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新型コロナワクチンの種類は選べるようにすべきかどうか(3月29日こびナビClubhouseまとめ)

安川康介

今日は峰先生の鼻歌が聞こえません。

峰宗太郎
今、税金の申告をしていて鼻歌どころではなくて深刻な事態になっております。

安川康介
そういえばもうすぐですね。

木下喬弘
「深刻」ですねそれは。

峰宗太郎
とても深刻です。

安川康介
。。。関西の方はもっと面白いかと思っていました。

木下喬弘
誰のこと?僕ですか?
いやこんなものですよ(笑)
週末ちょっと喋り疲れたんですよね(笑)

安川康介
お疲れ様でした。
さっき木下先生の YouTube を半分ぐらい観てました。

木下喬弘
ありがとうございます。新妻免疫塾ですか?
(※新妻免疫塾K&L Immunology Club
https://www.youtube.com/channel/UCLo1omKQawoV0-NbDbfsz0w)
(※こびナビ公式youtubeチャンネルもあります
https://www.youtube.com/channel/UCAnrtaZaGUQ8Tnxl6ComqDQ)

安川康介
そうですそうです。

木下喬弘
ありがとうございます。

安川康介
一体木下先生が何者なのか、一緒に働いている僕も分からないので。

木下喬弘
実在するかどうかちょっと微妙な所ありますね。

安川康介
凄く面白かったです。
ハイブリッドERとかとても面白いですね。

木下喬弘
ありがとうございます。
あれめちゃくちゃ売り出していきたいんですけど、ちょっと違う方向に行ってしまった活動家みたいになってしまって。
本当は救急医のはずだったんですけれど。

安川康介
最近また論文出されたんですよね。
ガイドラインにも加わっていらっしゃって、すごいと思いました。

木下喬弘
ありがとうございます。実はそうなんです。実は偉い人なんです。

二人
(笑)

木下喬弘
あれは僕の師匠が開発した思い入れがある医療技術で、僕が臨床研究をやっている理由そのものなんですよね。いろんなインパクトがあって、あれのお蔭で海外学会に10回以上呼んでもらったし思い入れは深いんです。

安川康介
それはすごいですね。

木下喬弘
ホント色々なところに呼んでいただき、世界中をいっぱい旅行させてもらいました(笑)

安川康介
10例のケースシリーズでもすごいインパクトがあったみたいですね。
それってすごいなと思いました。

木下喬弘
あれは統計とか全く関係ないですね。
論文で大事なのは生物統計学ではないことを実感しました。
いや本当にありがとうございます。

安川康介
そうですよね。

木下喬弘
いえいえ、ありがとうございます。
朝から……最近生活リズムが日本に揃ってきたので、今は僕の中で朝みたいになってきたんですけど、 朝からいい気分にさせて頂いてありがとうございます。

それでは人も揃ってきましたので、
今朝もこびナビ 医師が解説する世界の最新医療ニュース始めていきたいと思います。
日本の皆様おはようございます。
昨日の夜、これを見てとてもびっくりしたニュースなんですが、なんと日本で新型コロナウイルスワクチンの種類を選択できるというニュースが出てました。
これを紹介させていただいて、登壇者の皆さんに意見をいただきたいと思っています。
僕は良し悪しを言いたい訳ではなく、驚いたという話です。

記事のタイトルは
「ワクチン、選択可能に 接種会場ごと種類分け  小林補佐官」
ということで、
(リンク:https://news.yahoo.co.jp/articles/54f4c9f9f83cd19d804842c972b73df62618d7f8)
新型コロナウイルスワクチン担当、小林史明大臣補佐官は28日のフジテレビ番組で国民がどの種類のワクチンを接種するか自ら選択できるようにする考えを明らかにした。小林氏は接種会場ごとに打つワクチン(種類)を決めていく、それは公表されるので、会場を選べば打つワクチン(の種類)を選ぶことができると説明した。
小林氏は接種に関し、「(副反応など)自身の事情で打ちたくないと判断をされる方もいると思う」と指摘。 各会場で用意されたワクチンの種類を知らせることで、「選べる環境を作っていきたい」と語った。
政府は1会場で使用するワクチンは1種類とする方針だったということでしたので、これも驚きました。
高齢者の新型コロナワクチン接種は4月12日から始まり、米製薬大手ファイザー社製のワクチンが提供される。今後一般向けなどは、英製薬大手アストラゼネカと米バイオ医療医薬品企業モデルナ社からも供給を受ける予定だ。
……こういったニュースが入ってきております。

ということで端的に言うと、非医療従事者がワクチン接種をするというタイミングで、ワクチン接種会場というものが発表されます。接種会場ごとに打つワクチンがひとつに決まっていてそれが公表されるので、モデルナ(Moderna)社のワクチンであればモデルナ社の会場、 アストラゼネカ(AstraZeneca)社であればアストラゼネカ社の会場で、その会場の予約をしたら自動的に打つワクチンも決まる仕組みに日本はなるようです。
この点について色々な論点があると思いますが、 率直に色々な意見をお伺いしたいと思います。
どうでしょうか?

