がんこおやじが「書き初め」する詩 #日本の漢詩
お正月の書き初めの漢詩をみつけました。がんこおやじの、いきおいある筆運びが見えるようです。
こんな詩です
「新正試筆(しんせいしひつ)」というタイトルの七言絶句です。新正試筆は「書き初め」のこと。
書き下し文と原文を紹介します。
手に 華箋(かせん)を展(の)べて 試みに一揮(いっき)す
従他(さもあらばあれ) 墨瀋(ぼくしん)の 新衣(しんい)に点(てん)ずるは
満窓(まんそう)の 初日(しょじつ) 熙春(きしゅん)の色
愛す 此(こ)の雲煙(うんえん) 筆を繞(めぐ)って飛ぶを
「新正試筆」
手展華箋試一揮
從他墨瀋點新衣
滿窗初日熙春色
愛此雲煙繞筆飛
訳すとこんな感じ
かんたんに訳してみます。
「紙をひろげ、ちょっくら筆をふるってみる。
墨の汁が、新しい服に点々とついてしまったが、ええい、ほうっておけ。
はつ日が窓いっぱいに広がるおだやかな春の日に、
このいきいきと躍動する筆勢がいいんだ」
作者について
信夫恕軒(しのぶじょけん)。1835-1910。鳥取出身、東京で活躍。日本の漢学者、東京大学講師。
ウィキペディアに「性格は偏狭で短気であった」と記載がありますが、この詩からも、その人となりがなんとなく伝わる気がします。
(写真はウィキペディアより)
気になったことば
・從他:「さもあらばあれ」とよむ。ままよ。ほっておけの意味
・熙春:おだやかな春
・雲煙飛:筆勢のいきいきとしたさま。
四字熟語の「雲煙飛動(うんえんひどう)」は、雲や霞(煙)が飛ぶように、筆勢が滞りなくいきいき躍動している、という意味
(参考:呂山 太刀掛重男. 漢詩の手本 第1輯)
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