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『みんコワ』の作り方

みなさんこんにちは。
コワーキングスペース茅場町 Co-Edo の田中弘治です。

この記事は コワーキングスペース Advent Calendar 2021 の 4日目 の記事です。(昨日は 高見知英 さんによる「コワーキングスペースのこれから」でした)

Co-Edoはもうすぐ9周年を迎えます。新型コロナウイルス感染症の影響で外出を控えるひとが増え、多くのコワーキングスペースが苦しい状況にあると思っています。
そんななか昨年の4月。複数のコワーキングスペースの運営者が共同で立ち上げたのがオンラインのコワーキングスペース「みんコワ」です。
みんコワのログインはこちらから可能です。

公式サイトは ↓ こちら

「みんコワ」とは

みんコワの正式名称は「みんなのバーチャルコワーキングスペースジャパン」といい、24時間いつでも、Webでログインするだけで無料で使えるコワーキングスペースです。

運営は、運営協力者と呼ばれる、主に次のようなひとたちで進めています。

  • 運営に対して寄付をしているコワーキングスペースや個人

  • 運営に協力したいという利用者やコワーキングスペース等

みんコワの利用に際し一切料金をもらっていませんので、金銭的な見返りを求めることなく、純粋に「コワーキングスペースをみんなでつくっていこう」という意思のあるひとたちで運営しているのです。

プラットフォームである Remo の料金は年間100万円以上かかっていますが、すべて寄付で賄っています。

僕のみんコワへの関わり

みんコワは大阪の老舗コワーキングスペース オオサカンスペース の代表の大崎さんの呼びかけで始まりました。
Co-Edo もしくは 僕個人として、立ち上げ時にお声がけ頂いた際にいちはやく賛同し、以後可能な限り積極的に運営にも携わってきています。

このようなコワーキングスペースがコロナ禍において自宅等での作業を余儀なくされている方々への拠り所となることの意味と、コワーキングスペース同士が連携して “場” を作っていくことの意味は、いちコワーキングスペースの運営者として非常によく分かります。

また、想いだけで始めたものも、時間が経つにつれ、当初の勢いを失い、結果的に継続がしきれないということもあります。

みんコワは、運営協力者や利用者が思い思いに活動できる、とても素敵なスペースです。
誰かひとりの力だけで作り上げられるものではありません。
ひとりひとりが自分にできる範囲で協力し、それらがうまく絡み合うことで、無料で使えるオンラインのコワーキングスペースというものが維持され続けているのです。

このアドベントカレンダーの記事で、携わっているみんながどのようにみんコワを作っているか僕自身がどのように携わってきたかを、ぜひ伝えたいと思います。

第一期 : オープンから半年間

ざっくり分けると、これまで、第一期と第二期に分けられると思っています。
発起人の大崎さんや僕をはじめ運営協力者を中心に運営の土台作りに励んだのが第一期で、意思決定の大半を運営協力者に委ねる体制に変更してからが第二期です。

その土台作りの第一期は、おおよそ半年くらいかかっています。
何をするにも、設立当初というのは重要です。
このときの方向性がぶれぶれだと、なかなか安定運行とはいきません。

この時期は、サポーターと呼ばれる(金銭的に負担をしたうえで、運営協力にもリソースを割いている)コワーキングスペースを中心に、みんコワの趣旨に賛同し運営協力をしようと集まったメンバーで、スペース運営および仕組みづくりを行っています。

慣れない利用者に対して有志の受付スタッフが利用方法をフォローする文化も、このときには確立しています。
いまは山口県のコワーキングスペース Megriba のスタッフとしても活躍する 山下陽子 さんを中心に、コミュニティづくり、心地よいスペースづくりがなされました。
いまでもその多くは(形を変えても)残っていて、複数のコワーキングスペースに携わった経験が余すところなく生かされていると思っています。
初期の土台作りに注力したのは、みんコワが継続して運営できている一番大きな要因のひとつかもしれません。

組織形態

組織というほど大げさなものではありませんが、この時期は毎週のように全体ミーティングをやっている期間もあったりし、全員で意見を出し合い最終的には大崎さんを中心に決めていくというスピード感を大切にすすめた時期です。

