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Pete Yorn / Sings The Classics (2021) 感想

歌ってみた

 Pete YornのカバーアルバムのCDがようやっと我が家に届きました。BandcampでデジタルとCDで販売中ですが、去年のレコードストアデイに限定リリースされていたものが一般販売という流れのようです。

 レコードストアデイ、滅茶苦茶いい企画で大好きなんですが、CD派というかレコードを聴く環境がない自分には大きな劣等感を抱くイベントでもあります。気になる限定アイテムが目白押しなのに買っても聴けない上に、レコードが聴けない時点でガチ勢からマウント取られそうで。
 レコードって単価高いし諸々の管理が大変そうだし、何より手を出したが最後今まで集めてきたCD達を結局全部レコードで買い直したくなるのが目に見えてるので、老後の楽しみにでもしようと思います。

  閑話休題。Pete YornさんはオルタナカントリーとガレージロックとBruce Springsteenという似てるようで似てない要素を絶妙な割合でブレンドした2001年の1stにして超名盤"Musicforthemorningafter"をピークに(スカーレット・ヨハンソンとのコラボという謎のセレブ感を見せつつ)曲も存在感も地味になっていき今に至ります。
 本作は基本プロデューサーと2人で昔から好きな曲を歌ってみた/気楽に演ってみた、気の置けない作品集といった趣です。数曲でコーラスにLiz Phair、キーボードにThe WallflowersのRami Jaffee(Foo Fightersの、とは意地でも言いたくないこの想い)という豪華ベテランも参加しています。

親切設計

 カバーアルバムというと選曲がまず楽しみですが、本作はなんと曲目とオリジナルのアーティストがジャケットに書いてあるというスーパー親切設計です。
 なので詳細は割愛しますが、Pixies、Bob Dylan、The Beach Boys、The Velvet Undergroundといったいかにもこの人が好きそうなロック・クラシックからDiana Ross、かの"Moon River"(個人的にはシナトラのイメージです)まで、とにかくその名の通りもはや古典、王道の名曲のオンパレードです。近年こんなに清々しいまでにど真ん中を行くカバーアルバムってあまりないのではないでしょうか。

 面白かったのはThe Stone Rosesの、「なんで投げた!俺は好きなの!」(©️ショーン・オブ・ザ・デッド)でお馴染み"Ten Storey Love Song"が、本国アメリカのメディアから「アルバムの多様性を象徴する」と評されているところでしょうか。Peteさん自身は

この曲が入ってるのを見て多くの人が「Ten Storey Love Songマジか!!」ってメッセージをくれたよ。知る人ぞ知る曲さ。色んな人が楽しめるようにしたかったんだよね

とコメントしており、UK人気根強い日本との認識の差を感じました。一応コーチェラのヘッドライナーじゃなかったでしたっけ…。比較的ストレートなカバーですが、シンプルすぎる演奏で逆説的にThe Stone Rosesの奇跡のバランスを実感できます。John Squire弾きすぎ説を一蹴する名カバーで、一聴の価値ありです。

 あとは似合いすぎのPixies"Here Comes Your Man"、ホーンで派手かつアップテンポにアレンジしたBob Dylan"Lay Lady Lay"、ストレートなフォークロックへの変装が新鮮なDiana Ross"Theme From Mahogany(Do You Know Where You're Going To)"あたりがお気に入りです。

点数

6.9

 まあ正直、本作自体がかなりリラックスした作りであることと、王道すぎて最早オリジナルが強すぎるので、Pete Yornが名曲を歌っているという事実をファンがニヤニヤしながら楽しむという類の作品の域は出ないのは事実です。JUJUと同じジャンルですね。
 1stにはハマったけどその後はなんか地味、と彼から離れていた方は是非。直近の2019年作"Caretakers"も地味と爽やかが奇跡的なバランスで同居した佳作です。昨年リリースされた新曲も同じ路線でしたね。

(参考記事とBandcampのアルバムのページ。どうせ買うならBandcamp Friday=仲介手数料無しの日を狙うとアーティスト思いを気取れるのでおすすめです。)

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