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限築杯 観戦記事 決勝戦 MasaH vs Gallow ~五つの力~

text by ふみ

限築杯の大会中「メタゲームブレークダウン」を公開させていただいた。前評判通り様々なデッキが存在するバラエティ豊かな環境の中で、一枚抜けた形となった二つのデッキタイプ。

ドロマーコントロール と ドメイン

2001年代に開催されたグランプリを立て続けに制した両デッキは、当時の覇を競い合ったライバル関係。それだけに前評判も高く、限築杯においても言わば「メタ対象」の筆頭であった。しかしそれでも並み居る強豪を蹴散らし、見事に決勝戦の舞台に立つこととなった。

予選ラウンドを2位で突破したMasaHはドメインを使用。当時のデッキリストをもとに更に磨き抜かれたそのレシピは、誰もが夢見そして諦めてきた《合同勝利/Coalition Victory》を引っ提げて堂々の勝利ロードを突き進む。実際に準決勝では「絶対的に不利」と語るトレンチコントロール戦に、2試合続けて《合同勝利/Coalition Victory》という華々しい結果を残している。

一方のGallowは、M:tGの歴史上においても屈指の強力スペル《噓か真か/Fact or Fiction》を何よりもうまく使用できるという理由で、ドロマーコントロールを携え参戦。見事に4位で予選を終えると、準決勝では、攻め立てるBBBを相手に75分に渡るマラソンマッチを制してみせ、インベイジョン環境のコントロールここにあり、を高らかに喧伝して見せた。

2001年、世界を分け合った二つのデッキの決着戦が20年越しに行われる。MasaH・Gallowともにそれを任せるに十二分なプレイヤーであることは今更言うまでもない。


Game1

Gallowの持つ手札破壊・カウンターを搔い潜って土地を伸ばしていきたいMasaH。その攻防はいきなり2ターン目に天王山が訪れる。

Gallowは《沼/Swamp》《平地/Plains》から《ジェラードの評決/Gerrard's Verdict》。しかしここは先手後手の妙、これをMasaHが《回避行動/Evasive Action》で弾き落とすと、自身のメインフェーズでは《砕土/Harrow》を使用して森・山・沼・島を揃えることに成功する。

Gallowが《沿岸の塔/Coastal Tower》をセット。MasaHはまだ自由になる青マナが無いことを確認すると、《俗世の相談/Worldly Counsel》で平地を見つけて5つの基本地形をを取り揃え《虚空/Void》をキャスト。


画像3

宣言は……3!


Gallowの手札をまるで見透かしたかのように的確に宣言されたその値は、《はね返り/Recoil》《調査/Probe》《名誉回復/Vindicate》という強力な3枚を一瞬で奪い取っていく。更には流れるように続くターンには《破壊的な流動/Destructive Flow》を設置して見せる。

このMasaHの完璧な立ち回りに思わず実況・解説の二人からも感嘆の声が漏れる。

あの《ジェラードの評決/Gerrard's Verdict》が通っていれば、願わくば先手後手が逆であれば、この流れを作っていたのはむしろGallowの方であったかもしれない。だが、流れはMasaHにあり、そして完璧とも言える「3」の宣言によって、自分に与えられた利を見事に活かしてみせたMasaH。

悠々と《連合戦略/Allied Strategies》をキャストし、流れを掴むために失った手札を一瞬で取り戻すと、最早この差は埋められないとGallowはさっとデッキを片付けるのであった。

MasaH 1-0 Gallow


Game2

Gallowはマリガン。ノっているMasaHに対して中途半端な手札はキープできないし、ここまで来て甘えるわけにもいかない。マリガン後の手札には満足がいったようで、2ターン目の《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》で攻撃を仕掛けるプランニングを見せていく。

ドロマーコントロールにはクリーチャーはそこまで入っていない以上、ドメイン側の《集団監禁/Collective Restraint》はサイドアウトされていると思われるため、有効な戦術のように思えるがどのような結末となるか。

MasaHは慌てず騒がず、まずは《頭の混乱/Addle》で一番の障害となりえるカウンターを取り除くべく「青」を宣言し首尾よく《反論/Gainsay》を奪い取ると、Gallowに残された手札は《頭の混乱/Addle》《名誉回復/Vindicate》《荒廃の天使/Desolation Angel》の3枚であることが露わとなった。そこには続く土地が無い。

土地さえ引ければ《名誉回復/Vindicate》で逆にMasaHを責めることもできたGallowであったが無念にもそれはならず。むしろMasaHに《破壊的な流動/Destructive Flow》を出されてしまい、虎の子の《沿岸の塔/Coastal Tower》を失ってしまうという結果になった。

《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》にすべてをかけることになったGallowは、引き入れた《平地/Plains》から2体目も追加。盤面上のクロックは4点となりこのまま押し切ってしまいたいところ……だが僅か白マナ二つで対抗するにはMasaHは強力すぎるプレイヤー。

《砕土/Harrow》で5色を取り揃えて見せると遂に《クロウマト/Cromat》を着地させる。勿論これは《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》の前に何かをできるわけではない。だが《破滅的な行為/Pernicious Deed》まで追加されると一気にパワーバランスの天秤はMasaH側に傾く。

MasaHのフィニッシュに皆の期待が高まる中、MasaHは7マナを揃えた段階で《合同勝利/Coalition Victory》とは別のもう一つの必殺技を提示してみせた。

秩序

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MasaHの勝利を祝うかのように5体の鳥が空を舞った。

MasaH 2-0 Gallow


手札破壊とカウンター、ドロマーコントロールが持つ強力な武器を完璧に封じて見せたMasaH。3という数字、青という指定、これだけの長丁場を戦ってきても常に冷静に、そして自身の信じるプランを確実に踏襲してきた。

Gallowの準決勝が長丁場になっということもあり、体力回復できたこともありがたかったとMasaHは試合前に語っている。ある意味では運も味方につけて、持てる実力を決勝戦で見せつけたということであろう。

強いプレイヤーにはそれだけの理由がある。強いデッキにもしっかりとした構築理論が存在している。MasaHにとって《合同勝利/Coalition Victory》は決して夢物語ではなく、勝利を掴むための必要なピースだったのだろうと思われる。

多色環境たるインベイジョン・ブロック構築を制したのは5種類の基本地形で織り成されるドメイン。そしてそれを見事に操ったMasaHが限築杯のチャンピオンの座を掴むことになった。

おめでとう、MasaH!