リアルなコワーキングスペースの運営経験があるメンバーが何人もいるので、次から次に出てくる課題に対し、効率的に効果的な意思決定していけたのはみんコワならではだったと思います。

僕が見出した役割

僕の役割としては、仕組みづくりやインフラの構築といったところに積極的に携わっていきました。
大崎さんはIT系の基礎知識に富んでいて、非エンジニアでありながら、全体としてどのようなものが必要となるかということをよく理解しています。
インフラ部分については、おもに僕と大崎さんのふたりで用意したものが多かったです。

以下、何をどのように構築したかを具体的に書いていきますね。

ドキュメントの管理とアクセス権限

まずはじめに構築したのは Google ドライブを利用したドキュメント管理と、そのアクセス権限の付与。

ふたりとも自分のスペースで Google ドライブを使用していたこともあり、とくに話をすることなく Google ドライブを中心として構築していくことにしました。

メンバーのロールを3階層に分けることにし、フォルダも同様の階層にすることで権限の設定忘れがないようにしています。

  • 一般の運営協力者

  • 寄付をしている運営協力者(サポーター)

  • 権限管理などを行う管理者(僕たち+α)

メンバーのメールアドレス等、少なからず個人情報を扱うこととなるので、それらを閲覧できる管理者は少人数に限定することにしました。

運営協力者は誰でも参加できるようにし Google フォームによる申請フォームから申し込みがあると、Google スプレッドシートにリスト化されていきます。

運営協力者もサポーターも同じ申請フォームを利用しています。
みんコワ 賛同スペース/運営者 申請フォーム
 みんコワでは運営協力者およびサポーターをいつでも募集しています。一緒にスペース運営をしていきたいという方は、ぜひフォームよりご連絡ください。

運営協力者およびサポーターは、それぞれ Google グループによりメーリングリストを作成。そのメーリングリストで Google ドライブの各フォルダの「編集権限」を設定します。
お互い Google Workspace を使ってはいましたが、みんコワ用に新しく契約することはせず、無料のサービスである Google グループがまだ充分に使えることを調べそちらでまかないます。

このようにしておくとドキュメントのアクセス権限管理を個人単位でする必要がなくなるため、運用が楽になります。

ただし「フォルダ・ドキュメントの “共有設定” 」はメンバーが自由に行えない運用としました。
これは運用してみて分かったのですが、カジュアルに「全体公開で編集権限を付与」をするひとがいると分かり、会社組織と違ってコントロールがしづらいため、思わぬ情報漏えいを未然に防ぐ環境にしています。

とはいえここは難しく、意図が伝わらず、みんコワのフォルダ外でみんコワ用のドキュメントを作成するひともいます。
完璧な状態にすることのみを目指すと、窮屈になる面もあるので、気づいたら管理者側で設定を変更するというのを地道にやってます。

みんコワのほうがCo-Edoよりも難しいと知る

大崎さんとも話をして気づいたことですが、自分のスペース内で使用するドキュメントの管理のほうが、何倍もかんたんに環境が作れるということでした。

複数の事業者が集まっているということは、文化的な背景や経験が違うということです。
何かあった際に最終的に自分が責任をとればよい環境ではないこともあり、何かあってから対処するのではなく、何もおこらない環境を可能な限り事前に用意しておく必要があります。

その後さらに環境をアップデートし大崎さんからの提案で Google Workspace の共有ドライブによる運用に切り替えています。より柔軟にドキュメントの権限管理ができるようになりました。たとえば、フォルダ内のファイルの管理者が自動的に(作成者ではなく)フォルダの管理者になります。便利。

スケジュール管理

スケジュールは Google カレンダー を利用することにしました。
みんコワに関わるまで知らなかったのですが Google カレンダーも Google グループのメールアドレスによる共有設定が一括で可能です。
運営協力者は増えたり減ったりということがあるので、その都度 Google ドライブや Google カレンダー等をひとつひとつ設定変更する手間暇は避けたいところ。Google グループへの追加・削除のみを管理すれば良いと知り、さっそくCo-Edoもその運用に切り替えました。