前田陽平先生
よろしいでしょうか?

木下喬弘
どうぞ。

前田陽平先生
僕、木下先生がこのニュースを Twitter に投稿するまで全く知りませんでしたが、この仕組みは結構合理的なんじゃないかなと個人的には思いました。
このシステムならば、不人気になっているワクチンがもしあるとすれば、早くワクチンを打ちたい人はそこの会場で予約をすれば早く接種することができますし、もし「メッセンジャーRNAワクチンが嫌だ」というこだわりがある人は、少し時間がかかってもメッセンジャーRNAワクチン以外の指定の会場で予約することができます。
一方的に「このワクチンを打ちなさい」と強制されるより、むしろ日本人に合っていて、合理的だと思いましたが、木下先生はどう思われますか?

木下喬弘
ありがとうございます。選べるようにして、自己決定権の幅が広がれば接種が進むというコメントですね。

前田陽平先生
そうです。
例えば、非医療従事者の人でもmRNAワクチンを打ちたいという方もおられると思いますが、そういう方は少し待って希望の種類のワクチンを接種できます。
人気不人気のワクチンがでてきた時に、早く打つことを優先するのか、 ワクチンの種類を優先するのかなどに関して複数の選択肢がある事はすごく合理的だと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。「木下先生はどう思われますか?」という質問に対しての答えですが、僕は驚きました。
どう思うかと言われると、とても難しくて……どうなるかまだ見えないですよね。

前田陽平先生
実際の運用がどうなっているかはよくわかりませんが、ワクチンを選べる仕組みは良いと思います。「俺●●のワクチンだったわ」と一方的に決められるよりは、自分で決める方がワクチンの接種も進みやすい上に、みんなの理解も得やすいのではないかと。
実際の申し込みの手順などは詳しくはわからないですが、予約の手続きに関してはネットが中心になるのではないかと予想しています。
高齢者のワクチン接種は別枠で実施しながら、それ以外の人たちはワクチンを選べる制度を適用する考えなのではないかと想像しています。

木下喬弘
私は厚労省の中の人ではないので制度などの問題はどうなるかあまりよくわからないですが 、個人的には日本がワクチンをたくさん廃棄することにならないか心配です。

前田陽平先生
それはどういうことですか?

木下喬弘
ひとつの種類の会社のワクチンが、非常に不人気になって誰も打ちたくないという状況になれば、相当数を仕入れたのに誰も接種せずに捨ててしまうようなことも起こり得るのではないかと。万が一そのようなことが起きたら WHO(世界保健機構)などの国際機関から大きく非難されると思います。

前田陽平先生
それはそうだと思いますが、運用の仕方次第では捨てることなく制度を進められるのではないかと思います。
例えば、ある種類のワクチンが余ってきた場合は、余ってきた種類のワクチン以外の(接種の)予約はずっと先の期間でないと取れないことにすれば、ワクチンを捨てることなく運用が可能になるのではと思います。
どうなんでしょうか?
そこはもう、運用の仕方の問題で、専門外なのでコメントが難しいですが、うまく運用すれば良い制度になると思いました。

木下喬弘
運用の工夫というよりは、 実際にやってみるまで誰も分からないと思うんですよね。
例えば、アストラゼネカ社 のワクチンがいつでも打てる状態で、mRNAワクチンが二か月待ちの状態になった時に、それでもアストラゼネカ(AstraZeneca)社のワクチンが不人気のままなのか、そういう状況ならアストラゼネカ(AstraZeneca)社のワクチンでも打とうと思う人がいるのかは、おそらく答えられる人はいませんよね。

