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トウシューズとサステナビリティ

1.トウシューズ(ポワント)とは

バレエを踊る人、観る人なら誰もが知っている、トウシューズ。ポワント、ポアントとも言います。英語ではpointe shoesと呼ぶのが一般的なようです。
バレエで使う靴の一種で、先端が硬く爪先で立つことができます。
ここでは詳しくはWikipediaにお任せします。

2.トウシューズの消費

普通の靴の寿命は、サイズアウトや汚れた、壊れたといったことで判断されると思います。
トウシューズの場合は、爪先部分の硬さが湿気や使用によって失われ、ダンサーの足そして体重を支えることができなくなったとき、「つぶれた」と呼び、寿命と判断します。

消費ペースはダンサーや公演回数などにもよりますが、1公演で1足を履き潰してしまう方もいるそうです。
調べたリンクを少しまとめます。

How Many Pairs of Pointe Shoes Do the New York City Ballet and American Ballet Theatre Go Through Each Year? (FEB 27, 2020)

アメリカのNew York City Balletでは、年間8500足のトウシューズを消費する。
同じくAmerican Ballet Theatreでは、3600足を消費。
ポワント基金/NBS日本舞台芸術振興会

東京バレエ団では1ヶ月のリハーサルで一人あたり4〜6足のトウシューズを消費。

ポワントはつぶれた状態になると、基本的にリユースすることができません。
また、ポワントはダンサーの身体の一部のような繊細なものであると同時に、製造工程でシューズの個体差も生じえます。その結果、足との相性が悪くつぶれていないのに処分されてしまうシューズも一定数あります。
足に合わずシューズを処分せざるを得ないケースは、成長期の子どもや、プロよりもフィッティングに悩みやすい初心者やアマチュアに多いかもしれません。

履けなくなったトウシューズは捨てられることがほとんどです。つまり燃えるゴミです。世界中のバレエ団、バレエ学校、スタジオで消費されるシューズのほとんどがただのゴミとして処理されると考えたら、恐ろしい量です。
これをただのゴミにするのではなく、何かしら活用できないだろうかと思うんです。

ちなみに非常な繊細さというシューズの特徴から、サステナブルな素材のポワントの開発はすぐに実現するものではないと考えられます。そのため、今使われているシューズの資源としての活用(リサイクル、アップサイクル)を追求することが必要だと思います。

3.履けないトウシューズはどうする?

履けなくなったポワントがどこへ行っているのか、私の知っている範囲でいくつかあげてみます。
思いついたものなので、この他にもあると思います。

つぶれていないもの
①新品に近い状態のものは、寄贈ができます。Pointe shoe meetsでは、未使用&美品のトウシューズを回収し、トウシューズを探している人のフィッティングに役立てているそうです。

②販売するケースもあります。ほとんど履いていない状態であれば、フリマサイトのようなところで販売し、売れることもあるようです。
ちなみに基本的にトウシューズは洗濯できません。干して汗や湿気をきちんと乾かすのが一般的なメンテナンス・保管の方法です。(プラスチックのソールが使われているGaynor Mindenのトウシューズは洗濯可能なようです。)

③譲る。もし身近でそのシューズがたまたま合う人がいれば、譲って使ってもらうこともできるでしょう。(足のサイズ、幅、硬さなどの複数の条件が全て合うことは稀だと思います。)

つぶれたもの
①トレーニングのためにソフトシューズの代わりに履く場合があります。つぶれたと言えど、普通のソフトシューズ(バレエシューズ)よりは硬いので、足裏のトレーニングに使うダンサーもいます。ただし、誰もができる使い方ではありません。

② 売る。プロのダンサーであれば、使い終えたポワントにサインをしてファンなどに販売することがあります。また、ハンドメイドや工作の材料としてのニーズもあるようで、ネット上で売られているものもあります。

補足(リユースできるパーツ)
上にも書いた通り、つぶれてしまったポワント本体はシューズとしてのリユースは不可です。ですが、ポワントに縫い付けるリボンやゴムは、取り外してリユースが可能です。解くのは少し面倒ですが、1足買うごとにリボンとゴムも新たに購入するよりもエコで経済的と言えると思います。
(ただしあまりに劣化したり傷んでしまったものは、踊る際に危険が伴うので買い替えましょう。)

4.トウシューズのリサイクル、アップサイクル

ざっと調べてみても、正直あまり進んでいるとは言えなさそうです。
トウシューズの主要なパーツは紙、布、革であるため、理論上リサイクルできそうに見えます。ただしパーツや材料の種類が多い、特殊な接着剤が用いられているなど、リサイクルの手間とコストを増やす要因も多いのではないかと思います。

アメリカではPetit Pasと名付けて、ポワントの廃棄に注目し革でできたソールをブレスレットにするプロジェクトが行われているようです。
ソールに関してはこの他にも、技術が確立されれば再生革のような利用法ができそうな気もします。

また、ポワントを製造している工場では必ず布や革の端切れが出ているはずです。これらは回収され、資源として活用されているのかというのも気になります。使用済みのものより、パーツごとの素材の方が再生しやすいはずですから。

色々調べたり書いてみましたが、個人の調べや努力には限界があります。まずは一足一足を大事に長く履き、使えるもの(口ゴム、リボンなど)は再利用することが、ポワントを履きながらサステナビリティを考える第一歩なのかなと思います。

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