プレゼンテーション5

がんこおやじが「書き初め」する詩 #日本の漢詩

お正月の書き初めの漢詩をみつけました。がんこおやじの、いきおいある筆運びが見えるようです。

こんな詩です

新正試筆(しんせいしひつ)」というタイトルの七言絶句です。新正試筆は「書き初め」のこと。

書き下し文と原文を紹介します。

手に   華箋(かせん)を展(の)べて   試みに一揮(いっき)す
従他(さもあらばあれ)   墨瀋(ぼくしん)の   新衣(しんい)に点(てん)ずるは
満窓(まんそう)の   初日(しょじつ)   熙春(きしゅん)の色
愛す   此(こ)の雲煙(うんえん)   筆を繞(めぐ)って飛ぶを

「新正試筆」
手展華箋試一揮
從他墨瀋點新衣
滿窗初日熙春色
愛此雲煙繞筆飛

訳すとこんな感じ

かんたんに訳してみます。

「紙をひろげ、ちょっくら筆をふるってみる。
墨の汁が、新しい服に点々とついてしまったが、ええい、ほうっておけ。
はつ日が窓いっぱいに広がるおだやかな春の日に、
このいきいきと躍動する筆勢がいいんだ」

作者について

信夫恕軒(しのぶじょけん)。1835-1910。鳥取出身、東京で活躍。日本の漢学者、東京大学講師。

ウィキペディアに「性格は偏狭で短気であった」と記載がありますが、この詩からも、その人となりがなんとなく伝わる気がします。

画像1

(写真はウィキペディアより)

気になったことば

從他:「さもあらばあれ」とよむ。ままよ。ほっておけの意味

熙春:おだやかな春

雲煙飛:筆勢のいきいきとしたさま。
四字熟語の「雲煙飛動(うんえんひどう)」は、雲や霞(煙)が飛ぶように、筆勢が滞りなくいきいき躍動している、という意味

(参考:呂山 太刀掛重男.  漢詩の手本  第1輯)




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