⑬ワルシャワ以降の旅程を決める
10日目、前回の続き
今日も朝早くに目覚め、リビングにて朝食を摂っていたところ、日本人のおじさんに会った。
「おはよう」
「おはようございます」
定年後の世界旅行
僕らは互いの身の上話をしていた。主に彼が話し、僕が聞きながら相槌を打つ。彼はドイツの外資系で働いた後、定年を迎えて今は悠々自適の生活を送っている。そして年に4ヶ月は海外旅行をしているということだった。
奥さんは10歳年下でまだ現役で働いているため、一緒に旅行すると言っても彼の旅程に短期間だけ奥さんが合わせることが多いらしい。会社員のうちは仕事でドイツへ出張に行ったりしたものの、旅行自体はそれほどしてこなかったとか。定年を迎えてからは中南米やヨーロッパ各地、ありとあらゆる場所へ行っているそうだ。
それも、同じ国内を回りながら1ヶ月近く滞在することが多いらしい。旅行の期間が長いため、ホテルは奥さんと泊まる際にしか利用せず、普段はこうやって若者に混じってホステルに泊まっているとのことだ。このホステルは中年の人も多く意外だったと言っていた。彼の言葉で印象的だったのは
「こういう旅行ってみんな若い時しかできないって言うけれど、定年迎えてからでも別にできるよ」
という言葉だった。これは、彼だから言える言葉だ。英語を話し、年金があり、十分な貯蓄がある彼だからこそ年に4ヶ月も旅行していられる。他の同世代、たとえば僕の親なんかは定年がないから時間がなく、十分なお金もない。ましてや英語なんて全く話せず、旅行のノウハウもない。もし仮に定年後にそういう生活を望むのであれば、その日に向けて若いうちから十分な準備をしておかなければならない。
それでも先のことなんてどうなるか不明だ。だから僕は、今できるなら今やればいいと思う。彼が言うように「今しかない」ということはないかもしれないけれど、先のことはその時になってみないとわからない。今できるんだったら、今やればいい。ただそのために安定した地位を捨てたりとか、そこまでは推薦できないが。
「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。良い旅を」
彼はそういってこのホステルを後にしていった。これから奥さんと数日の間だけ夫婦水入らずの旅行になるのだろう。
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