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限築杯 メタゲームブレークダウン

かつて大人気を博したタッグマッチが再び開戦する。

その時あなたは誰をタッグパートナーとして選ぶだろうか。かつて共に手を取り合った相棒だろうか、それとも当時は声をかけることすら躊躇った憧れの存在であろうか。その時分にはまだこの世界にはおらず、パートナー候補たる存在こそがレジェンドだ、という方も大勢いるだろう。

インベイジョン・プレーンシフト・アポカリプスに納められた636種類のカードで織り成されるインベイジョン・ブロック構築は、その環境の狭さと相反して非常に多種多様なデッキが作られ、そしてその多くが栄冠を抱くに至った。どのデッキに愛好者がおり、どのデッキにもそれを選択するだけの理由があった。

それだけに20年の時を超えた今、限築杯に集ったプレイヤーはいかなる感情と思考を持ってデッキを手に取ったのだろう。それは当時輝いたあのデッキなのか、それとも時代を経た今だからこそ見つけ出すことができた真のソリューションなのか。

その選択を見ていただこうと思う。


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シェア率約14%、13人のプレイヤーが選択したのが「ドロマーコントロール」と「ドメイン」となった。

まずはドロマーコントロール。白青黒の3色で構成されており、こちらの記事でもあるようにグランプリミネアポリス01を制した実に重厚なコントロールデッキである。《幽体オオヤマネコ》が地上を固める中、《ジェラードの評決》で手札を、《名誉回復》でパーマネントを、そしてすり減った手札は《噓か真か》で取り戻す。得た優位をもって《荒廃の天使》で勝利を勝ち取る。まさに前半・中盤・終盤共に隙が無く、コントロールデッキユーザー垂涎のような存在となっている。

一方のドメイン。こちらはグランプリロンドン01で優勝。デッキレシピを見るとまず目を引く5種類の基本地形。《俗世の相談》や《連合戦略》など、後に「版図」と名付けられるようになった基本土地のタイプ数を参照するその能力は、このインベイジョンで初お目見え。デッキを支える《砕土》が通ると、そこがゲームエンドへの一里塚。そこから実に豪華で強力なスペルが次々と打ち出され、あっという間に差をつけられてしまうという、基本地形こそマジックの基礎であることを改めて教えられるそんなデッキとなっている。そこから示される《合同勝利》が限築杯を制す、そんな物語も夢見てしまう。

そこに続くのは通称「SSS」(Star Spangled Slaughter)と「BBB」(Bear/Bunce/Burn)のアグロデッキ2種。前者は青赤白、後者は青赤緑で構成されている。無粋を承知で今風に言えば「ミッドレンジ」「クロックパーミッション」と呼ぶこともできるかもしれない。

白を取ることのメリットは《稲妻の天使》が先ず挙げられよう。まるで火力かのように飛んでくる天使は非常に抑えづらく、同じく白い《天使の盾》があると最早《火炎舌のカヴー》ですら手が届かない。何よりも古来よりトリコロールカラーの人気は非常に高く、それだけに猛者が集うことになり、《翻弄する魔道士》という扱うにはある程度の環境理解力が必要なカードも的確な抑止力となって立ちふさがった。

BBBの緑は《ガイアの空の民》。2マナ2/2飛行というクマ界の白眉は、地上で《幽体オオヤマネコ》が演出する戦いを無視して確実にダメージを刻み込んだ。《神秘の蛇》の強力さも言うに及ばず、最近までスタンダードを賑わせた《エリマキ神秘家》のご先祖様と言えば、当時を知らないプレイヤーの方でもその厭らしさは伝わるであろう。各種強力カウンター《終止》《火炎舌のカヴー》などを無視してみせる《疾風のマングース》も脇を固め、インベイジョン・ブロック構築のメタゲームを体現する存在となっている。

その下にはトレンチコントロール(赤白青)・カウンターモンガー(黒緑青)・マシーンヘッド(赤黒)と根強い愛好家を持つ3種のコントロールデッキ、そしてMr.ビートダウンたるステロイドが奇麗にシェアを分け合う形となった。それぞれのデッキの代名詞ともいえる《ゴブリンの塹壕》《魂売り》《ファイレクシアの盾持ち》《カヴーのタイタン》、いずれも実績十分であり、そのどれもが勝利を掴む結果となったとしても何もおかしくはない。

そのあとに続くデッキも今日という日のためにプレイヤーが磨き上げた珠玉の逸品であろう。カバレージでも随時その戦いをお伝えできればと考える次第である。

ここに各人に見いだされた精鋭が終結した。プレイヤーとデッキが繰り広げるタッグマッチを制するのは何れとなるか……乞うご期待といったとこだろう。


最後に完全に蛇足ではあるが、令和の時代に「ミカミッション」というデッキ名を見ることになった事実だけで嬉しさでいっぱいである。