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【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 1月20日~リヒャルト・ワーグナー 楽劇『トリスタンとイゾルデ』

音楽観を鍛える鑑賞録。
1月20日 本日のテーマは、
【周辺】歴史上の出来事や偉人、世界の文化など、西洋音楽に影響を与えた事柄を解説。
とりあげる作品は、
リヒャルト・ワーグナー /
楽劇『トリスタンとイゾルデ』
です。

いますぐ聴きたくなる! 1日1ページでわかるクラシック音楽の魅力
1週間で7テーマ! 1年で「クラシック音楽」の虜になる!
本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。

以前、自分の記事で丸山珈琲が手がけたコーヒー豆のオリジナルブレンド、"丸山珈琲 ワーグナーブレンド ~トリスタンとイゾルデ"から、このオペラを見聞きして記したこともありました。
あのときは断片を聞きかじってなんとなく理解をしたつもりでしたが、時を経て全曲フルの対訳版がYouTubeであがっていたようで、この機会に改めて4時間ほどのオペラを聴きながら、記してみます。

トリスタンとイゾルデ』、全3幕、演奏時間は3時間55分。
中世ケルトの吟遊詩人が詠え継いだ伝説。
ワーグナーはこのオペラを1857~1859年にかけて作曲台本を手がけたそうです。

あらすじとしては、
"マルケ王に嫁ぐイゾルデを送り届けるために仕えていた騎士トリスタン、誤って媚薬を飲んでしまい、二人は恋路に走り、王にバレてしまってトリスタンは討たれる。瀕死のなかイゾルデを待つも、会う前に亡くなってしまい、イゾルデも後を追う。"

このオペラを書き上げる胆力はすごいものですが、なぜここまで賛辞を贈られているのかいろいろ調べていたら、「トリスタン和音」の解説がとても興味深いものでした。

専門的な音像の解説は、ガヤさんの下記の記事や、

アントニオ・パッパーノが解説する下記の動画を見ていただいきたいのですが、

今日は、このオペラ、「トリスタン和音がもつ不協和音的な音、次にくる音が解決される和音(トニック)であってほしい。けど次にくる音はいつも未解決。」という部分を抽象的に考えてみたいと思います。
どういうことかというと、
「世のなかずっと完璧じゃない展開が続いていくけど、それに気づいていれば生きかたはだいぶラクになるよね。」ということです。

トリスタンとイゾルデが構成している音像は、往々にして不安と苦しみの連続です。延々と違和感のある音が継がれていき、長い長い歌劇が終幕となる「愛の死」、最後の部分でようやく旅の終わりとも感じられるトニックコードに至る。
この帰着感は、聴衆に安堵を覚えさせるとともに、人生もそういったものやもしれんという気づきを与えてくれます。

ワーグナーの偉大さのひとつは、この和音を駆使して、調性崩壊をさせ、音楽史を変えたことです。ひいては、人生の旅路を抽象化して明示したものでもあり、これはたしかにすさまじい楽曲だな、と思わされるとともに、ぜひ本仕込みで聴いてみたいと願うものになりました。

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