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「NYLON JAPAN」20周年を迎えた今

雑誌「NYLON JAPAN」が、2024年4月26日発売の6月号をもって創刊20周年を迎えました。

原宿エリアのカルチャーと深いつながりを持ちながら刊行を続けている同誌。
創刊以来編集長を務めている戸川貴詞さんをお招きして、「NYLON JAPAN」のこれまでとこれから、そして紙の雑誌の可能性について、「COVER」ディレクターの深井航がお話を伺いました。

戸川貴詞(写真右):1967年生まれ、長崎県出身。クリエイティブなフィールドで活躍するグローバルカンパニーである、カエルム有限会社(現・株式会社)を設立し代表を務める。雑誌「DAZED & CONFUSED JAPAN」「NYLON JAPAN」などの人気ファッション・カルチャー誌を創刊し編集長を務める。現在、雑誌・ウェブ・SNSを中心に、「NYLON JAPAN」をはじめ、「HIGHSNOBIETY JAPAN」「CYAN」「VI/NYL」「NAILEX」などを運営している。

フィジカルから作り出される熱量の可能性

深井 「NYLON JAPAN」はWeb媒体やリアルイベントなど多様な切り口でコミュニティを展開していらっしゃいますが、そのなかでも紙の雑誌の刊行を継続している理由はあるのでしょうか?

戸川 取材をするときに、はじめに必ず取材対象に聞かれるのは、「フィジカルなのかデジタルなのか」ということです。
フィジカルの雑誌に参加できるのはスペシャルなことだと思っていただけることが多く、「すぐにやりたい」と言っていただけることが今でも本当によくあります。
そのモチベーションや熱量というのはすごく大事で、それを意図的に作り出すのはなかなか難しいことです。

ですが雑誌が存在することで、出演したいと思っていただけるような熱量が作れるのであれば、それはシンプルで簡単なことだと思います。
そのモチベーションや熱量が下がっているのであれば、雑誌はやはり無くなっていくと思います。
取材対象と同じく、エディターやフォトグラファー、スタイリストなど、作り手側の雑誌に対する熱量も、世界的に見てもむしろ上がっていると感じます。

深井 ジーンとするお話ですね。

「NEW POWER NO BORDER」

深井 表紙をオファーする基準や決め方はありますか?

戸川 その時のタイミングだったり、旬だったり……。
すごく世の中の“ムード”を大事にしています。それに合わせて自分たちもずっと成長し続け、新しくあり続けるっていうのは大事だと思っています。

何年か前に「NEW POWER NO BORDER」というキーワードを雑誌のテーマにしたのですが、 「NYLON JAPAN」は創刊時からずっとそのことを意識していて、とにかくどんどん新しい人を使っていく。
そこにボーダーはなく、その時その時の感覚を大切にしています。

深井 「雑誌は時代を映す鏡」といいますが、その裏付けになるようなお話だと感じました。

創刊から現在までの表紙

「NYLON JAPAN編集部」の雑味を求めた人数構成

深井  「NYLON JAPAN」さんの編集部にはどういう方々がいらっしゃるのですか。男女比とか、人数構成とか……。

戸川 男女比でいうと、ほぼ女性。ほぼというか、僕以外全員女性です。
とても少人数でやっていて、僕を含めて今は5人で、あとは外部の方です。ただ、「NYLON JAPAN」はデザイナーがインハウスに数名いて、エディターと一緒にいつも全体を考えて作っています。

深井 そんなに少ない人数で……。

戸川 頭数をあまり増やしたくないんです。頭数が増えると、尖った意見があってもどうしても物事がどんどん中庸になっていくと思っていて、それがすごく嫌で。
すべてが綺麗に整ってしまうと表現の再現性が高まり、「NYLON JAPAN」のブランド力は下がってしまうと思うので、尖った雑味が常に欲しいと思っています。


紙面インタビューにかける想い

深井 最近の「NYLON JAPAN」さんは、インタビューが多く載っている印象なのですが、なにか意識しているのですか。

戸川 コロナ禍になってからは、ほとんど写真とインタビューで構成しています。細かい情報は一切誌面からなくして、そういった情報は全部デジタルに移行しています。
むしろデジタルの方が適性があると思うので。

深井 写真だけじゃなくインタビューも、というのにはどういった狙いがあるのですか。

戸川 出演していただいているアーティストさんとか、アイドルさんとか俳優さんとか、そういう人たちとの協調文化といいますか。

SNSの反応を見ていて思ったのは、ここで言ったひとことに対してすごく反応が良かったり、その言葉にファンの方が一喜一憂しているところはすごくあったので。
やはり写真だけじゃなくて、それに伴って生の声を文字にすることはすごく大事なことだと思います。

長めにインタビューを行なうことで、そういうキーワードってたくさん出てくるじゃないですか。
シンプルに短くまとめてしまうとインタビューもきれいにまとまってしまうので、長い方がよりいろんな言葉に触れられて、読者の方々に喜んでいただけると思っています。

深井 そこでもちょっとこう、雑味が好きだからとか、そういうのがあるのですかね。

戸川 本当にそうだと思います。
特に計画的にはやっていなくて、思いついたらとにかくやってみる。それがすごくいい結果につながっていると思います。

深井 戸川さん自身もインタビューされることはありますか?

戸川 頻繫にはやっていないです。
20周年記念号で、久しぶりに宇多田ヒカルさんにインタビューさせていただきました。
創刊号の時以来20年ぶりのインタビューなので、 これはぜひ読んでほしいです。

30,000字くらい書きました。
インタビューページだけで16ページぐらいあります。

深井 文字にして30,000字ってことは実際もっとですよね……。

戸川 はい……(笑)。

COVERで場所を含めたカルチャーを創っていく

深井 今回、雑誌の図書館「COVER」に加盟していただいたことで、ここでは「NYLON JAPAN」さんのアーカイブも手にとっていただけるようになっているのですが、どうして「COVER」に参加しようと思ってくださったのか、今後この場所にどのようなことを期待しているのか、教えていただきたいです。

戸川 「原宿」という場所も大きいですね。
雑誌作りにおいて、場所を限定することはあまりないですけど、原宿カルチャーとは創刊当初からずっとつながってきましたし、渋谷・原宿中心のカルチャーが「NYLON JAPAN」にとってのベースになっていると思います。その場所柄、毎日いろいろな方がいろんなことへの興味を持って見に来る可能性があるというところが大きいです。

なのでCOVERさんに期待しているというより、こういうところで、この場所を含めたカルチャーを作っていこうという考えに、めちゃくちゃ共感しています。
僕らもこれを機に、この場所を活用していろんな企画ができるよう、今後ご相談していきたいと思っています。

深井 今後はコミュニケーションするイベントなども、いろいろ動かしていただければなと思っています。

20周年を迎えた今後の展望

深井 最後に、20周年迎えて今後「NYLON JAPAN」をどのようにしていきたいか、展望をお願いします。  

戸川 何か形をイメージして動かしているわけではないので、どうしていきたいというのは特になくて、「NYLON JAPAN」というコミュニティがこれからも存在し発展し続けられるように、僕らは毎日いろいろなもの・ことを見ながら、いろんな形に変化させながらやっていくという感じです。
逆に、今後「NYLON JAPAN」がどうなっていくのかなっていうのは、僕もめちゃくちゃ楽しみです。

文章:Rico Kogayu

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