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子育てに生かしたいTips:「冬の保育アカデミー」受講ノート

子育て・保活をきっかけに保育に興味をもつようになり「大友剛Presents 冬の保育アカデミー」をオンライン受講しました(2021年2月〜4月)。前シーズン「秋の保育アカデミー」がとても楽しかったので、続けての受講です。

私のように保育士以外の一般人も、保育について学べる貴重な機会です。全6回(各90分)の講習会のメッセージの中から、これからの子育てに生かしてみたい、こんなお母さんになりたいと感じたことを講義ノートにまとめます。

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第1回 私の保育が「変わる」ということ

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講師は大豆生田啓友さん(玉川大学教育学部 教授)。おだやかな語り口で紡ぎ出されるのは保育者へのやさしいエールでした。

■ 保育の質を高める鍵は、子ども・同僚・保護者・地域・自然への「リスペクト」と「対話」

保育の質が注目されるなか、どんな取り組みが保育の質を高めるか、5つの傾向が紹介されました。

1:子ども主体の遊び(協同的な活動)を重視している。
2:保育者が、子どもの姿を「振り返り」「語り合う」風土がある。
3:職員同士の関係性(同僚性)が良好である。
4:ドキュメンテーションなどで、子どもや保育の姿を保護者に伝えるなど、家庭や地域に開かれている。
5:上記の方向性は、園長や副園長、主任などのリーダーおよび中堅層などが中心となって、保育を変えてきた経緯がある。振り返りや、語り合う風土の形成が保育の質にかかわる。
(「保育の質を高めている園の特徴」全国私立保育園連盟 大豆生田・高嶋・三谷2011 未発表)。

子どもは研究者のように知り、アーティストやエンジニアのようにつくる

子どもの豊かな遊びには「知る(探究)」と「つくる(創造)」の試行錯誤のサイクルがあり、それを保育者がサポートするとき、「STEAM:science(科学) technology(技術) engineering(工学) art(芸術)mathematics(数学)」を横断的に意識して進めると工夫できるとのこと。

「子ども(年長さん)がロケットを作りたい」の事例紹介では、単にファンタジーで終わらせるのでなく、例えば廃材で作ってみる、ネットで一緒に調べる、ドキュメンテーションにより活動のプロセスを見える化する、科学館に行ってみるなどの工夫が、子どもたちの遊びを深めていました。

〔感想〕保活のときに参考にした本「0・1・2歳児クラスの現場から 日本が誇る!ていねいな保育」の著者ということで講演を楽しみにしていました。保活の園探しのとき、保育の質のことをどう言葉にすればいいかわからなかったので、5項目の整理が印象的でした。
あっという間にすぎる子の成長を記録するような「ドキュメンテーション」作り、家庭でもやってみたいな。


第2回 まかせて待つ教育でこどもが育つ

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講師は加藤博さん(南アルプス子どもの村中学 校長)。この「こどもの村」という学校は「教える教育」でなく「教えない教育(子どもにまかせて待つ教育)」を実践しています。

廊下や壁で区切られないひと続きの校舎で行われるのは、画一の一斉授業でなく「オープンプラン」という一人ひとりの学び。教師中心でなく子どもの自己決定が基本。手ぶら登校、チャイムなし、テストなし、宿題なし、担任なし、通知表なし、ミーティングは多い(子どもも大人も同じ1票、校則は話し合いで作る)。特別な学校にも思えますが「どの公立学校でも取り入れられる」と加藤さん。

ポジティブな言い回しは練習でできるようになる

この学校の職員の心がけの一つとして紹介されたのが「肯定的な言い回し」。例えば、
・急がないと間に合わないよ→急げば間に合うよ
・机に座らないで→椅子に座ろう
・走らないで→歩こう
・しゃべらないで→話をしていいかな
・さわらないで→おいておこう
・たたいたらだめ→困っているなら口でいうよ など。
物事をポジティブに変換するとき「ネガポ辞典」も参考になるとのこと。

〔感想〕これまでの学校観がくつがえされるワクワク講義でした。「こんな学校があるの?」とびっくりしましたが、私ももう一度子どもに戻れるなら行ってみたい。自校の子どもの様子を語るときに心から面白そうに話されていて愛を感じました。


第3回 サスティナブルな保育にいざなう7つの問い

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講師は永田佳之さん(聖心女子大学 教授)。専門は国際協力、ユネスコ本部で世界中のESD(Education for Sustainable Development、SDGsを実現するための教育のこと)の実践を応援する仕事(ユネスコ本部ESD賞国際選考委員)などを長年されています。

SDGsを保育でいかに実践するかは、いま世界的に重要な課題だそう。不確実(VUCA)で予測困難なこの時代に、どう子育て・保育していくか。講義ではそのヒントがいくつも散りばめられていました。

問いを生きよ! Live through questions!

