2週間で楽観性を高める方法 ~「最高の自分」をイメージするエクササイズ~
こんにちは。紀藤です。本記事にお越し下さり、ありがとうございます。
本日も「強み」に関連する論文の紹介です。
強みには「希望」「ポジティブ」「楽観主義」などの言葉が含まれることがありますが、その有用性を示す論文と言えるかと思います。それでは早速まいりましょう!
今日の論文
30秒でわかる論文のポイント
楽観主義は、未来にポジティブな期待を持つことが心理的・身体的な健康に良い影響を与えるとされています。
この研究では、BPS技法(Best Possible Selfのイメージング)を用いて楽観主義を高めることを目的としました。
具体的には、54名の大学生が2週間、1日5分間のイメージングを実施しました。その結果として、BPSイメージングは日常活動イメージングよりも楽観主義を大幅に向上させました。
この効果は気分の変化に依存せず、独立して確認されました。
「楽観主義」の先行研究
「楽観主義」がもたらす効果には、様々な物があることが知られています。
たとえば、以下の4つがあります
1,心理的健康の向上(ネガティブな出来事やストレスに対して高い回復力がある)
2,身体的健康の向上(心血管系疾患の進行を遅らせる、病気や手術後の回復が早い)
3,ポジティブな気分と回復力(困難に直面しても回復力が早い、積極的に問題解決に取り組む)
4,説明スタイル(ポジティブな影響を内的・永続的な要因に帰属させ、ネガティブな出来事を外的・一時的要因に帰属させるため、ネガティブの影響が少ない)
などです。こうした楽観主義に関する先行研究として、以下のようなものが紹介されています。
そして、今回の研究では、Peters ら(2010)の楽観主義を高めるための介入研究である「最高の自己」(Best Possible Self, BPS)技法を用いて、楽観主義がどのように変化するかを実験群と対照群でわけて行いました。
「最高の自己イメージング」のやり方
では、最高の自己(Best Possible Self:BPS)イメージングとは、どのように行うのでしょうか? 以下、本論文に基づいたBPSイメージングの具体的な手順をまとめます。
研究の概要
さて、上記のBPSイメージングの介入効果がどのようなものだったのかが、本論文のメインテーマとなります。以下、本研究の対象者と方法についてです。
●対象者
・54名のオランダ語を話す大学生
●研究方法
・実験群(最高の自己(Best Possible Self, BPS))と対照群(日常活動のイメージング)に分け、2週間にわたり1日5分間のイメージングを行った。
●測定尺度
・楽観主義: Life Orientation Test (LOT)【Scheier & Carver, 1985】
・未来予期: Subjective Probability Task (SPT)【MacLeod, 1996】
・説明スタイル: Attributional Style Questionnaire (ASQ)【Seligman et al., 1979】
・気分(ポジティブ/ネガティブ): Positive and Negative Affect Schedule (PANAS)【Mackinnon et al., 1999】
・神経症傾向: Neuroticism Scale of the Eysenck Personality Questionnaire (EPQ-N)【Eysenck & Eysenck, 1985】
・モチベーション: Self-Concordance Motivation (SCM) Questionnaire【Sheldon & Elliot, 1999】
●効果測定の方法
合計4回で、上記の測定尺度についてアンケート調査を行い、実験群と対照群で比較を行った。
1,最初のセッション前(ベースライン測定)
2,1回目のイメージング後
3,1週間後
4、2週間後(最終測定)
研究の結果
わかったこと1:実験群(BPSイメージング)は、「楽観主義」が高まった
ベースライン、1週間後、2週間後の「楽観主義: Life Orientation Test (LOT)」が、対照群に比べて実験群(BPSイメージングをしたグループ)は有意に高まりました。
わかったこと2:実験群は、「未来予期」がポジティブとなる傾向が見られた
ベースライン、1週間後、2週間後の「未来予期: Subjective Probability Task (SPT)」が、対照群に比べて実験群(BPSイメージングをしたグループ)は有意に高まりました。
わかったこと3:実験群は、「ポジティブな気分」が高まった
ベースライン、1週間後、2週間後の「ポジティブ/ネガティブな気分: Positive and Negative Affect Schedule (PANAS)」において、ポジティブな気分が高まる傾向が見られました。
まとめと個人的感想
その他、説明スタイル: Attributional Style Questionnaire (ASQ)についても、実験群は2週間後まで有意に高まっています。
ということで、総じて「最高の自己(BPS)イメージング」の介入は「楽観主義を高め、ポジティブな感情も増加させる」ということが言えたのが本研究の結果となりました。
ただ、研究の限界として、「今回の参加者(54人)は高学歴の若い女性」であったことが挙げられています。女性のほうが視覚イメージがしやすいこと、また高学歴の人は将来に対してBPSを達成する可能性があるため、そうではない人(低学歴・男性・年齢が高い)に比べ、遥かに容易であった可能性がある、と述べられています。
この研究の続きについては、また別の論文で「BPSのレビュー論文」が存在しているため、後日また読み解いてみたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!