限築杯企画記事 ~ドミナリアの大地、あの頃のグランプリ~
ついに侵攻を始めたファイレクシア。
様々な思惑からそれらに対抗するプレインズウォーカー。
そしてあらがうドミナリアの住民たち。
長いマジックの歴史上でも、屈指の人気ストーリーであるファイレクシアvsドミナリア。
それらを描いたカード達が登場するインベイジョン・ブロック。
今回の添削主催オンライン・トーナメントは、インベイジョン・プレーンシフト・アポカリプスの3エキスパンションを使用するインベイジョン・ブロック構築で行われる。
添削杯(ヴィンテージ)、旧作杯(オールドスクール)、に続く第三の大会、限築杯(feat.インベイジョン)として、是非楽しんでいただきたい。
(ルールについてはこちらを参照)
細かいルールは少し変わっているが、インベイジョン・ブロックの派手さ、楽しさはきっと変わらない。あの頃を思い出しながら、もしくは全く知らないカードに触れながら、大いに盛り上がっていこう。
インベイジョンが最新エキスパンションだったころは非常にプレイヤーが多く、現役で遊んでいてこの環境に詳しいプレイヤーも少なくないだろう。
もちろん主催の添削をはじめ運営に関わる我々にとっても、思い出深いエキスパンションである。
前回の記事ではこのブロック最大の特徴ともいえる強力な多色カードにフォーカスを当て、紹介させていただいた。
こんなにもカード一つ一つに熱を入れた解説が入れれるブロックも、そう多くはないだろうというくらいの文章量を是非読んでいただきたい。
今回は、その素晴らしいカード達を使ったデッキを紹介していこうと思う。インベイジョン・ブロック構築のグランプリは当時世界中で行われており、様々なデッキが活躍していた。
懐かしい気持ちになったり、興味が出てきた方は是非参加を検討してみてほしい。
インベイジョン・ブロック構築の環境
インベイジョン・プレーンシフトの友好色、アポカリプスの対抗色をメインとしたマルチカラーのカードパワーが非常に高い環境である。
また2色土地も充実しており、有効色タップイン・デュアルランドや対抗色ペインランドが初登場した。
この高いカードパワーと潤沢な色マナサポートにより、ビートダウン・コントロール共に様々なデッキが生まれている。たった3エキスパンションのみとは思えないほどのアーキタイプがあり、どれもが一線級の力を持っている。
本大会も、きっと様々なデッキに出会えることだろう。
グランプリ・デンバー01
カウンターモンガー
これまでのクリーチャー達を嘲笑うかのようなカードパワー。
理不尽な性能を持つアポカリプスの対抗色カード群の中でも、頭一つ抜けた強力さを持つカード。
メリット能力を詰め込んだ上でこの強烈なサイズは多くのプレイヤーの心を掴み、その名を冠したデッキであるカウンターモンガーを生み出した。
メインデッキ (60)
3 《魂売り/Spiritmonger》
4 《神秘の蛇/Mystic Snake》
3 《疫病吐き/Plague Spitter》
4 《ヴォーデイリアのゾンビ/Vodalian Zombie》
4 《嘘か真か/Fact or Fiction》
4 《排撃/Repulse》
3 《破滅的な行為/Pernicious Deed》
4 《蝕み/Undermine》
3 《除外/Exclude》
2 《悪意+敵意/Spite+Malice》
7 《島/Island》
4 《沼/Swamp》
3 《森/Forest》
4 《塩の湿地/Salt Marsh》
4 《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast》
4 《ラノワールの荒原/Llanowar Wastes》
サイドボード (15)
3 《ジャングルの障壁/Jungle Barrier》
4 《反論/Gainsay》
3 《撹乱/Disrupt》
4 《頭の混乱/Addle》
1 《破滅的な行為/Pernicious Deed》
グランプリ・デンバー01を制したのはそんな《魂売り/Spiritmonger》を筆頭にインベイジョン・ブロックの強力なカード達を詰め込んだデッキ。すべてのカードがアドバンテージを生み出すこの強烈さは、ブロック構築にとどまらずその後のスタンダートにまで影響を及ぼした。
グランプリ・ミネアポリス01
ドロマーコントロール
エスパー?いいえドロマーです。
ミネアポリスを制したのはUWBカラーのコントロールデッキ。今も昔もやることは変わらず、序盤を抑え込み、カードアドバンテージを取り、そしてフィニッシャーで蓋をする。ブロック構築とは思えない潤沢なスペルたちは、コントロール好きなプレイヤーを虜にしていたのだろう。
