添削杯Vol.7 観戦記事 準決勝 戦闘民族 vs nicofromtokyo ~プランニング~
text by ティル
オンライン・プレイとテーブルトップ・プレイ、その違いは何だろう。
使うカードも変わらない、行うゲームも変わらない。プレイヤーも同じなのだ。
しかし、本大会は確かにオンラインにはない何かがあった。
それは開始時間になっても席に現れない戦闘民族だったり。
それをみて、「不戦勝でもよいですよ」と笑顔でおどけるnicofromtokyoだったり。
2人が席に着いたのを見届けて声をかけるジャッジだったり。
「スイス上位の戦闘民族さんが先攻後攻を決めてください。」
「先攻で」
間髪入れず応える戦闘民族。それを見て、一気に真剣な表情となるnicofromtokyo。
やはり、このような人と人のやり取りが、テーブルトップの魅力なのだろう。
いつの間にか64人だった参加者も、残りは4人。
決勝に進めるのは、2人。
そのうちの1人になるために、この魅力あるテーブルトップ・プレイを続ける権利を得るために。
2人のプレイヤーの張りつめた空気が、そこにあった。
Game1
先行を取った戦闘民族は、《Tropical Island》、そして《ブラック・ロータス/Black Lotus》を開花させ、nicofromtokyoにとって致命的となる《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》を送り込む。
さすがにこれは容認できないと《意志の力/Force of Will》で応じるnicofromtokyoだったが、戦闘民族が《狼狽の嵐/Flusterstorm》を見せるとあきらめたようにアウフを許可した。
戦闘民族は続けて《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》も加え、3点クロックでnicofromtokyoの残り時間を奪っていく。
《海門修復/Sea Gate Restoration》タップイン、《古えの墳墓/Ancient Tomb》を使っての《多用途の鍵/Manifold Key》と、テンポもライフも厳しいnicofromtokyoを見るや否や、《Time Walk》も織り交ぜて戦闘を続け、どんどん残り時間を奪っていく戦闘民族。
しかし、ついにnicofromtokyoが《ファイレクシアの変形者/Phyrexian Metamorph》で戦線を止めると、プランの見直しを迫られる。
少しの思考時間を経て、対象がない状態の《壌土からの生命/Life from the Loam》を唱える戦闘民族。そのまま墓地に送られるこのプレイは、一見不可解に見えるがnicofromtokyoは苦い顔。
数ターンのドローゴーを挟み、複数回の《壌土からの生命/Life from the Loam》の発掘を行った結果、《不毛の大地/Wasteland》がライブラリから見つけ出され、nicofromtokyoの土地基盤を破壊していく。
そして、その豊かな墓地は《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》の能力の源にもなっていた。
力強く宣言される《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》の起動を聞き、nicofromtokyoは次ゲームへ行くことを選択した。
戦闘民族 1-0 nicofromtokyo
一筋縄ではいかない相手ということを、お互いわかっているのだろう。
静かに集中しながらシャッフルするnicofromtokyo、ゲームの合間にも相手のリストを確認する戦闘民族。
最も勝率が高いプレイはなにか、そのためにつくべき手はなにか。
お互いの真剣な空気を感じながら、第2ゲームが始まった。
Game2
お互い7枚キープ。つまりはお互いが最も強い動きができるということだ。
nicofromtokyoの開幕ターンは、まさにそんな勢いだった。
《魔力の墓所/Mana Crypt》、《厳かなモノリス/Grim Monolith》、《Mox Ruby》。さらに《通電式キー/Voltaic Key》から5マナを用意し《溶鉄の大桶/Smelting Vat》。
すぐさまモノリスを大桶にくべると、ライブラリから《Mox Jet》《太陽の指輪/Sol Ring》が生まれ、1ターン目とは思えないマナが生まれる。
それを見た戦闘民族、本来は《狼狽の嵐/Flusterstorm》を構えられるターンまで待ちたかったはずだが、意を決して開幕ターンに《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》を戦場へ送り出す。
「腹をくくるしかない」
そうつぶやいた戦闘民族、しかしnicofromtokyoはアウフの着地前にマナを出し、《残響する真実/Echoing Truth》をアウフへ。
いったんは自由な戦場を手に入れたnicofromtokyoだが、もはや猶予はない。一時的に開放されているだけで《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》の脅威はまた襲ってくる。
何度もマナを計算し、選択肢を検討するnicofromtokyo。
次はこちらが腹をくくる番か。
《通電式キー/Voltaic Key》を大釜にくべ、ライブラリから回答を探す。
《ブラック・ロータス/Black Lotus》をはじめとして、マナを増やすことができれば手札の《鋼の風のスフィンクス/Sphinx of the Steel Wind》が勝利へと導いてくれるはずだ。
しかし、結果は《真髄の針/Pithing Needle》が1枚のみ。力なく《不毛の大地/Wasteland》を宣言してターンを返す。
ここからは戦闘民族の時間だ。《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》を力強く戦場へ送り込み、相手の脅威には《狼狽の嵐/Flusterstorm》がにらみを利かせる。
《魔力の墓所/Mana Crypt》のダメージも相まって、見る見るうちにnicofromtokyoのライフが減っていく。
念には念を、と《活性の力/Force of Vigor》で《溶鉄の大桶/Smelting Vat》を破壊し、万が一の逆転すらも許さない徹底っぷりを見せた戦闘民族が、《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》でのビートダウンを完遂した。
戦闘民族 2-0 nicofromtokyo
「リストを見た時から、《溜め込み屋のアウフ》がキーになるマッチだな、と判断しました」
戦闘民族は、マッチ終了後にこう振り返った。
「アウフを通せれば一気に勝ちに近づくマッチなので、とにかく安全に通すことを考えていました。ゲーム2に関しては相手の展開が強すぎたので、そこは割り切りですね。」
「そんな状態なので、ゲームレンジはとにかく序盤に焦点を当ててます。サイド後はそのレンジに貢献しない《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》なんかは抜いてます」
「サイド後は《アージェンタムのマスティコア/Argentum Masticore》が注意すべきところで、あとはアウフをめぐるゲームという感じですね」
ゲームの合間にもリストを確認し、ゲームプランを緻密に組み立てていた戦闘民族。その分析の一端を聞かせていただいたが、圧巻の一言だった。
その脳裏には、優勝する自分を描いているのではないのだろうか。
決勝でも、存分にそのプレイを魅せていただこう。