前田陽平先生
そうですね。その辺はかなり難しいところですね。それは確かにその通りですね。

木下喬弘
本音を言うと、公衆衛生のメッセージとしては今回の小林補佐官のコメントは少しリスキーで、先の見えないことをしていると僕は思いました。

前田陽平先生
やはりどの会場でワクチンを接種するか決めてあるほうがいいですね。
少なくとも「あなたは何月何日にこのワクチンです」と決めた方が合理的で間違いないかと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
私はトータルの死亡者数が少なくすることが公衆衛生の勝利であり、ワクチンの選択などの自己決定は二の次だ、ということを言っているつもりはありません。
「良い」とも「悪い」とも言わずに「驚いた」というスタンスをできるだけキープしようとしてるんですけど、国の政策としておそらく正しいのは、「一秒でも早く一人でも多くの人にワクチンを打つ」ということだと思います。
その観点で考えると今回の小林補佐官が触れた、どのワクチンを打つか選べるような運用の仕方は効率的なやり方なのか疑わしいと個人的には考えています。

前田陽平先生
なるほど。
迅速にワクチン接種を進めることに主眼をおいた運用の方がコロナウイルスによるトータルの死亡者や感染者を減らすという目的でいえば合理的だと思いますね。

木下喬弘
ありがとうございます。他の先生方はいかがでしょうか?安川先生どうぞ。

安川康介
はい。まずはアメリカがどうなっているのかを紹介させていただきます。
他の国のことはわからないですが、 CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のウェブサイトに「ワクチンの種類を選べますか?」という質問があります。
それに対して CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、「あなたが接種対象となった時点で受けられるものを受けてください。ある一つのブランドのワクチンのために待たないでください。承認されているワクチンはすべて有効性が高くて安全です」という言葉がしっかりと書かれています(リンク:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/faq.html)
今アメリカの状況を見ると、ワクチンを受けたくてもワクチン接種の予約が受け入れられない状態なんです。どこのウェブサイトを見ても予約がいっぱいで、なるべく早くなんでもいいから受けたいという方が多い印象です。
予約した時点で、どの会社のワクチンを自分が打つのかわかっていますので、自分が打つ予定のワクチンの種類が嫌であれば、キャンセルして別の会場を予約して、他の種類のワクチンを接種することもアメリカでも一応は可能だと思います。
しかし、アメリカは日本と違って700人に1人以上が新型コロナウイルス感染症で亡くなっているためウイルスに対して危機感がありますので、多くの人はできるだけ早くワクチンを打ちたいと思っている印象があります。
ただ、接種会場によっては、ワクチンの種類を選べると聞いたことがあります。
でもそういった会場はとても少数で、大体の会場は1種類のワクチンしか打てない思います。
アメリカだと大手の薬局が新型コロナウイルスワクチンの接種を運用していますが、各薬局には大体1種類のワクチンしか置いてないと思います。
(安川注:例えば大手薬局のCVSは、各薬局には一つの種類しかないとウェブサイトで書いていますhttps://www.cvs.com/immunizations/covid-19-vaccine#acc_link_content_section_box_1308109738_boxpar_accordion_2011799818_6)
これは、ワクチンのタイプによって取り扱い方が異なることもあると思います。
例えばファイザー社では、 ワクチンの解凍が室温だと30分くらい・冷蔵庫で2~3時間、それから1.8 mLずつ入れてそれを0.3 mLずつ打っていきます。
アストラゼネカ社だったら、冷蔵保存で大丈夫です。
取り扱い方が異なる複数の種類のワクチンが同じ接種会場にあると混乱が起きる可能性もありますので、 接種会場ごとにワクチンの種類を決めておくのは合理的だと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
医療従事者が接種するのであれば、3種類ぐらいあってもダブルチェックすれば間違いはそれほど多く起きないと思いますが、アメリカではワクチンを投与する人が必ずしも医師とは限らないため、例えば薬局単位で取り扱うワクチンの種類を統一するのは確かに合理的かなと思います。
他の先生方、いかがでしょうか?

伏見淳先生
僕はアメリカで乳腺外科医をしております伏見と申します。
僕はファイザー社のワクチンを打ったのですが、このニュース、ワクチンを選べるのは個人的にはいいことだと思っています。ファイザー社とモデルナ社は正直そこまで変わらないと思いますが、アストラゼネカ社のワクチンは他の種類のワクチンと比べて少し違いますよね。
ですので、ワクチンの種類を選択できたほうが、説明する方としても説明しやすいと感じました。
面白い政策だと思います。

木下喬弘
説明できるほうがいいというのは具体的にどういう意味でしょうか。

伏見淳先生
mRNAワクチンか、ウイルスベクターワクチンか、そういった話で、見方が違う人もいるのかなと思いまして。
接種する、という意味ではどちらでも関係ないかなと思うのですが、選べた方が良いと感じる人もいるのではないかなという意味で、 (新型コロナウイルスワクチン接種者が接種ワクチンの種類を)選べるのは悪くないかなと思いました。

木下喬弘
ありがとうございます。
例えば、「この会場で接種できるのはアストラゼネカ社のワクチンです」となったときに、「それってどんなワクチンですか?」と電話越しに聞かれた時にその会場の方は答えられるように準備できるという、ご意見でしょうか?

