおこしたり何かを生みだしたりできなくなる。
親は子どもに自分のことや成績だけに集中しなさいと教える。子どもがいい成績をおさめ、一 流大学に入り、見栄えのいい仕事を選ぶことを望む。子どもたちは自分のことに忙しすぎて、ど うやって他人を助けたり社会に奉仕したらいいかを考える時間がない。 思いやりと感謝の気持ちは人生で何よりもわたしたちを幸せにしてくれる要素なのに、それは見過ごされてしまう。

④この本で紹介されたようなことをどの様にいかしていきたいか、どのような気付きポイントがあったか。

日本でも近年、学業以外を評価しようというアメリカ型の入試が伸びつつある。面接で話すネタ作りのために、在学中にボランティア活動などをする就活生は昔からよくいたが、その動きが高校生にまで若年化している印象を受ける。

このような流れについて、見た目ばかり着飾る人間が増殖するシステムでいいのか?というモヤモヤがあった。しかし結局のところ、付け焼き刃の演技や虚飾を見抜くため、名門大学の入試担当者や大企業の人事は目を血眼にするだろう。最低限のプレゼンテーションのために、多少の演技技術は必要になるではあろうが、結局自分の本心(何にパッションを感じるか)に向き合う姿勢が今後試されるように思う。

一方で、子どもが自分自身の気持ちに深く向き合う前に、親が自分の経験に基づいて安定な道に誘導しがちなのは、日本にもアメリカにも、よくある光景なようだ。そして、親が子どもに対する尊重をないがしろにして、自分の意見ばかり押し付けることによって、子どもが自分のパッションへの気づきの機会を失ってしまうことが、しばしば不幸な結果につながってしまう。

親がまったく子どもの進路に口を出さないのがいいかというと、それも違うように思える。子どもはその人生経験の少なさから、例えば芸能人のように、成功の見込みが薄く、経済的な破綻の可能性が高いような職業を希望することもある。また、自分の気持ちを正確に把握してすらおらず、思い込みが激しい状態になっている時もあるだろう。

こういった親と子の両者のバランスは微妙で、親の経験が正しいのか、子の思いが世間に受け入れられるかは、誰にとっても判断が難しい。しかし、いかなる場合にも、子どもを尊重した上で、そのパッションが社会の中でうまく実る道を一緒に探せるような、良き相談者でありたいと、私は思った。

また、最後に、社会的な成功をおさめることは確かに大事だが、優しさ(倫理)を失ってはならないというのは確かだ。名門大学に進学しても、「〇〇大学の自分と結婚しただけでもありがたく思え。」とパートナーに言い放って、相手を傷つける人の話を何度か聞いたことがある。そのような人間と付き合う相手も不幸だが、本人も絶えず競争み身を置いて穏やかではないだろう。優しさを失うと、他者との協調を失う。そして他者との協調なしに、大きな事業を成し遂げることは絶対にできない。



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