Different phase/12歳、1月13日の金曜日
小学校6年生の冬休み最終週
朝起きるとシーツが赤黒く汚れていた
がに股で階段を降りると
動揺する母は声を潜めて言った
「おめでとう、病気じゃないから」
視界がずれ、世界を踏み外しても
地吹雪の中、血を垂らし
ピアノ教室へと歩くしかなかった
鍵盤は重く冷たく硬く
繰り返しもつれる指先から
世界がさらさら脱けてゆく
音は遠ざかり
時空は歪み
感覚と熱と鈍痛が
下腹部に集中する
世界が瓦解する
意味が消失する
わたしのこころは
わたしのからだを見失っていた