メインデッキ
2《荒廃の天使/Desolation Angel》
2《十二足獣/Dodecapod》
3《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》
4《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》
4《ドロマーの魔除け/Dromar's Charm》
4《嘘か真か/Fact or Fiction》
4《ジェラードの評決/Gerrard's Verdict》
3《はね返り/Recoil》
2《総くずれ/Rout》
4《名誉回復/Vindicate》
2《ヨーグモスの行動計画/Yawgmoth's Agenda》
4《コイロスの洞窟/Caves of Koilos》
4《沿岸の塔/Coastal Tower》
2《ドロマーの洞窟/Dromar's Cavern》
5《平地/Plains》
5《沼/Swamp》
4《塩の湿地/Salt Marsh》
2《島/Island》
サイドボード
3《頭の混乱/Addle》
3《解体の一撃/Dismantling Blow》
2《十二足獣/Dodecapod》
3《装飾ゴーレム/Emblazoned Golem》
3《足縄/Hobble》
1《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》
《幽体オオヤマネコ/Spectral Lynx》がビートダウンの序盤を抑え込み、インベイジョンブロックが誇る強力なアドバンテージカード《嘘か真か/Fact or Fiction》《はね返り/Recoil》《ジェラードの評決/Gerrard's Verdict》がカード枚数に差をつけていく。ミラーマッチや他のコントロール対策に、メイン《十二足獣/Dodecapod》というアクセントで優勝を勝ち取った名作だ。
グランプリロンドン01
ドメイン
伝説のプレイヤー、Kai Buddeもインベイジョン・ブロックで栄冠を勝ち取っている。使用デッキは5色コントロール・・・ドメインだ。
所有地カード(版図/Domain)のポテンシャルをフルに発揮させることを主眼としたデッキで、ひとたび基本地形がそろってしまえばどんなデッキよりも強力な呪文を連打できる。
メインデッキ
4《回避行動/Evasive Action》
4《俗世の相談/Worldly Counsel》
4《集団監禁/Collective Restraint》
4《連合戦略/Allied Strategies》
1《ヨーグモスの行動計画/Yawgmoth's Agenda》
4《地勢/Lay of the Land》
4《砕土/Harrow》
1《秩序ある渡り/Ordered Migration》
2《虚空/Void》
2《破滅的な行為/Pernicious Deed》
1《ゴブリンの塹壕/Goblin Trenches》
2《破壊的な流動/Destructive Flow》
1《草茂る屋敷/Overgrown Estate》
4《彩色の宝球/Chromatic Sphere》
1《レガシーの兵器/Legacy Weapon》
1《平地/Plains》
5《島/Island》
3《沼/Swamp》
2《山/Mountain》
7《森/Forest》
2《ラノワールの荒原/Llanowar Wastes》
1《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast》
サイドボード
3《暗影のボブキャット/Penumbra Bobcat》
3《魂売り/Spiritmonger》
3《頭の混乱/Addle》
1《虚空/Void》
2《破滅的な行為/Pernicious Deed》
1《破壊的な流動/Destructive Flow》
1《草茂る屋敷/Overgrown Estate》
1《レガシーの兵器/Legacy Weapon》
メインはノンクリーチャーとすることで、環境にはびこる強力な除去を空振りさせることができる。フィニッシャーは数枚しか入っていないが、基本地形がそろった状態での《俗世の相談/Worldly Counsel》《連合戦略/Allied Strategies》があれば自由自在に手札に加えることができる。ストーリー上ではヨーグモスへの切り札となった、《レガシーの兵器/Legacy Weapon》が火を噴く様は圧巻だ。
グランプリ・神戸01
