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Boom! unite - Maia Hirasawa 制作に参加してリリース、東日本大震災からこれまで|2024.03.02

笛と太鼓で一緒に制作、演奏させてもらった2023年に日本で先行リリースされたMaia Hirasawaさんの新曲「Boom! unite」が3月2日にワールドリリースされました。

スウェーデン、日本の様々なアーティストが参加しているこの素晴らしい曲への参加に至るまでの自分の記憶と思いをまとめて書いてみました。


Boom!とマイアとの出会い

この曲は2011年にリリースされ、九州新幹線の開通CMにも起用された「Boom!」のリメイク版。2011年3月11日の東日本大震災もあり、そのCMも自粛なのかすぐに放送されなくなってしまった幻のCM。

Maiaさんとの出会いは、いつだったか。3.11震災より前に、仙台で一緒にCoupieという不定期に活動しているユニットのメンバー、cobi.さんに紹介してもらって知り合いました。スウェーデンでシンガーをしていて、今は仙台で休息している人という感じで紹介される。

きっと色々と理由があるのかと思い、どうして仙台にいるのかは聞かずに一人の人間として関わってマイアの真っ直ぐで、音楽に純粋な人となりを知って仲良くなりました。

そんな中で、日本での音楽活動を開始したようで、「It dosen't stop」などのリリースや、フジロック・フェスティバルへ出演したりと活動も大きく増えて忙しくなり中々一緒に遊ぶ機会も減りました。
が、2011年の春に仙台、石巻に来るのでみんなで一緒にバーベキューしようと約束をしていました。

東日本大震災と支援

そんな中、あの日。2011年3月11日、東北地方沿岸は大きく揺れて、波を被り、そして壊れました。

2011年4月 石巻市雄勝町 雄勝小学校跡付近

何日かして、マイアから連絡が入り無事を伝えると、必ず何か助けたいという気持ちを伝えられました。あの後スウェーデンに戻り、また日本を行き来しながら、音楽を続けて、そしてその合間に連絡をくれて励ましてくれて。

その間に僕も石巻市雄勝町の創作和太鼓の「伊達の黒船太鼓」を支援し、そのまま入会し中の人として、地域の芸能の復興活動を始めました。

2011年4月 流されて打ち上がった太鼓を見つけて運ぶ黒船太鼓元会長、神山さん
2012年3月11日 旧雄勝公民館の屋根に打ち上がったバスを下ろす

衣装や楽器、練習場所も全て大津波で流されたこと。
全国の様々な方々から支援を受けて少しずつ楽器や衣装を揃えて活動再開できたこと。
これから地域の芸能として、複雑な復興状況の地域の一助になる用に活動を組み立てていくこと。
自分も一緒に太鼓、笛を始めてみんなと頑張っていること。

そういう内容も、マイアとのメールのやり取りでこういう復興活動をしていることを伝えていてました。
そして太鼓の活動、楽器の修繕に使ってほしいと復興の為の支援金をいただきました。

2012年9月 マイアに支援金を戴く
マイアのメッセージ

ビックリしましたが、こんなに気に留めてもらっているということが本当に嬉しくて、嬉しくて、力が湧いてきました。

メッセージと支援金を伊達の黒船太鼓の面々に渡してマイアへ送った写真

その時に何気に言ったことが、

「いつか、この太鼓のグループと一緒に演奏したい。太鼓、ビートだから、Boom!とか!」

その言葉に、

「いいね!それができたら本当に最高だと思う!本当に!」

と、マイア。

Boom!は九州新幹線開通のCMになっていたことや曲としてリリースされていたものを買って聞いていたので、本当に元気になる曲、ビートを打ち続ける曲というイメージもあって、直感でもしも、もし本当に黒船太鼓として一緒に演奏するならこの曲以外はないなと思って言ったことだったと思います。

