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文庫本を閉じる前と同じ教室 聖パウロは今日も回心している マスールのベールと同じ空…
罪悪感をずっと押し付けられてきた 普通ではない私がいけないのだと 社会に馴染めない…
ポケットの中にあるはずの世界が消えた 手のひらに収まる世界が 目の前には一つの世界し…
ラジカセを持ち入ってくる修道女 静まる教室 「考えなくていいから聞きなさい」 『星…
音の向こうに 二十歳の娘がいた 玉音放送を耳にし 何を言ってるのか 何が起こったのか …
ハッピーエンドを押し付けないで わたしから目を逸らさないで あなたが耳を塞ぐ痛々しさ それ…
終わるまでの時間をやり過ごしていた 何も感じることはなかった 「気持ちええやろ」「感じてるんやろ」 和姦に持ち込もうとする声も息遣いも すべてがどうでもよかった そのとき私は声が出なかった 声が出ない私への罰なんだと 不思議な理屈をぶつけられた すべてがどうでもよかった やり過ごし方だけは手慣れていた こんなことは何度目だろう そのまま人魚姫のように消えたかった こんな世界に付き合いきれない 涙を流れに委ねた なのにローレライは私を選ばず 消えることすら赦されず
土を掘り起こし蛹を潰す 毒霧を撒き虫けらを窒息させる やってくる鳥を睨み猫を追い払う 魚の…
冥府で蹲っていると 突然手を差し出された 暗闇に現れた光 再生への密儀 触れた瞬間 温も…
汚辱に塗れた肉体を 彼は撫で浄める 特に念入りに 胸を 穢され続けた 胸を たとえその…
小学校6年生の冬休み最終週 朝起きるとシーツが赤黒く汚れていた がに股で階段を降りると 動…
従兄が私の胸を揉みしだく 教師が私の全身を撫でまわす 小学生のわたしは声を出せなかった 父…
ただひとり、穴があいたまま立ち続ける 気づいてくれたのは風だけ バランスがおかしくても立ち…
薄紅色の壁に囲まれた液体に浸る わたしとあなたの境目は曖昧 そんな水がめが無数にある 囲いの向こうの水がめに 彼や彼女を感じれど 一度たりとも見たことはない 水がめから放り出されたその日 わたしは突然ひとりになる ひとりが無数に誕生する 新しい世界に興奮するひとり 心細く泣きわめくひとり 悠然と周りを見渡すひとり 眩しさとともに 気配そのままの 彼や彼女と初対面 それぞれの個性を背負い それぞれの名前をつけられ ひとりひとりはこの