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アルバム・オブ・ザ・2020上半期

早いもので、2020年も半分が過ぎました。コロナ禍により数多の新作リリースやフェス、ライブが延期となり例年になく寂しい音楽業界でしたが、そんな中でリリースされ、自粛生活を豊かにしてくれた作品達には感謝しかありません。好きなアーティストのアルバムは出たらすぐにnoteに感想を書いてしまうのでますが、書き切れていないものも多いです。因みにランキングはオリジナルアルバムのみで、ライブ盤やリイシューは入れていません。

(次点) Muzz / Muzz

ダンディーかつセクシーな男の哀愁。こんなPaul Banksを待っていました。歌詞は相変わらずモテ男の悩みみたいな内容に感じられ、テーマであるというメンタルヘルスとの繋がりはまだ把握しきれていません。自身の英語力のなさを痛感します。

10. Brian Fallon / Local Honey

メジャーでの成功の経験に裏打ちされた、クリアなプロダクションによる洗練されたアメリカーナ。40歳を機にルーツに立ち返ったということですが、次はまた爽快なロックンロールもかましてほしいです。 

9. Destroyer / Have We Met

大御所歌手のディナーショーみたいなジャケットに面喰らいますが(しかし諸々含めてベストジャケットです)、中身はもはや安定のチルでサイケなAORです。シンセをメインに据えたもののいまいち焦点の合っていないように感じられた前作からきっちり焦点を合わせた、シンセポップ感すら漂う作品ですが、最後の曲が突然電子音のノイズと共に終わっていく性格の悪さも最高です。

8. Caribou / Suddenly

優しく繊細なハウスミュージック。水滴が滴り落ちて水面に波紋が広がる様子を捉えたジャケットのとおり、反復しながら繊細に展開していく曲達を聴いていると内省に浸り頭を抱えたまま、気づけば腰が動いています。思えばその感覚こそがCaribouの作品を聴く最大の理由かもしれません。

7. Mura Masa / R.Y.C

エレクトロニカの気鋭のプロデューサーによるパンクへのアプローチ…まま聴くような例えではありますが、その最良の形です。デビュー作であった前作ではDamon AlbernやJamie Lidellと言ったベテランも客演していましたが、今作での客演はCralioやGeorgeaなどMura Masaと同世代の若手のみとなっているのもパンク精神を感じていいです。しかし、「俺たちは希望がない世代」と言う詞の世界観に入れ込むには歳をとり過ぎたことを痛感して切なくもなりました。

6. Phoebe Bridgers / Punisher

いまや一つのジャンルとして定着したオルタナカントリーへの更なるオルタナティブとして、豊かなイマジネーションとアレンジを聴かせてカントリーを何十歩も先に進める痛快な作品です。今でも曲は大好きなので複雑ですが、かつて彼女に才能がない的なモラハラ発言を繰り返していたというRyan Adamsは行為そのものは言うまでもなく、見る目もない大馬鹿野郎ですね。

5. Tim Burgess / I Love The New Sky

稀代のミュージックラバーによるひねくれアートポップ絵巻は聴いていると視界が開け、タイトルの通り聴き終わった後に見上げる新しい空を好きになれるような、素敵な作品です。合言葉はそう、未来はフレンドリー。

4. The Explorers Club / The Explores Club

世代や時代など一切関係ない、ただただ極上の、タイムレスなポップミュージックです。以上。

3. Bob Dylan / Rough And Rowdy Ways

ノーベル文学賞受賞後初となるオリジナルアルバムは、正直まだまだ咀嚼しきれていません。しかしそれでもオールディーズやブルースを基調とした今作の楽曲群が「Tempest」「Together Through Life」といった近作に比べ研ぎ澄まされていることは分かりますし、初期からは想像もつかないほどしわがれた近年の声が、年を経るごとに表現力を増していくことに唸るばかりです。

2. Mystery Jets / A Billion Heartbeats

リリースは延期に次ぐ延期でしたが、感染症のパンデミックによる医療崩壊や人権問題で混迷を極める現在を予見していたかのような内容で(「こんな風になるなんて思ってもみなかった/でも敵とは、君が愛と共に戦うものだ」、「何故自分の本当の色を表現するために/悲劇を伴わなければいけないのか?」)、結果的には現在の世情に奇妙なまでにシンクロした作品となりました。そんな数奇な運命を含めて今年を象徴する一枚と言えます。

1. Waxahatchee / Saint Cloud

今作を聴いていると、詰まるところ伸びやかな歌と優しい演奏に彩られた「いい曲」、それさえあれば何もいらないのだという気がしてきます。Mystery Jetsと異なり2020年を象徴する、という類の作品ではありませんが、いつの時代にもこの作品を聴き癒され、共感し、涙する人は後を絶たないことでしょう。

こうしてみると、世相を反映しているにせよパーソナルであるにせよ、自分は結局のところメロディーありきというか、「いい曲」が好きなんだなと改めて思います。下半期楽しみにしているのはPaul Weller、Jarv is(元PulpのJarvis Cockerの新バンド、名前のセンスが既に最高です)、The Killers等です。ライブやフェスなどの、生で音楽を聴くあの空間が早く戻ってくることを祈っています。

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