太鼓の修理、地域芸能の復興活動

それからは伊達の黒船太鼓保存会の役員として運営と打ち手、また獅子舞の団体雄勝町胴ばやし獅子舞味噌作愛好連にも入り同じく運営、囃子手として活動。

流されて打ち上がった太鼓を自分たちの手で修理。(と、言ってもノウハウがわからないので、太鼓職人の矢澤啓史さんに指導をしてもらいながら)

震災で流されて、打ち上がった太鼓
牛の皮の毛を取り除いて鞣す作業
油圧ジャッキ4つ使って鞣した革を張る作業
2013年1月11日 大崎タイムス記事

もしマイアと一緒に演奏する時は必ずこの太鼓を使おうと心に決めて。

他に、震災によって地域を離れざるを得なかった人たちと地域の架け橋になるべく、また雄勝の芸能文化の根幹に触れられるよう雄勝法印神楽保存会、黒船太鼓、愛好連の三団体が共同し「おがつの芸祭鼓舞」という郷土芸能祭を開催したりと、活動していました。

Boom! unite始動

世界中がコロナ禍に入り2年経った2022年。
マイアから、Boom!を新たにレコーディング、そしてどういう風に参加できるか色々と詰めていきたいとの旨のメールが届く。

支援金を頂いて、一緒に演奏しようと約束をしてから10年。
このコロナ禍に、しかも新しいバージョンでのBoom!を一緒に録音できるということに本当に驚きであると同時にずっと約束を大切にしてくれて見守ってくれていたマイアの気持ちに心から感謝の気持ちでいっぱいになりました。

普段どういう太鼓を演奏しているのか、YouTubeを見てくれてそして一度石巻まで太鼓の演奏を見に来てくれました。

2022年10月23日 サン・ファン祭りの演奏を見に来てくれたマイア

そこから、マイアとプロダクションのJohan Eckeborn氏が編曲し数カ月後に届いたデモ。以前の元気いっぱい!という感じから少し落ち着いた、でもよりパワフルな熱を感じるエディットを聞いてそれだけでも胸が熱くなりました。

その後は何度もメールなどでアイデアを伝え合い、太鼓や笛のアレンジの仮録り。

神山さんと太鼓と笛のプリプロ初日
神山さん太鼓レコーディング
太鼓は、震災で壊れて自分たちで修理したあの太鼓を使って
四倉太鼓レコーディング準備
四倉笛レコーディング
色々試して結果的に立平の環が一番音が馴染む
黒船太鼓メンバー コーラスレコーディング
僕はクリックを聞きながら指揮

本当はマイアが来日中に一緒に制作に入って録音するつもりでいたのですが、スケジュール関係など様々あり叶わず、オンラインで何度も打合せ、アイデアを録音して送ってを繰り返し。

そして、完成に向かっていきました。

石巻でMV撮影、そして仙台ライブ

曲も完成し、来日ツアー中にMVの撮影をするスケジュールへ。
石巻で撮影をしたいと言ってもらい、場所の選定やロケハンなどをして詰めていく。

マイアのツアースケジュールもかなり忙しいので、MVは一日で全部撮り終えるというとてもハードなスケジュール。野外での撮影だったので、本当に天気が良くなることを祈って、なんとか雨も降らずに無事に撮影。

石巻の雄勝で関わってくれている友達や、仙台のcobi.さん達や、ライブで一緒に演奏する伊東洋平さん達、スウェーデンのプロデューサーのJohan、みんなが集まる。

石巻の長浜海岸 ちょっと天気が危なかった
照明や焚き火の準備
太陽もしっかり出て夕日を照らしてくれる
焚き火も準備完了。流木や、折れてしまった撥など色々と集めてきた

そして、ライブ。10年越しの約束が果たされる時。

ライブ サウンドチェック後のステージ 下手の太鼓は修理をしたあの太鼓
会場前の看板
みんなで演奏

Boom! unite
本当に、本当に一緒に音を出せて良かった。

あの太鼓をこの曲に入れることが出来て、これで復興期から抜けたのかなと、個人的に思えた大きな括りでした。

マイア、本当にありがとう!
これからもよろしく!

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