トレンチ
圧倒的なトークン生成力で、コントロールデッキの強力なフィニッシャーに収まった《 ゴブリンの塹壕/Goblin Trenches 》。日本で行われたグランプリ・神戸01を制したのは、これを中心に備えたトリコロールカラーのコントロールだった。
メインデッキ
3 《回避行動/Evasive Action》
4 《除外/Exclude》
4 《排撃/Repulse》
4 《嘘か真か/Fact or Fiction》
4 《ウルザの激怒/Urza's Rage》
4 《吸収/Absorb》
4 《予言の稲妻/Prophetic Bolt》
3 《ゴブリンの塹壕/Goblin Trenches》
4 《火+氷/Fire+Ice》
4 《平地/Plains》
6 《島/Island》
4 《山/Mountain》
4 《沿岸の塔/Coastal Tower》
4 《シヴの浅瀬/Shivan Reef》
4 《戦場の鍛冶場/Battlefield Forge》
サイドボード
1 《ラッカボルバー/Rakavolver》
4 《翻弄する魔道士/Meddling Mage》
2 《稲妻の天使/Lightning Angel》
2 《撹乱/Disrupt》
4 《反論/Gainsay》
2 《デアリガズの息/Breath of Darigaaz》
先ほどのドメインと同じくノンクリーチャーにまとめられている。メインデッキに採用されたほとんどの呪文にキャントリップが付いており、息切れしにくく、かつスムーズにフィニッシュカードを探せる構成となっている。
サイドボードからは《稲妻の天使/Lightning Angel》を始めとした優秀なビートダウンクリーチャーが投入され、変幻自在の動きで相手を追い詰める。
プロツアー東京01
インベイジョン・ブロック構築といえばこれを外すことはできない。
アポカリプス発売前のデッキではあるが、是非紹介させていただきたい。
カード単体を見るのではなく、周りを取り巻く環境を読み解く思考。名づけられたその名前は、マジック界に浸透し、環境を解き明かそうとするすべてのデッキビルダーの目標となった。
「ソリューション」
メインデッキ
4《真紅の見習い僧/Crimson Acolyte》
4《ガリーナの騎士/Galina's Knight》
4《翻弄する魔道士/Meddling Mage》
4《嵐景学院の弟子/Stormscape Apprentice》
4《万物の声/Voice of All》
4《吸収/Absorb》
4《除外/Exclude》
4《嘘か真か/Fact or Fiction》
4《排撃/Repulse》
10《平地/Plains》
10《島/Island》
4《沿岸の塔/Coastal Tower》
サイドボード
2《オーラの旋風/Aura Blast》
3《聖戦の騎士/Crusading Knight》
3《完全な反射/Pure Reflection》
4《撹乱/Disrupt》
3《反論/Gainsay》
日本人初の殿堂入りプレイヤー、藤田 剛史をして「全く予想できなかった素晴らしいデッキ」(※引用元はこちら)と言わしめた、プロツアー東京2001優勝デッキ。
赤系のビートダウンが強い環境と読み切り、《真紅の見習い僧/Crimson Acolyte》に白羽の矢を立てる慧眼。
採用されたすべてのカードに明確な理由があると言わんばかりの、メインデッキ4枚づつというバランス感覚。
丁寧にメタゲームを読み、大胆にカードを選択する。
ブロック構築という狭い環境でも、むしろ狭い環境だからこその。
最大限の工夫と努力がありありと伝わる美しいデッキだ
最後に
ここまでは優勝という最高の結果を残したデッキを見ていただいたが、これ以外にも「マシーンヘッド」「BBB」のように名前だけでは何をするのかわからないデッキや、「ステロイド」「ターボ抹消」といった「いかにも」というようなデッキなど、まだまだ数多くのデッキが生み出されてた。
しかも、それぞれがメタゲームを形成し、相手の1歩先を行こうと常に進化を行う環境となっている。
この奥行きのある環境は、必ずや皆さんの琴線に触れるカードを提供してくれるだろう。
インベイジョンが発売されて20年を超えた。
その楽しさを現代でも味わってもらおうと開催される限築杯feat.インベイジョン・ブロック。
インターネット黎明期だからこその情報戦、工夫、シークレットテク。
研究されつくした環境とはまた違った景色が、ここには広がっている。
是非、皆さんのその手で新しい「ソリューション」を生み出してほしい。