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発達障害とお金の問題

臨床現場で出合うADHDやLD(学習障害)を含む発達障害傾向・ASD傾向の高い方の中には、お金の問題を抱えている方が多くいらっしゃいます。

基本となる対処法は、クレジットカードの使用制限と収支の見える化です。しかし、それだけでは対処しきれない場合が多いのが実情です。

お金を使うことが不快な感情への対処法として身についている場合はどう対処したらいいのでしょうか。根本的な対処法はあるのでしょうか。私が臨床の中でクライエントと共有している知識や取り組んでいる対処法について書きました。

環境要因

・クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレス決済を利用することで、お金を使っているという実感が得られず使い過ぎてしまう(ASD全般)

・特性による失敗を個人の性格や努力の問題として叱られる経験を重ねたことで、自己肯定感が低く抑えられている(ASD全般)

障害特性

・先を見通す能力や、段取りをして実行することが苦手(ASD全般)

・数字を量として実感しづらい(計算LD)

・実感を伴わないものは認識しづらい(ASD全般)

・先のメリットのために今の欲求を抑制することの困難がある(ADHD)

・お金でモノやサービスを買うことによる快感情を感じやすい(ADHD)

・投資などリスクのある商品が持つスリルに快感情を感じやすい(ADHD)

・搾取しよう、利用してやろうという、甘い誘いの裏にある心理を読みづらい(ASD全般)

・友人関係を築いたり、対人関係を維持するためのスキルが不足しており、孤独感や寂しさを感じやすい(ASD全般)

・不快な感情が十分に分化しておらず、怒りや抑うつ以外の感情(悲しみ等)を自覚しづらい。そのため、衝動的が行動化しやすい(ASD全般)

基本的な対処法

・HALT(Hungry 空腹、Angry 怒り、Lonely 孤独感・寂しさ、Tired 疲れ)など、自分がついお金を使ってしまう引き金になっている心理状態を特定する。そして、引き金に気づいた時に、すぐにその感覚や感情に対処するための「簡単に」取り組める対処法を増やし、実行する。

・収入と出費を、数字だけではなく、量として実感できるよう視覚化する

・お金は、月ごとあるいは週ごとの予算を決め、100円ショップで売っているファスナー式の透明小袋に入れて管理する。これにより、視覚化され使っている実感を得られ管理しやすくなることもある。

・固定費以外は現金を使う

根本的な対処法

私がクライエントと取り組むのは、次のものです。単純にみえるかもしれませんが、一緒に取り組むことで、とてもパワフルな変化をもたらします。

・お金を使わないとどんな感じがするか時間をとって感じてみる。そして、その時感じる感情が持っている「声」に耳を澄ませる。

例)あるマンガを買えないとしたら「不安だ、ソワソワする」と感じる場合、少し時間をとってその気持ちを感じてみましょう。何か思い浮かぶイメージはあるでしょうか。もしかしたら、友達との話題に困ったり、仲間外れになるイメージが浮かぶかもしれません。でも、その友達とは本当にマンガの事しか話せないのでしょうか。仲間外れになった辛い経験があるのかもしれませんね。では、その時に「本当は」どうしてほしかったのでしょうか…

基本的な対処法は、本を読めばひとりでも取り組めるものが多いです。しかし、根本的な対処法として書いたものは強い痛みを伴うため、ひとりでは難しいかもしれません。

臨床心理士などのカウンセラーの多くは、感情の扱いについて専門的な訓練を受けています。性別や年代、雰囲気や通いやすさなどを考慮して、ご自身と相性の合うカウンセラーにサポートを求めると取り組みやすいと思います。

近くの臨床心理士を探すには、臨床心理士会ホームページの「臨床心理士データベース」などがいいと思います。また、臨床心理士指定大学院に併設されているカウンセリングルームですと、臨床心理士の教授等の指導を受けながら訓練生(大学院生)が担当するので、比較的安く受けることができます。

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