「この1週間、子どもとどんな問いを共有しましたか?」と永田さん。良質な問い(しかも、答えのない問い)をくぐり抜ける時間を人と共有することで、そこに共同体も生まれるといいます。「素敵な問いを抱いて歩んでいるひとって素敵ですよね。そんな大人が日本にもっと増えるといいなと思っています」。

問いをもつときのヒントとして、

•「What(暗記)」「How(スキルの効率)」「Why(そのものを捉え直す)」がありますが、特に「Why」の問いを大切にすること。 

•問いの解決に向けては、直線的思考(リニア・シンキング)ではなく、「年輪のように思考すること。

•生死や地球規模課題(global issues)のような深い問いが子どもからあったら、知識(頭や言葉)で答えようとせず、心と体を全部使って答えればいいこと(抱きしめるとか)。

•問いや答えは、時間とともに変わってもいいこと。変わりながら行動して生きていく「transformative action」が国際教育の最先端キーワード

などを教えてもらいました。

〔感想〕ナミブ砂漠で答えのない問い「なぜ砂漠は美しいか」を共有して時間を過ごして共同体が生まれるスタディツアー、こんな体験してみたいなあ。

これからの教育「地球がハッピーになる教育」を考える

これまで、世の中をよくするはずの教育が広まった(人間活動がさかんになった)結果、CO2が増えて自然が破壊されてきました。なぜなら、近代教育は、地球環境の無限性を前提にして、産業社会を支えるための効率性を重視するものだったから。

これからは、地球環境の「有限性」を前提にした、持続可能な社会を支える教育のありかたが、すべての教育者・保育者に問われているといいます。「地球がハッピーになる教育とは?」「私だったら、こんな学校を創りたい!」を考えてみて、と呼びかけられました。

森に入ればすべてわかる

地球の気候変動は危機的ですが、「低学年までは、何の心配も持たず自然を心から愛する子どもを育てるのがよい」そう(David Sobel“Beyond Ecophobia“)。特に就学前の子どもは、「この世は信頼するに値する・世界は美しく不思議に満ちている」という希望の根っことなる価値観を養って欲しい、と永田さん。森には、さまざまな原則(循環・相互依存・多様性・健康・適応・幾何学・ひとつらなり)が含まれており、「森に入ればすべてわかる」といいます。

子どもが大きくなり、気候変動について学ぶときも、希望が持てないデータだけを見せるのでなく、データの見方やビジョンを示したり、情動的な学び Social & Emotional Learning(希望を持たせるような詩を作らせるなど)の働きかけがよいと紹介されました。

〔感想〕7つの「問い」を中心とした講義。オンラインのチャット機能やMentimeterを用いた、双方向のやりとりが本当の授業のようで、自分で思考したり、チャットでの他者の意見が刺激になりました。初めて聞く言葉もたくさんありましたが、専門用語もかみくだき、やわらかな表情ですばらしい「考える時間」に誘ってくれた永田先生。感動して繰り返し視聴し、すっかりファンになりました。

7つの問い• Q1 なぜ教育が広まれば広まるほど、自然環境は悪化するのですか? • Q2 持続可能な社会を作るのに必要なのは?• Q3 持続可能な未来をつくる教育とは、どんな教育ですか?• Q4 今、起きている地球規模の問題を次世代にどう伝えますか?• Q5 不確実性の時代における理想の学校とはどんな学校ですか? • Q6 理想の教育を実現している学校は実際にあるのでしょうか? • Q7 明日からどんな問いと歩んでいきますか?


第4回 参与と観察そして応答

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講師は汐見稔幸さん(教育学者 東京大学名誉教授)。保育者のための学び場「ぐうたら村」の村長として、新しいスタイルでの保育の学びを提供されています。保育者と親のための学び&交流誌「エデュカーレ」もおすすめ。

子どもの「生きがい探し・自分探し」を応援しよう

子どもの「生きがい探し・自分探し」を応援するのが保育者の役割。その心得として「子どもに余計な評価をしない、非分析的で肯定的なまなざしで」「味方であると伝える」などのヒントが示されました。

また、子どもをみるときには「頭の片方で自分をモニターする自分を意識すること(決めつけていないか、子どもに甘えてほしいと密かに欲していないかなど)」も忘れないでとのこと。

