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【音楽×珈琲 鑑賞録】5月7日~ジュール・マスネ オペラ『マノン』

音楽観を鍛える鑑賞録。
5月7日のテーマは、【主題】

とりあげる作品は、
ジュール・マスネ /
オペラ『マノン』

です。

ジュール・エミール・フレデリック・マスネ
Jules Emile Frédéric Massenet
1842年5月12日 - 1912年8月13日
フランスの作曲家。

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した音楽家ジュール・マスネは、オペラ作品が有名で、そのうちのひとつが『マノン』。
この作品は、パリのオペラ・コミック座で1884年の初演からスタートし、1959年に2000回を数えた人気題目です。
原作アベ・プレヴォーの小説『マノン・レスコー』に基づく内容ですが、このマノン・レスコーはファム・ファタール(運命の女・男を破滅させる魔性の女)を描いた最初の作品とされているようです。

現代でも人気が根強い「魔性の女」的作品の最初期作品と知ってからみると感慨深いものがあります。
主人公のマノンは、享楽的性格で奢侈を求め過ぎて堕落し、最後は不遇の死を迎えるという悲劇的な内容です。
倫理と戒めの教訓的学びもあれば、シャーデンフロイデ的エンタメ要素もあるため人気を博したのではないかと推察しますが、総合芸術であるオペラで映える要素がたくさん詰まっていることは理解できます。

良くも悪くも、人間の「業」に根ざした、現代的に表現するならば、「脳」にグッとくる要素全部のせ作品でもあり、言語が分かればもっと面白いだろうなーとは素直に思います。

それにしても、ここまでオペラ作品に何点か触れてきて思うのは、
リアリティのない演出にもかかわらず感情移入し楽しめる、人間の想像力の豊かさに感嘆してしまいます。
この「マノン」でも、最期に至るまで死の際を表現しながら、高らかに歌いあげます。
超至近距離でお互いを見つめ合いながら歌いあったかと思えば、急に離れて朗々と説明するかのように絶唱をする。
このリアリティのない過剰な演出に聴衆も想像力を膨らませ、補完する。
そして、このコントラストの強い表現がヨーロッパの文化や人格を形成していったのではないかとも思えてきます。
個の力も強いのに、それが集団で、一致団結してカラフルに表現するパワフルなオペラを見ると元気が出る理由がだんだんとわかってきました。

こうした悲劇の題目にもかかわらず、長年人気を保ち続け、現在にも息づく世界観を維持しているのは、圧倒的なパワーがこんこんと湧き上がるエコシステムが組まれているからであり、このパワースポットにあやかりながら、学び得られるものを留めておきたいですね。

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