久しぶりに姉妹喧嘩

こんばんは、今日もお疲れさまです。

うっかり眩しい路地に出てしまったり、たまたま隣に座った人の挙動が気になり過ぎてしまったり、精神は不意なところで削られるから油断ならない日々です。

昨日の夜、妹と喧嘩しました。
よく、美容師や初対面の人間と話していると、姉妹や兄弟の話になって、「喧嘩とかするの?」と聞かれることがありますが、そんなにないかなって答えてるし、思ってる。だからこそ、喧嘩した時のダメージがめちゃくちゃでかい。

喧嘩の原因は、ドライヤーだ。
ある朝妹がドライヤーを使っていたら突然発火し、サロニアのドライヤーが使い物にならなくなってしまったのだ。

責任を感じた妹が買ってきたのは、Panasonicのナノイーなんとかという、かなり性能のいいもので、2万円くらいする。妹は某家電量販店に勤めていることもあり、ここら辺の専門知識に精通している。彼女の買い物なら間違いないと喜んで使わせていただきたいところだが、その2万円のうち半分の金額を請求された。

私は断じて羽振りのいい人間ではない。東京の小さな映像制作会社に勤めていて、給料がいいとは言えない。そのうえ6月は父の日に加えて母の誕生日や恋人の誕生日もあり、かなりの出費が見込まれていた。思いがけず発生した1万円の出費を、快く了解するだけの財力と精神的な余裕がなかった。
今思い出しても情けないけれど、そういうことだ。

それがもしニンテンドースイッチとか、美顔器とかだったらまだよかったかもしれない。私の生活には必要ないから、使わせてもらえなくても困らない。でも、ドライヤーは困る。あなたは道路に高額な通行税を課す独裁者か。

しかし妹は、みんなが使うものだし出資してもらうのは当然と思っているようなところがあり、当たり前のように請求してきたのだから腹立たしいのだ。これが「みんなのことを考えて少しいいモノの買ったの。私が少し多めに出すから、ちょっと手伝ってくれない?」という感じの、丁寧な頼み方であれば、私も姉である、可愛い妹のためにお金なんて工面して、喜んで半額支払っただろう。ところが「払ってよ、あなたも使うでしょ」というではないか。

なんだその頼み方は!と思ったものの、私は怒りをすぐに言葉で伝える瞬発力がないので、その日は丸一日妹のことを無視して過ごした。我ながら陰湿だ。その日は新しいドライヤーは使わず、旅行用にとしまっておいてあった、安価なくるくるドライヤーを使ってしのいだ。お金を払わず使っていたら、妹になんか言われそうだと思ったからだ。
1万円くらいぽんと払えない自分がふがいないのと、どう考えても妹の頼み方が許せないので、その次の日も無視した。そしてその日もくるくるドライヤ―を使った。そしたら妹は2泊3日の大阪旅行へ旅立ってしまった。

くるくるドライヤ―はもはや、人の髪を温めるという目的を忘れ、ただの温風を出す機械と化していた。最初は、壊れるまでこれを使おうと思っていたが、そのドライヤーの熱にさらされた私の髪は、ありありとパサついていた。自宅の洗面所に置いて行かれた2万円のドライヤーを眺めながら、あーこれめっちゃいいんだろうなあと思った。

そしてついに、電源を入れてしまった。
貧相なくるくるドライヤ―とは比べ物にならないくらいの風圧と、均等な温度がお風呂上がりの髪を優しく包んだ。手元のボタンでいろんなモードに切り替えられることが分かり、一つずつ試してみた。
髪はみるみる活気を取り戻し、つやつやになった。若返るとはこのことか。最近のビューティー家電はすごいなあと感激した。確かにこれを使ったら、もうあのくるくるドライヤーには戻れないなあと思った。

大阪から帰ってきた妹は大量のお土産を机に広げ、父や母に楽しそうにその思い出を語った。まだ気を許していなかった私も、妹が買ってきたクッキー缶があまりに可愛くおいしいので、日常会話くらいは交わすようになった。

しかしそれ以来、妹とはドライヤーの話など1ミリもしていない。
そして私はいまだにそのドライヤーのお金を払っていない。

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