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ポケットの中にあるはずの世界が消えた 手のひらに収まる世界が 目の前には一つの世界し…
ラジカセを持ち入ってくる修道女 静まる教室 「考えなくていいから聞きなさい」 『星…
「昔、秋葉原にもバスケットコートがありましたよね」 私の渋谷の廃墟を見せた彼が言う …
ここではないどこかを 探す気力すらなかった そんなところがあると 憶うことすらでき…
他者からの評価を 震えながら待った 逃げたら一生ここから逃げられない そう言い聞かせ…
深く潜る 深く潜るわたしを 私は見る 音もなく雪を吸い込む海 渚に座り 岬に立ち 結晶を顔…
音の向こうに 二十歳の娘がいた 玉音放送を耳にし 何を言ってるのか 何が起こったのか 何もわからなかった わたしの祖母ではない娘だ 孫娘が持ってきた 魔法の道具を握りしめ 明瞭な音に感激し また聞きたいと 何度もせがむ おばあちゃんの顔の下にいる チョコレートが好きな少女が 幼くして父を亡くした少女が 無邪気にはしゃぐ この人が死んだら悲しいだろうなと わたしは初めて思った
終わるまでの時間をやり過ごしていた 何も感じることはなかった 「気持ちええやろ」「感じてる…
土を掘り起こし蛹を潰す 毒霧を撒き虫けらを窒息させる やってくる鳥を睨み猫を追い払う 魚の…
冥府で蹲っていると 突然手を差し出された 暗闇に現れた光 再生への密儀 触れた瞬間 温も…
汚辱に塗れた肉体を 彼は撫で浄める 特に念入りに 胸を 穢され続けた 胸を たとえその…
小学校6年生の冬休み最終週 朝起きるとシーツが赤黒く汚れていた がに股で階段を降りると 動…
従兄が私の胸を揉みしだく 教師が私の全身を撫でまわす 小学生のわたしは声を出せなかった 父…
ただひとり、穴があいたまま立ち続ける 気づいてくれたのは風だけ バランスがおかしくても立ち続けている 教えてくれるのは風だけ 愛するものを失って はじめて穴があいたひとがいる もとから穴があいているわたしは 嘆くひとを見つめる かなしみの涙があふれる穴は わたしと違って 愛を疑うことはない 風を通し続けるうちに かたちがおかしくなったのだろうか 新しい穴と同じかたちのかけらで わたしの穴は塞がるのだろうか わたしは穴を埋めたいのだろうか 愛のかたちをわかるのだろうか