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アルバイト面接 B子の場合

前回のお話にてアルバイト志望A子さんを不思議な力で不本意ながら辞退させてしまったTさん。

※こちらを先にご覧になることを推奨します


今回も面接でやらかしてしまうお話です。


ある日、Tさんの職場にアルバイト志望のB子さんが面接にやって来たそうです。
採用担当だったTさんは予定時刻になると、いつも通りに面接を開始しました。
B子さんは二十代のどこにでもいるような普通の女性でした。しかし面接が始まるとTさんにまた異変が起こったそうです。

Tさんが自分の頭で考えていること・話したいこと、それとは関係なくB子さんに思ってもいないことを、まるで誰かが彼の口を借りて喋っているかのように すらすらと言葉が溢れて止まらない。これは以前にもあった感覚。そう、A子さんの事情をピタリと言い当てたときと同じ。

「彼氏さんいるのかな?」

はい

「もしかして同棲してる?」

はい

仕事とは関係のないことを質問し始めるTさん。そして嫌な顔せず淡々と答えていくB子さん。
しかし次の質問からB子さんの様子ががらりと変わっていきます。

「もしかして彼氏さんと上手くいってない?」

…はい

「彼氏さんて元カノと縁切れてないでしょ」

はい…

彼女は表情を曇らせる。

「彼氏さんて同棲当初は優しかったよね。けど最近になって…貴女に暴力を振るうようになったよね?」

それを聞いた途端に大粒の涙を溢し、ただ深く頷くだけのB子さん。

「あのさ、彼氏さんて貴女と付き合いながら元カノ妊娠させたでしょ?それで彼氏が元カノに子供を堕ろすよう説得して二人はすごく揉めたんでしょ?貴女への暴力が始まった時期と被ってるでしょ?」

このときのB子さんはもうただただ泣きじゃくりながら頷くことしか出来ない。
可哀想に思いながらも言葉が止まらないTさんは彼女に更に畳み掛ける。

「元カノって線が細くて目が切れ長で黒髪を胸くらいまで伸ばしてる人でしょ?」

一瞬、驚きで目を丸くしたあとしゃくり上げるように泣いて頷くB子さん。

「今ね、貴女の左肩にね、それっぽい女の人がいるの。申し訳ないんだけどさ、貴女の左肩、少しで良いから見せてくれる?」





「結局、肩見せてもらえなかった」

自分の意志と関係なく質問を重ね、その理由も分からないまま肩を見たいと食い下がったものの

「それだけは絶対に出来ません!!」

とB子さんは泣きながら出て行ってしまったそうです。


「俺だって別に肩とか見たくないよ。ただ自分でも何故か分からないけど、肩さえ見せてくれたら全て分かる・解決出来るって確信だけがあった。けど肩に何があるのか、痣なのか傷なのか、何もないけど見たら納得するのか全く予想付かない。とにかく見せてくれたら彼女救われたかもしれないのに。俺がこういう状態になること滅多にないんだからチャンス逃しちゃったね」

Tさんはそう語ると、俺の残りの人生でこれくらい明確に視れるのはあと1人か、運が良くて2人かな。
とタバコを燻らせました。

ー了ー

※本作品は実話を元にして構成されています。
 本作品に登場する人物・地域等は一部フェイクを入れていますが詮索するような質問は受け応え出来ません。

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