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【音楽×珈琲 鑑賞録】8月27日~ジュール・マスネ オペラ『タイス』

音楽観を鍛える鑑賞録。 
エンディングまであと【127日】
8月27日のテーマは、【主題】

とりあげる作品は、 
ジュール・マスネ /
オペラ『タイス』
です。

ジュール・エミール・フレデリック・マスネ
Jules Emile Frédéric Massenet
1842年5月12日 - 1912年8月13日
フランスの作曲家

今回とりあげるジュール・マスネの『タイス』(Thaïs)は、1894年に初演された3幕7場の「抒情劇」('comédie lyrique')と題されたオペラの一つです。
有名な『タイスの瞑想曲』(Meditation)はヴァイオリンと管弦楽のための間奏曲であり、第2幕第1場と第2場の間に演奏されています。

マスネのなかでも人気の高い作品で、以前記事にした『マノン』と同様、現在でも頻繁に演じられています。
大筋としては、キリスト教修道士アタナエルが高級娼婦のタイスにキリスト教への改宗を説きますが、それはアタナエル自身の欲望によるものだと葛藤する様が描かれます。
欲望なのか愛情なのかと人間の精神はきっぱり分かち難く、そうした思想の複雑さに葛藤するもので、当時の宗教観やエロティシズムなども窺い知れるような作品です。

抒情劇としての舞台が動画であったので観てみると、アーティスティックで身体性に富んだ、暗黒舞踏の様相も見受けられるような現代芸術で非常に興味深い作品でした。
有名な宗教画を観るような、日本においては発想できない美術観があり、これこそヨーロッパの文化!と思わせる筆舌し難い美学を見聞きできます。
優雅で美しい旋律のあるオペラなので、英語字幕でもじっくり意味を噛み締めながら鑑賞でき、ハイエンドな英語学習にもなるかもと思いました。

価値観の違うところで軋轢を生みながらも、それぞれの落としどころを見出し、前に進む。
ジュール・マスネは「マノン」というファム・ファタールを選択して、音楽作品にしましたが、その流れに沿った「タイス」は、より人間の本質を描くような作品で、悲劇でありながら、なぜか希望を感じさせ、より洗練された印象を覚えました。

音楽の壮大さと美しさ、それを演じる人間の身体と精神が可能性を感じさせる。
長丁場でしたが、特別な芸術作品の一端を観れたようで、清々しい気持ちになりました。

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