伏見淳先生
そういう意味ではなくて、医療者が発信していく上で、やりやすいのではないかなと思いました。

木下喬弘
なるほど。要するにもう少し新型コロナウイルスワクチンに対して興味を持ってもらうための発信という論点からですね。ありがとうございました。
どうでしょう?安川先生?

安川康介
そうですね。やはり国のメッセージとしては、承認するからには、全部推奨してますと情報発信をしていって、例えばファイザー社の方が他の会社のものよりはるかにいいというような印象を生まないようにするのが大切なのではないかなと思います。
確かに、 発症予防効果を見ると、アメリカだとジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社のものが72%で、ファイザー社やモデルナ社の94%〜95%と比べれば低いんですけれども、重症化を予防する効果ですとか、入院を予防する効果・死亡を予防する効果というのはいずれもどれも高いので、どこかの特定のワクチンを大勢の人が求めてしまうというようにならないように情報発信していくことも大事なのではないかと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
おっしゃる通りで、僕たちは民間の団体なので、比較的好き勝手言えるわけなんですけれども、国承認プロセスに関わっている方や団体では制約もありますし、何を言ってもいいというわけではないので、難しいところに踏み込んでいくんだなとニュースを見て思っていました。というわけで、どうでしょう? 他の先生方?

池田早希
いいですか?

木下喬弘
はいどうぞ、池田先生。

池田早希
需要と供給の問題がありますので、まだ日本では1種類しか承認していませんし、医療従事者もまだごく一部しか接種が済んでいないので、選べる状況ではないと思います。打てるワクチンをできるだけ早く接種するのが大切です。
だんだん供給が追いついてきて、選べるようになるのであれば、例えばジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社のものは1回接種で、しかも冷蔵保存ができてそういう意味では多くの人に行き渡りやすい、かつ反応(例えば発熱や接種後の痛みや腫れ)の頻度も低いので、 そういうようなことで選び、コンプライアンスを上げることは考えていいと思います。それはあくまで需要と供給のバランスが追いついてきてからだと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。そうですね。
Yahoo ニュースのコメント、結構面白いですけど、
「ワクチンが十分に入手できてないのに気が早いな」というコメントがありましてその通りだなと思って。
先生がおっしゃる通り、選べる前の段階じゃないのかなというところもありますし、 その上で十分な供給があるのであればワクチンの種類を選べるようにするというメリットもあるでしょうね。

池田早希
そうですね。後はファイザー(Pfizer)社やモデルナ(Moderna)社は -20℃の冷凍保存が必要です。一方で、冷蔵庫で保存ができるアストラゼネカ(AstraZeneca)社やジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社のものは、地方等の冷凍設備がないところではこちらを優先するとか、そういった使い方がいいのではないかなというように思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
そうですね、いろんな論点があって、まとめるのがなかなか難しいですね。
黑川先生どうでしょう?

黑川友哉
ごめんなさい。
わたしはすごくシンプルにこのニュースを捉えています。
日本では「打つか打たないか?」という、海外から見たら「今こんなことで議論してるの?」というような論点になっています。
そこから選択肢が増えることによって、「打つ上でどれにする?」という議論にシフトしていくのであればこれは歓迎したいなと私は純粋にそう思いました。

木下喬弘
それは確かにそうですね。 おっしゃる通りで、選択肢が「打つか打たないか」にするのではなくて「これを打つかあれを打つか」にすると言う論点になるのはあるかなと思いました。

黑川友哉
行動原理学の本で読んだんですけれども、人間はどうしても不合理に似たものしか比較できないということが言われていて、極論的に「打つ・打たない」という、どう比較すればいいのだという議論より、「A と B というワクチンがあって、どちらを打つ?」という比較の方が人間はしやすいと言われていますので、そちらの方にシフトしていくのかなとニュースを見ていて思いました。