このように、みんコワで得た知見をCo-Edoに活用できるのは、率先してそのような役割に手を挙げる大きな要因のひとつです。自分だけでは思いつかないような効果的な手法を取り入れることが可能になりますね。

イベントカレンダー

カレンダーは、イベント等 Web 上で公開されるものと、ミーティング等の非公開のものと、2種類用意しています。

イベントカレンダーについては、誰でもイベント登録可能な入力フォームを作成しました。
フォーム(メール)送信後、運営協力者がWeb上でかんたんなチェックを行い、承認するとカレンダーに自動的に公開されるように Google Apps Script を使用し構築しています。
みんコワ イベントGoogleカレンダー登録フォーム

カレンダー登録フォームや運営者申請フォームを作成したのは、利用規約への同意必要な情報の収集等の別の目的があります。
このような仕組みを用意することで、各スタッフの負担を減らしつつ、業務を標準化するという複数の目的を達成することが可能です。
みんコワでは、システム面でもサポートしたいという運営協力者の方をいつでも募集しています。ぜひ便利にしていきましょう。

各種 SNS 運用

みんコワでは Facebook ページ・グループおよび Twitter アカウントを運用していて、その後 Instagram も SNS 運用チームを中心に活用されています。

みんコワの SNS アカウント(ぜひフォローしてください!)
https://twitter.com/CoworkingPublic
https://www.instagram.com/mincowa.jp/
https://www.facebook.com/VirtualCoworkingJapan

Twitter を TweetDeck を使用し投稿できる体制を整えたり、アカウント管理においても複数のスタッフで運用できるよう工夫しました。

いまでは Instagram でハッシュタグを使用してテーマに応じた投稿を募ったり、みんコワの利用者が楽しめる体制を SNS 運用チームのみんなが作ってくれています。

みんコワ アンバサダー

当初みんコワをPRするために作ったチームがアンバサダーチームです。
コワーキングスペースのコミュニティマネージャーなど、みんコワのプロモーションを積極的にしていきたいという想いをもったメンバーを集めました。

アンバサダーが中心となって開催したイベントが、昨年のアドベントカレンダーでも紹介した「コミュニティ・アンカンファレンス」というオンラインイベントです。
2020年8月19日〜21日の3日間、各日ゲストスピーカーをお呼びして、コミュニティについて考えるイベントを行いました。

どの日も50名前後のひとがみんコワのセミナー会場に集まり、非常に盛況なイベントでしたが、なによりスタッフのイベント企画から運営までのスキルの高さに驚かされたことを印象に残っています。

ミーティング時に話をした内容がいつのまにか議事録として詳細に記してくれているひとがいたり、メンバーがミーティングに集まりやすいようリマインドをしたりと各種の配慮をしてくれるひとがいたりと、準備の段階からチームワークよく(自分自身も気持ちよく)進めていくことができました。

当日手伝ってくれたスタッフの助力もあり、とても盛況なイベントを開催することができましたし、振り返りにおいても「それぞれ限られた時間しか割けないなか、効率的に業務を進めて楽しいイベントを作れた」という想いを共有できたのはとてもよい思い出です。

第二期 : 運営協力者だけで自走できる体制へ

オープンから半年以上経ち、運営協力者やサポーターも本業との兼ね合いで関わり方が徐々に変化してきます。
それまでの体制だと、どうしても一部の人に負荷が集中する傾向にあったため、自律分散型の運営体制への変更を模索することにしました。

みんコワを支える4つのチーム

自律分散型の運営体制への変更といっても、かんたんにできるものではありません。少数のメンバーで最終的な意思決定を行うとしても、それぞれの運営者が「都度、誰かの承認を必要とすることなく」担当している業務を進めていける体制が望ましいと思います。

結果的には、運営協力者を次の4つのチームに分け、それぞれが自主的に進めやすい体制になります。

  • 運営本部
    みんコワの運営全般を管轄し、他のチームでは扱いづらい件も拾っていく

  • 広報・プロモーションチーム
    みんコワ以外のひとに、みんコワのことを知ってもらうための活動を担当

  • コミュニティマネージャーズ
    みんコワの既存の利用者が、みんコワをより楽しんでもらうための活動を担当(受付業務もコミュニティマネージャーズが担当)

