咲いたばかりの梅の花は、枯れゆくかなしみもまだ知らない #日本の漢詩
梅は古くから中国の詩によまれてきました。日本でも万葉集の時代から、梅は舶来のしゃれた花として愛されてきました。
日本の漢詩にも、梅を詠んだものがたくさんあります。そのなかで、参考本の筆者(太刀掛呂山)が「この詩は絶唱と推すに足る作品である」と特にほめているものがあったので、よんでみました。
こんな詩です
「探梅」(たんばい)
門は 古苔(こたい)に鎖されて 香(こう) 暗に吹く
水辺の 籬落(りらく) 両三枝(りょうさんし)
風前の 短笛(たんてき) 人の擪(よう)する無く
一脈の 春愁 花 未だ知らず
「探梅」
門鎖古苔香暗吹
水邊籬落兩三枝
風前短笛無人擪
一脈春愁花未知
訳すとこんな感じ
「古苔におおわれた門に 暗香をただよわすのは
水辺の垣根に咲く 二・三枝の梅の花
あたりに笛を吹く人もなく
咲いたばかりの花は、枯れゆくかなしみをまだ知らない」
ちょこっと感想
「笛」とは「落梅花」という中国から古く伝わる笛の曲のことだそう。この曲も、梅の漢詩でたくさん登場します。
有名な曲らしいのですが、いったいどんな曲か、ウェブサイトで調べてみたもののはっきりわかりませんでした。「梅花三弄」というこの曲がそうなのかな?
この詩は、梅の花を若さあふれる女性にたとえて詠んでいるともとれます。ああ、若さっていいなあ、まぶしいなあ。
作者について
松原竹秋(ちくしゅう)。1828〜1902年、讃岐出身。書家、詩人。維新後は内閣、逓信省につとめた(コトバンク「松原竹秋」参考)。詩集に「竹秋遺稿」がある。
気になった言葉
・暗香:どこからともなくにおってくる香り。多くは梅の香りのこと。
・籬落(りらく):かきね。落は囲い。
・短笛(たんてき):短い笛。
・擪(よう)する:笛を指でおさえる、つまり、笛を吹くこと。
・春愁:春の季節に、なんとなくわびしく気持ちがふさぐこと。
(参考:呂山 太刀掛重男.漢詩の手本 第3輯)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?