木下喬弘
ありがとうございます。
一方で、僕が一番気にしているのは国際保険的な観点です。
日本は何回か海外から批判されてますけど、新型コロナウイルスワクチンを買いあさっているわけです。
自国でワクチンを作れずに高いお金を出して他国から輸入しておいて 、ある種類の新型コロナウイルスワクチンは全然使わずに破棄する、というようなことをするとどうなるでしょうか。
発展途上国など新型コロナウイルスワクチンを買う能力がない国で、それが使われていればたくさんの命が救われたのに、というようなことになると非常に世界的に印象が良くないですし、WHO(世界保健機関) は100%批判してくるでしょう。
実効性のある経済政策を加えてくる組織ではないので、知らぬふりをするという考え方もできると思うんですけれども、公衆衛生を学んだ身としては微妙な気分になっております。

……この辺りにしておきましょうか。
これは結構センシティブな問題をはらんでいるので僕も難しいところがあって結構悩んでたんですけれども、 日本はとりあえずそういう方向で舵を切った、ということでまとめておきます。

もう一つ、 これは先週ちょっとまとめようかなと思ったニュースで、今日持ってきたんですけれども、ミシシッピでワクチンの情報提供について問題があったということがニューヨークタイムズでニュースになっているのでこれを少しご紹介させていただきたいと思います。

タイトルが
“Mississippi says it will remove'misleading' advise about the vaccine.”
(リンク先:https://www.nytimes.com/live/2021/03/24/world/covid-vaccine-coronavirus-cases/mississippi-says-it-will-remove-misleading-advice-about-the-vaccine)
ミシシッピ州がミスリーディングなアドバイスを辞めるということで、それがニュースになっています。
Bobby Wayneさん、64歳のおじいさんがミシシッピ州のホットラインに新型コロナウイルスワクチンを受けたいんだと問い合わせをしたところ、不正確な情報を伝えられたということです。

「ワクチンが効くという証拠は一切ないけど、 それでも打つか?」という情報提供をされたと。結構ひどいですよね。
こういった情報提供をされてもこのおじいさんは「はい」と希望を言ったところ、
「今のところ予約は取れません。次の日の朝に電話をかけてください。」 と言われたということです。むちゃくちゃですよね。
彼の娘さんがバイオメディカルエンジニアリングのアシスタントプロフェッサーで、バイオ系の専門家で、Carnegie Mellon University という超一流大学の助教をされているということで、彼女がミシシッピ州の一連の対応について Twitter で呟いた、ということのようです。
なんでこんなことになったかと言うと、 ミスリーディングを招く文書のせいだとミシシッピ州は説明しています。
「新型コロナウイルスワクチンで、妊娠している方や授乳中の方、あるいは免疫不全のある方に対する有効性や安全性はデータ上、証明されていません」というような文書があって、それを元に回答することになっていたのでこのような返答になりました、との回答をしています。
 全然話が噛み合ってないのですが、そこを問題とする記事ではなくて、この文書が問題となったということを説明しています。
それに対して多くの専門家は、妊娠している方や授乳中の方などに対しても、潜在的なリスクについて問題とするよりも、ワクチンを接種することによるメリットの方がずっと高いと考えています。

これらを元に、ミシシッピ州は
“We are replacing this confusing and misleading language,”と言っていて、
すなわち誤解させるような文書を書き直しますとミシシッピ州が公式に表明して、情報提供が改善されるというようなことがニュースになっています。
またメディアとしてこういう事を取り上げることも積極的だなと思いました。
州の情報提供としても確かに正しくて、確かに妊娠中とか授乳中の方・免疫不全の方などは第Ⅲ相試験で含まれていなかったので、これらの方々に対する有効性安全性はまだ証明されてません、と 機械的に読むこと自体は間違っているとは言わないです。
そこから一歩踏み出して、今現在メリットとデメリットをどこまでのことをどれぐらいの確実性がわかっているのか、ということを正確に伝えようとする努力がワクチンを接種するかどうかを決めたい人にとってとても重要だと思っています。
そういうところを杓子定規にデータに基づいた事実だけで冷たく反応するのではなくて、受け取り手がどういう風に受け取るかを考えて情報提供をしようと州として実施する姿勢が僕はすごくいいなぁと思いました。
それをポジティブに伝えるニューヨークタイムズもいいなと思って、この記事を取り上げたという感じです。
議論があるかもしれないですが、どうでしょう、登壇者の先生なにかありますか?

