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Pillow Queens / In Waiting (2020) 感想

由緒正しい新人

 アイルランドはダブリン出身のPillow Queensのデビュー作を聴いて思いつく言葉はシューゲイザー、ローファイ、オルタナ、Snail Mail…。インディーロックとしてあまりにも由緒正しい言葉達ではありませんか。
 そんな由緒正しい音楽性に加え、"Gay Girls"、"Handsome Wife"等、議員センセイが見たら卒倒しそうなタイトルが、さも当然のように今作には並んでいます(内容自体は直接的なものではなく、詩的なイメージに留めているのも洒落ています)。
 クィアな4人組という側面から注目されることもあるこのバンド。伝えたいメッセージをポップに乗せて運ぶ様はまさにロックンロール。I Predict A Riot!

ギターがいい

 言葉の羅列だけでは一体何番煎じだと言いたくなりますが、このバンドを特徴づけているのはSarah Corcoran(ヘッダー画像左)、Pamela Connolly(左2)という曲によって変わる2人のボーカルによる気風のいい歌いっぷりと、シューゲイザーからの影響が濃いと思しきメロディアスなギター・ワークです。
 冒頭の"Holy Show"終盤にシューゲイジングなギターが入ってくる時の気持ちよさたるや。いまだに伏目がちな思春期おじさんに対する掴みはバッチリです。意図的かは分かりませんが、過去の関係との惜別を歌った曲で、終始「僕の心が読めるかい?」なThe Killersを引用しているのも気が利いていて新人離れ。一番好きな曲です。

 アルバムのハイライトは3."Handsome Wife"、4."HowDoILookNow"というポップな曲の連打でしょうか。前者は「私は貴方の求めていたような奥さんじゃなかったかもしれない/キスしたことないけど妊娠してるの」という今作のパンチラインを有し、後者はこれを嫌いなロックファンはいないだろうという大ポップロック。最高です。

 ここでもボーカルの裏で奏でられ続けるギターが耳をひきます。今、UK(アイルランドですが便宜的に)の若手バンドでここまでポストパンク的な鋭さではなく、空間的でメロディアスなギターで勝負できるバンドって他にいないんじゃないでしょうか。

 後半はミドル・テンポの曲が中心で、白眉は7."Gay Girls"。ああポップ系シューゲイザーね、と油断しているところに訪れる最後のユニゾンコーラスはなかなか新鮮です。
 しかしこの後半は若干ダレるのも事実で、今作に不満があるとすればそこでしょうか。この辺てまもっと個性やバリエーションを出してきたら、次作は最強のインディーポップ作になる気がします。 

点数


7.2

 コロナの影響か、アルバムリリース時、つまり最近のライブ動画がYoutubeに見当たらないのが残念です。約半年前の米ラジオ局でのライブは演奏の荒さを新人らしい勢い/ノリで押し切る感じがとてもよきです。1stリリースのタイミング的にも、順調にいっていれば今年のフジやスーパーソニックで観れていたのかな、と妄想。来年に期待しています。

(参考記事)

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