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日本画家 平山郁夫先生の出生図を読む


画集 仏教伝来Ⅰ

平山郁夫先生のこの画集は古本屋で1冊500円のセール品の籠に入っており、「仏教伝来ⅠⅡ」のみ入手出来ました(発売当時の定価7,800円)。

平山先生と言えばシルクロードを題材にした絵が有名かと思いますが、私はとくに仏教を描いた作品が好きです。

伝統的な日本画で、仏教という馴染みのあるテーマをご自身の中で丁寧に咀嚼し新しい芸術的表現で確立され(歴史画ではなく、平山先生の玄奘を描いていることが凄い)、そしてそれだけでなく国際文化交流に関わり、世界の文化財保護を呼びかけ精力的なご活動を続けられた事にも感銘を受けています。

平山先生の出生図

出生図でまず気になるのが

○土星-天王星-冥王星の活動宮Tスクエア

○月-火星スクエア

○水星-海王星スクエア

です。土星-冥王星のオポジションは9度差ですが、今回は複合アスペクトとして解釈しました。

太陽は双子座24度で、月は水瓶座6度付近です。

風のエレメント、とくに双子座の強調が見られ、支配星である水星は個人天体で唯一トランスサタニアン(海王星)の影響を強く受けています。

太陽は木星とのコンジャンクションのみ、月は火星とのスクエア、水星とのトラインの可能性があり、火星は土星とトラインです。

水瓶座月-牡牛座火星スクエアということで独自のこだわりが強く、なじまないものは受け付けないような頑固な性質と、双子座・水星の強調からくるフットワークの軽さ、情報収集能力の高さ・想像力の豊かさゆえの神経の細かさから来る不安感などが読み取れます。

また、土星・天王星・冥王星トリオは本物志向、極限的な体験と努力によって更なる「本物」を作り上げるために活動し続ける性質を表します。

幼いころより、大叔父から古典・文学・哲学など、絵の修行以外に教養を身につけることの重要性を学び、東京美術学校では安田靫彦、小林古径から学び、前田青邨の助手として勤めたことからも、実に様々なものを見聞き・吸収して来られたことが分かります。

双子座の様々なものを見聞きして視野を拡大させていくことに加えて、身の回りの先生(木星)からのサポートがあって更に拡大するという、太陽-木星コンジャンクションの恩恵が窺えます。
平山先生は15歳の時に広島の原爆を体験されており、被爆体験や原爆症など心身に過酷なものを抱え、画家としても追い詰められながら「死ななければならないのなら、その前に、一枚でいいから、心に残る絵を描きたい」と必死に思い続け、あるとき「まったく突然にひとつの絵の構想が浮かんだ」ことが大きな転機となり仏教伝来を描くことになります。

1959年、仏教伝来が院展評で取り上げられ、その後の針路が定まります。

この院展評では、奥村土牛の「鳴門」が大きく取り上げられていたそうですが、その当時の日本画壇の流れから、「仏教伝来」は新しい流れを生み出したと言えるでしょう。

追い詰められ絶体絶命の状況であっても、様々な「情報」を俯瞰しながら、想像しながら、ふとした瞬間に閃きを得る。そしてその閃きをじっくりと観察し、歴史的背景やご自身の希望を肉付けし、確信を持って絵の構想を練る。

双子座の強調と月-水星(感情と知性の融和)、火星-土星(実際的な結果を出すためのたゆまぬ努力)、水星-海王星(直観的、詩的なイマジネーション)のなせる技術です。

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心身ともに追い詰められて、もう画家として絶望的だと思ったからこそ、自分の二十九年の人生の実感を絵に託して描くことができたといえよう。眼前にある物の、即物的な美しさを求めるのではなく、人生の経験からくる実感をもとに、作品を創るということである。

私自身が私なりの芸術をつかむことは、釈迦の悟りに似ていると思った。

___平山郁夫全集 仏教伝来Ⅰ より引用

私が平山先生の絵を見ていると、とても哲学的で詩情に富んだ世界で、輪郭線がなくぼんやりした印象の中にも、確固たる信念と知性に裏付けされた情緒を感じる。「ただの印象的な絵」「作者の気持ちを投影しただけのウエットな絵」ではない。

細やかな線描で描かれている下図からも、写生を基に論理的に制作されている様子が窺えます。

博愛的な優しさと理性的な美しさと、伝統的なもの・普遍的なものを用いて全く新しいものを生み出してご自身の芸術を描いていることが伝わり、感動します。

平山郁夫先生の画業は妻である美知子さんの存在があったからこそ、ですが奥様に関して詳細がほとんど分からず。どのようなシナストリだったのでしょう。

(平山先生の)蟹座金星、水瓶座月では、ずいぶん落差があるように思います。美知子さんも様々なものを抱えながら、家族と夫の画業を支え守ってこられたんだと思うと胸が熱くなります。

引用させて頂いた言葉は、私自身にもとても感じ入ります。

私も、いつもこんな気持ちと信念を抱いて絵を描き続けていたいです。

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