子どもについて振り返り、語る時間を大切に

保育者は、毎日振り返りの時間をとり、
・子どもと接していて発見したこと
・子どもから学んだこと
・びっくりしたこと
を話し合うとよいそう(このとき、子どもを否定的にいうことはしない)。

〔感想〕夜、家族と「今日こんなことがあった」と子どもについて話しあうときが、私たち(子ども含め)の振り返りの時間になっています。そのときに参考にしたいヒントでした。


第5回 子どもが「分かる」ということについて

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講師は井桁容子さん(乳幼児教育研究家)・佐伯胖さん(認知心理学者)。大人が子どもに「分かった?」と聞くことがよくあるが、大人は何を分かってほしいのか。大人が「分かってほしいこと」と子どもが「分かるということ」には大きなずれがあるのではないか。そんな問いかけが事例とともに示されました。

子どもが、世界を分かろうとしているってすごいことなんだ

子どもの「分かる」は、大人の想像を超えて深く本質を捉えようとしているといいます。

特に子どもは、ものごとの「関係づけ」を発見するのが大好き。自分でその関係を見つけると、その喜びを伝えようとしてきます。例えば、初めて「影」を発見するとき、物の使い方を分かるとき、「この人はこんな人だ」と分かるとき。

でも、子どものそういう発見を、大人は無視したり邪魔してしまいがち。「0・1歳児が世界を知るまなざしにどこまで近づけるか、大人が試されている」と佐伯さん。

分かるということの深さが、その子の社会を見る力になる

一方で、大人のいう「分かった?」は何かをできるようにさせたいときに使われる言葉。「できることリスト」「知識のリスト」を増やすことを急かしていないかと注意が促されました。

大人は「分かってほしいこと」を強いるのでなく、子どもが「分かる」ために没頭している世界を邪魔しないこと。その発見を一緒に受けとること。「分かるということの深さが、その子の社会を見る力になる」と強調されていました。

〔感想〕0〜1歳の子と過ごすなかで、ああ今これを見つけているのかなあと実感する瞬間や、小さな「関係づけ」を発見して喜ぶ姿を見つけることがありました。これまでなんとなく感じていたことが言葉で説明され、改めて子どもの「分かる」力の不思議さを感じました。


第6回 オンライン・スライドショー「森からのまなざし」

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講師は小西貴士さん(森の案内人・写真家)。森のなかの、複雑で繊細で壮大で美しいたくさんの写真とともに、生態系の一員として生きるためのメッセージが語られました。

自然は一問一答でない、五感で感じる「命の循環」

自然を見るときに、「この足跡はなんですか?」「うさぎの足跡です」のような知識の一問一答で終わらせないで、と小西さん。例えば、もっと地面に近づいてみる。その動物はどんな匂いをかいだか、何を食べたか。食べたと思われるものを同じようにかじってみたら。そうするなかで自然の「大いなる物語(命の循環)」に出会えるといいます。

命の循環は、現代の整備された都市公園では見えづらくなっています。学校現場でも生態系についてはあまり力を入れて教えられていない現実もあります。生態系、特に人間を生かしてくれている多種多様な生命や物質(ノン・ヒューマン)をどう子どもらに伝えるかという課題が示されました。

〔感想〕ハイハイする子どもと一緒にあちこちハイハイしていたら、地面の草の種類がたくさんあることや、土からいいにおいがすることや、砂の粒の美しさなんかに気づきます。私自身あまり自然に馴染みがなく過ごしてきたので、子どもと一緒になって体で味わっていけたらいいな。

最後に

今回の全体テーマは「保育を変える、自分を変える」。保育・教育は新しい社会に向けて変化しているので、親や保育者は、自らが子どものときに習ったこと・学びのやり方(気づけばもう30年以上も昔のことだった!)をそのまま続けるのではなく、子どもや孫の世代のために新しく学び続け、取り入れていきたいと思いました。

講義内容の充実はもちろん、見逃し配信、音声版講座(育児中に便利)、スライド・グラフィックレコーディングのダウンロード(セブンイレブンプリントできるようになっている)、LINEでの情報発信など、受講者の学びのニーズに応えてどんどんサービスを向上されていてありがたいです。

何よりプレゼンターの大友剛さんのピアノが心地よく、毎回が学びのショータイム。オンラインで見知らぬ大勢の人たちと、真剣な時間を共有できるのもうれしいです。

次シーズンの「春の保育アカデミー」もいよいよ開始。楽しみです。

(画像は「冬の保育アカデミー」提供)

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