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263kmマラソン体験記⑤ ~灼熱の国道と山崎まさよし~

続き

スタートから35時間たちました。3日目の朝、現在194km地点です。
前回のお話はこちら

3日目_朝(194~220km)

最後の夜が明ける

現在195km。3日目の朝4時30分。
空は明るくなりました。最後の夜が、明けたのでした。

山道を降りた先に佇む馬が、ローカル感を感じさせます。

山道を降りたら馬がいました

休憩所まであと10km。でもこの10kmが長い。そしてやっぱり眠い。「ちょっとだけ寝よう」。駐車場のベンチのようなところを見つけ5分だけと思い、横たわります。すると、今度は車に乗った若いお兄さんが小走りで近づいてきました。

「お疲れ様です!お味噌汁、飲みます?」と一声。

体が塩分や栄養分を必要としている中、味噌汁という最高に嬉しいギフト、そして優しさが身に沁みました。紙コップに入ったお味噌汁を持ってきてくれます。「この時間、辛いですよね・・・もうちょっとです、がんばりましょう!」

この方は今回参加されなかったのですが毎年参加されている猛者であるそう。その明るすぎる声には、この時間のキツさがリアルにわかるからこそ、
元気づけようとしてくれている、そんな想いを感じました。少しの間を置いて、仲間のエンディも加わって、お味噌汁を飲んで、つかの間の休憩を入れました。

あと10km、がんばろう。そしたら「津軽中里駅」だ。そこまでいったら、30分寝よう。

マッキー離脱。5人の仲間が3人に

改めて走り始めます。山道は終わりを告げ民家がポツポツ増えはじめ、場所が町になっていました。

そして朝7:00、チェックポイントである「津軽中里駅(204km)」に到着。
そこでは駅にブルーシートがひかれていました、そのままそこに横たわります。チェックポイントに、布団なんて当然ないし、畳もありません。横になればば、それで十分です。

津軽中里駅。ヒロポン。そして奥にあるブルーシートが睡眠スポットです。

小休止の後、さていこうか、と仲間のエンディ、ヒロポンと共に、歩き始めた時に、エンディが言いました。

「マッキーから連絡があった。足首が痛くて、このペースだと次のチェックポイントに間に合いそうもない。ここでリタイヤになると思う」

とのこと。 最初5人で始まった仲間は、3人になっていました。

あと50km。最後の戦い

そして3人で次のチェックポイント、「金木町物産館(212km)」を目指します。時刻は朝8:00を回って、2日間の雨と湿度も忘れたかのような晴れ間も見えます。太陽が登ると元気になります。足取りも比較的軽く、あっという間に徳着。

一方、テーピングでぐるぐるまきの股擦れが汗と水分でぐしょぐしょになってきており、大変な痛みを醸し出し始めました。朝になって空いていた薬局で「キズパワーパット」を購入。これを患部にペタペタ貼って、対処をしました。

太宰治の生家「斜陽館」に隣接する、金木町物産館に到着し、皆で「さくらんぼソフト」を食べます。

後ろに見えるのが太宰治の生家「斜陽館」。
写真の前では皆元気


あと50km・・・!

最後の戦い、という言葉が脳裏に浮かびました。すでに完走経験があるエンディがいいます。

ここから先は、最後の国道になるけど、それぞれのペースで行こう。
 最後のチェックポイント、黒石駅で会いましょう
。」

そして、後半の最大の壁”30km延々と続く国道沿いの道”がここから始まるのでした。ここからはそれぞれの戦い。

朝9:30。制限時間あと12時間30分。

思い出す灼熱の国道

ここからは、自分との戦いです。ここからは最後の難関”延々と国道”が待っています。1日目2日目とはうってかわった晴天を前に国道を走り始めて蘇る記憶がありました。

2019年7月。今から4年前のこと。
私は「みちのく津軽ジャーニーラン」の177km(短い方)を走っていました。その2日目に通ったのがこの国道。その時は31時間のレース、今よりも短かったはず。それでも眠すぎて、ガードレールや田んぼの畦道を見つけては気を失うように寝た記憶がありました。4年前自分が眠った田んぼのあぜ道を見て、記憶が蘇りました。

(そうだ、、、一番苦しかったのが3日目の日中だった)

212km~242km間の約30km。日光を遮るものがない国道が延々と続きます。久々の太陽が顔を出し、朝10:00前だと言うのに、恐ろしく暑い。雲が太陽を隠すことを願って上空を見上げます。

自販機で水を買います。水をかぶるためです。
そうして体を少しでも冷やして、熱を逃がすことで体力を保ちます。
残体力は、ほとんどありません。少しでも肉体への負荷を減らそうと試みます。コンビニで氷を買って、首筋を氷で冷やしながら走ります。

最後の国道は、コンビニによりながら。補給はしやすくてGOODです
’(幸いにも、強烈な太陽は、昼前には顔を隠し、曇り空となってくれました)

いつでも探しているよ、どっかに寝れる場所を

このときには自分の走るペースは、著しく遅くなっていました。2日目の夜は、1kmあたり7分00くらいでも普通に走れていました。しかし、3日目になると頑張って足を動かしても1kmあたり8:30が限界になっていました。

そして、時折、大波のようにやってくる強烈な眠気に煽られると、強風を受けた紙飛行機のようにふらふらと前に走れなくなります。1kmあたり12分、13分と減速、あるいは完全に止まってしまうのでした。

体はわずか2~3分の睡眠を求めて、眠れそうな場所を無意識に探しています。信号機の隣に塀を見つけてはその裏で眠れそうだ。スーパーの駐車場を見つけては壁にもたれかかって眠れそうだ。道路の路側帯のようなところに少しスペースがあれば眠れそうだ。

頭の中で、山崎まさよしの『One more time, One more chance』のメロディが流れてきます。

”♪いつでも、さがしているよどっかに君の姿をー”

「君」が「寝れる場所」に差し替わって寝たい寝たいとにかくすぐに寝たいマンになリ果てていました。


現在220km(残り43km)
スタートから41時間(残り10時間)
睡眠時間 合計2時間45分

(つづく)

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