(無言)

シーンとしたら、安川先生ということで。

安川康介
そうですね。 このニュース結構面白いと思って。文書自体は間違っていなくて、それを伝えようとした方が誤解をされていたのか、別の言い方をしてしまったという問題だったと思うんですね。
日本でも各自治体で、新型コロナウイルスワクチンに対する問い合わせの窓口があると思うんですけれども、現場にいる方々がどれぐらいワクチンに関する説明ができるようになればいいのかというのはとても難しい問題だと思います。

木下喬弘
そうですね。

安川康介
ものすごくワクチンの情報は頻繁に更新されていますし、ちょっとした言葉の使い方で受け取り手の情報の受け止め方が全く違ってきたりするので、現場の方にワクチンに関する教育をしっかり実施していくということはすごく難しいと思うんですよ。
今回の新型コロナウイルスワクチンに関して言えば、自治体なら自治体でしっかりした情報提供を、文字ベースだけではなくて目が不自由な方もいらっしゃるので、いくつかのやり方で集中させて情報提供する場があって、実際に問い合わせを受けたりする方がそこまで詳しく知らなくてもいいような体勢をとった方が良いのではないかなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
あまりこういう事を言うのはよくないんですけど、中立な情報提供というのはそもそも存在しないという説もあるので、あえてこの問題に突っ込んでみます。
間違っていない範囲の情報提供で、全くワクチンの知識が無い方に対してワクチンを打ちたいと思わせることも、打ちたくないと思わせることもできると思うんですよね。
どういう情報提供をするかというのは、情報を発信する側の判断も多分に入っているもので、どう伝えるかによって、めちゃくちゃ印象は変わります。完璧なものはないにせよ、そういうところも突き詰めていって、その人にとっていいと思われるような受け取られ方ができるように情報提供するということを僕は常に考えてやっています。なので、そういう方向性をポジティブに捉えるというアメリカのニュースの空気感というのは、すごくいいかなと思いました。
安川先生のおっしゃる通り、それを全接種会場の人に求めるかというとかなり厳しいところもありますが、公的機関一つ一つは少しそういったこともできるようになっていて欲しいなというのは、正直思っているところです。

安川康介
はい。このニュース、ニューヨークタイムズで取り上げられていますが、もともとはお父さんがワクチンを受けられなかったということを「変なこといわれた」と Twitter でツイートして、いわゆるバズって、ミシシッピ・フリープレスという地元新聞に取り上げられたんですよね。それで話題になって、ニューヨークタイムズに取り上げられたという流れだと思いますが、そこが結構面白いなと思って。
しかも、この64歳の方、「ワクチンの効果はないかもしれないですよ」と言われて、それでも、「受けたい」と言ったのが 、面白いなと思いました(笑)

木下喬弘
それは州の情報提供の前にご自身で判断されたのかもしれないですけれども(笑)
いいですよね。Twitter でバズって、メディアが取り上げてくれるという流れが、日本でももうちょっとできたらいいなと思うところもあって、そういうのもあって面白いニュースだなと思います。他どうでしょう、先生方。今日ドラえもんおとなしいですけど。聞いてます?

峰宗太郎
いや、聞いてます聞いてます。大事な話なので、どういう風に情報提供するかもそうですし、実際に社会的にワクチンは使われるものですから、医学だけの話ではなくて多くの人が参加していく話題になってきたなと最近感じますね。
こういった社会的なこともどんどん紹介していければ議論が活発になって楽しいなと思いながら聞いてました。

木下喬弘
ありがとうございます。
社会派医療啓発団体としてこびナビも一皮むけたということで、本日はですね……
まとめかたが下手すぎる(笑)……まぁこんなところで、今後科学的なエビデンスだけではなくて、ワクチンをどういう風にみんなで考えていけばいいのか、みたいなところも、率直に、個人の意見を話し合うルームにしていけたらなと思っております。
本日も時間が来ましたので、こんなところで終わりにさせていただこうと思います。

こびナビは、クラウドファンディングを行ってまして、残り72時間を切りました。
現在、1600万円少々のご支援をいただいております。ご参加いただいている皆様、本当にありがとうございます。
残り60時間55分で、3000万円を目標にして今1656万円という状況ですので、もしまだご参加いただいてなかった方がいらっしゃいましたら、ぜひクラウドファンディングのページも覗いていただいて、ご支援が難しい場合も、情報を拡散していただければ非常にありがたいので、ご協力よろしくお願いします。
ということで、本日のこびナビ 医師が解説する世界の最新医療ニュースはここまでにさせていただきたいと思います。
ご登壇いただいた先生方、ありがとうございました。
それでは日本の皆様、良い一日をお過ごしください。

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