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とりあえず、踊ってみればいいじゃない

私は子どもの頃に習い事として始めたバレエのレッスンを、今も趣味として続けています。続けている理由は、シンプルに言えばバレエが好きだから。バレエという芸術も、基礎レッスンも舞台で踊ることも全部好き。今では胸を張って「バレエ大好き」と言えますが、小学生の私はそうではありませんでした。

レッスンに行く前、毎回憂鬱な気持ちになっていた時代がありました。はっきりとは覚えていませんが、先生に注意されるのが嫌、思い描くように上手に踊れない自分を見るのが嫌、心の中で渦巻くそんな感じのネガティブな感情を自分の中でうまく処理できていなかったのだと思います。本当に毎回のように、レッスンに行きたくないと言ったり支度をなかなかしなかったりして親を困らせていました。親がお月謝を払ってくれていることも、レッスンはできる限り休まず行くべきだということも分かっていたので、結局いつも最後はちゃんと行くのですが。

ところが不思議なことに、そうして渋々レッスンに行くと必ず「楽しかった」と言って帰ってきていたんです。スタジオに行くまでは嫌で嫌で仕方がないのに、レッスンが終わって「やっぱり来なければよかった」なんて思った記憶は一度もありません。
この感覚は例えるとお風呂に似ているかも知れません。お風呂に入るのが面倒だなと感じることはあるけれど、出てきて「あーやっぱり入るんじゃなかった」と後悔する人ってそういませんよね。
これはきっと、負の感情が体験によって塗り替えられていく瞬間なのではないでしょうか。

今の私にとってバレエのレッスンは、バレエだけに集中し没頭できる最高に幸せな時間です。そして幼い私もそのことを感覚的に知っていたんだと思います。レッスンが始まる前にはあれこれ想像して勝手に気が重くなるけれど、いざ踊り始めるともうやるしかないんです。思い通りに踊れなくても、どうしたら上手になれるかを考えたり、先生に言われたことを一生懸命やろうとしてみたり、必死でやっているうちに「レッスンが嫌だ」なんて瑣末な思考はどこかへ飛んでいってしまう。
バレエと、自分の身体と向き合う体験が全てを超えて自分を満たしていく、その感覚が病みつきになって今に続いています。

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