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【音楽×珈琲 鑑賞録】8月20日~ジュゼッペ・ヴェルディ オペラ『リゴレット』

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【134日】
8月20日のテーマは、【主題】

とりあげる作品は、
ジュゼッペ・ヴェルディ /
オペラ『リゴレット』

です。

ジュゼッペ・フォルトゥニーノ・フランチェスコ・ヴェルディ
Giuseppe Fortunino Francesco Verdi
1813年10月10日 - 1901年1月27日
19世紀を代表するイタリアのロマン派音楽の作曲家、「オペラ王」

今回とりあげる『リゴレット』(Rigoletto)は、全3幕からなるオペラで、1851年、ヴェネツィア・フェニーチェ座で初演。ヴェルディ中期の傑作です。

リゴレットといえば個人的には吉祥寺にあるカフェのイメージでしたが、元ネタ?はこのヴェルディのオペラだったんですかね。
オペラ『リゴレット』は、巨匠ヴィクトル・ユーゴー作『王は愉しむ』(Le Roi s'amuse)が基になっていますが、この原作は風刺がききすぎ、物語も圧倒的悲劇だったため、オペラ化に難航する作品でした。
多くの労力を割くことを余儀なくしながら、それでもヴェルディは作品に落とし込みたかった理由を探ってみると、ヴェルディの作品への意気込みとユーゴー作品の凄み、その人気の理由も窺い知ることができます。

ヴェルディは、この物語の主人公である道化師トリブレ(Triboulet)を「全ての劇場、全ての時代が望みうる最高の登場人物」だと高く評価していました。
主人公道化師の「醜悪な外見と誇り高い内面の二面性」に価値を見出していたようで、現代における、ジョーカー(Joker)のような、まさに全時代を通じて悲劇のヴィランに惹きつけられる存在価値をヴェルディが喝破していたのは流石の審美眼です。

ユーゴーの代表作は『レ・ミゼラブル』(Les Misérables)ですが、それに負けず劣らずの内容をもつ悲劇の物語。
オペラの冒頭から減七の和音(ディミニッシュ・セブンス・コード)を使用し、不穏な空気感を演出しながら、ユーゴー作品特有の不条理に喘ぐ人々を展開していきます。
軽やかに歌われる有名なカンツォーネ、『女は気まぐれ(女心の歌)』(La donna è mobile)も、歌詞はままならない境遇への葛藤を歌うもの。
最後のシーンにおいても、救いようがなく幕を閉じます。

こうした報われず、世の不条理さに「呪い」を訴えるような作品はいつの時代にも惹きつけられるものがあります。
これで不安や恐怖を煽られ、怯えるようになってはいけませんが、人間の思考は本来こうした不安や恐怖からの逃走本能で生きながらえてきました。
そして安心安全な心地になったときに味わう多幸感もまた甘美なものです。

翻して、人間の本性や傾向に考えを及ぼし、本当にありたい感情と生き様をもって暮らせるようにしましょう。
あらゆることに思考が行き届くことは難しいし、不条理な現実に喘ぐこともあるでしょう。ただ、そこに止まっている限り、リゴレットの世界観の中から出られない状態だと考え、抜け出す姿勢をとることが必要です。

自分がいま在るべき状態なのかどうかを知り、教養を得るという目的においても、この作品に聴き耳をたてて惜しくないと思います。

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