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手紙 ~交差点

これを読んでいるあなたは今どこでどんな暮らしをしているのでしょうか?
あなたが幸せでいてくれているならそれでいいし
もしそうでないとしてもそれがあなたの運命なのでしょう
そこに立ち入る気は一切ありません
ただあなたが僕を切り捨てたあの時から僕の人生は変わった
そしてそのことに結果として僕は救われたのかもしれない
人生もゴールが見えてきたこの歳になって改めて
あなたは僕にとってどんな存在だったのかを思い返してみたく
この手紙を書いています
独り言のような話になりますが僕が変わるきっかけとなった
あなたにも知っておいてほしくて 最後までお付き合い願えたら嬉しいです

あなたとは僕の友達との縁で出会いましたよね
あなたはその彼の学生時代の「元カノ」だった
さすがにそれを知ったときは驚きましたよ (笑)
それでも別に抵抗はなくてそれどころか増々あなたに興味を持つ自分
そんな感覚に心地よさを感じていました
何度か話していくうちになんとなく二人だけで会うようになっていた
僕は勝手ながらそんなあなたにとの時間を「至福」と名付けていました

あれは二人だけで会う何度目だったのかな?
覚えていますか? ほらっ城ケ崎の先端まで歩いた時のこと
明るい内にそこに着いて さざ波を聴きながらいろんな話をしていて
いつの間にか海が夕暮れに染まる時間になっていた
どうでもいい話から真面目な話まで
こんなに話すことがあるのか?と思うぐらい二人で時を紡ぎましたよね
いつのまにか周りには誰もいなくて「海と空は二人だけのもの」だった
実はあの時 あなたを強く抱きしめたい気持ちをずっと抑えていました
それなりに辛かったです! (笑)
けど 「そこで抱きしめなかった」ことが
その後の展開に繋がっていたのだろうけどね
それはきっとあなたも感じていましたよね

すっかり日も落ち さすがに暗い岩場は危ないと思ったので
この世界を手放すのはちょっと残念だったけど
車に戻り その日はあなたを送って終わりにするはずでした
その時は 何か関係を変えようとしてあなたと遠ざかってしまったら
それは自分にとってこの上なく悲しいことになると思っていたから
素直にあなたの部屋へ向かうつもりでした
明日また会えるならそれでいいって・・・

でもね・・・そう 「でもね」だったのですよね
あの交差点 
右の「東京」へ向かえばあなたの暮らす街 左の「横浜」へ向かえば僕の街
当然ながら「東京」に向かうつもりでした
けれど 正直僕はどちらにも向かいたくなかった
あの「信号待ち」が僕に時間と勇気をくれたのです
「ねえ 聞いてもいい?」
「何?」
「今日 帰らなくちゃダメかな・・・?」
「・・・帰してくれるの?」
その言葉の後すぐに信号が青になって 僕は右でも左でもなく直進を選んだ
そして・・・
あの交差点であなたと僕は「恋人同士」になったのだと思えます




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