  • イベント本部
    みんコワでイベントを開催したいという主催者のひとが、イベント開催しやすくなるようにサポートしたり、ルールの整備を担当

基本的には各チームがミーティングをしたり業務をすすめたりし、別途開催される毎月の運営ミーティングでは、基本的に報告だけを行うように簡略化しています。

このタイミングで僕自身も全部に関わることは止めました。
インフラの構築は一段落していましたし、いつまでも意思決定に関わると、かえって依存してしまう状況になるだろうと想像したからです。

情報共有を Slack で

情報共有について、より広く行われる体制をつくりたいと思っていたら、一部の運営協力者より Slack を使用したいという提案がなされます。
それまでは Facebook メッセンジャー(グループ)による連絡が多く、頻繁に通知があることがメリットでもありデメリットでもある状況。
Slack であれば、各チャンネルでテーマを絞って話をしやすくなり、また興味のあるチャンネルを自由に選択できることで、情報共有もやりやすくなります。
当初は提案の成り行きがどうなるか分かりませんでしたが、複数のチームが Slack を使おうとなったため、せっかくならと全体で導入することになりました。

コミュニケーションツールの変更はわりとコストのかかる行為です。
Slack 移行のためのチームをつくり Slack 未使用者に対してのレクチャーなどをしています。
説明動画を作ったひともいて、自分の得意なことを活かしてみんコワの運営に積極的に関わってくれていることはとても嬉しいし、感謝しきりです。

体制変更から1年経過し

4つのチームの体制にしてから、1年以上が経過しました。
体制変更後しばらくは、戸惑いながら模索している面もありましたが、時間が経つにつれより多岐にわたる改善がなされていっています。

これはそれまでの体制では難しかったことだと思っています。
各チームに与えられたミッションが明確となり、無意識に遠慮しがちになってしまう関係性のなかであっても、自分のできることをできる範囲で協力しやすい環境に近づいたのではないでしょうか。

「これをやってみたい」が実現しやすい環境になってきていると思います。

個人的には、いまよりもっと、みんコワに関わっているひと(利用者・運営協力者・その他)が、自分のやりたいことを実現できる場になっていけると思っています。

みんコワに関わることで各自の本業にとってもメリットがあり、
自分の本業で得た知見が、みんコワの発展に寄与していく
そんな相乗効果が生まれる環境だと、強く信じています。

みんコワを支えるひとたち

みんコワは本当にいろんなひとで支え合って運営されています。
毎日使っている利用者、朝活やランチ会に参加するひと・開催するひと、毎週のイベントを継続的に開催しているひと、なにかあったときは率先してミーティングの場を設けてくれるひと、イベントやミーティングの運営をサポートしてくれるひと、受付業務や利用者のサポートをしているひと、利用しやすい雰囲気をつくってくれるひと、利用者同士で使いやすいフォローをしてくれているひと、誰かのミスをフォローするひと、などなどみんコワにいろんなひとが関わってくれているのです。

これからもこの素敵な場所を一緒につくっていきましょう。

コワーキングスペースが連携すると生まれる価値

常々コワーキングスペースが連携して生まれる価値を考えています。
それぞれ自分のスペースの運営は大切ですし大変でもあります。
それでも、コワーキングスペースが連携すると生まれる価値があり、連携しないと生まれない価値があると思っているのです。

みんコワはそのひとつ。

ほかにもたくさんあるでしょう。
ぜひ、そのような連携を増やしていき、コワーキングスペースやその利用者が、今後も、より自在に活動できるようになることを願っています。

この記事が、そんな連携をする際の、なにかの参考になれば嬉しいです。

アドベントカレンダー

この記事は コワーキングスペース Advent Calendar 2021 の 4日目 の記事です。
記事執筆時点でアドベントカレンダーの参加者が17名。あしたの担当者がいません……
つぎは12月7日(水)オオサカンスペース のさっちゃんです。
「就活を終えた私が、コワーキングの人と出会って、考えたこと」を書いてもらえるようなので楽しみにしています!

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