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うちのヨーダがすみません。 #キナリ杯

映画スターウォーズにヨーダという伝説のジェダイマスターがいる。
スターウォーズの中では主役ではないのにもかかわらず、圧倒的な存在として有名だ。

スターウォーズを見たことがない人のために例をあげるのであれば、ワンピースで言うところのシルバーズレイリー、キングダムで言うところの王騎、セーラームーンで言うところのタキシード仮面。たぶん。

そんなスターウォーズに出てくるヨーダの顔が、僕の父親の顔とそっくりなのである。白く控えめな量の頭髪と、ギョロっとした目玉と、小柄な体型。親戚はもちろんのこと、ご近所さんにも知れ渡るほど似ている。

スターウォーズが最初に公開されたのが1977年。僕の父親が生まれたのが1956年。もしジョージルーカスがスターウォーズ制作前に父と出会っていたのなら…おそらくそういうことなのだろう。

本家のヨーダはフォースを使いこなしたくさんの人から尊敬される存在だが、我が家のヨーダはミリタリー好きのただの飲兵衛である。ただし、飲兵衛であるにもかかわらず、我が家のヨーダは外飲みを禁止されている。それは、20年近く前に起きたある事件がきっかけとなっていた。

2000年代一般家庭にもインターネットが普及し、我が家にもPCなる文明の利器を導入した。片田舎でも世界にアクセスすることができるようになったのだ。キーボードのエンターを勢いよく叩くことができるようになったのだ。

だが、購入後に致命的なことに気づいた。
そう、PCのセッティングめっちゃムズイ問題である。2000年問題を乗り越えた後に、このPCのセッティングめっちゃムズイ問題に直面したのだ。我が家の人材ではお手上げ状態であった。しかし、そこで活躍したのが母のご近所ネットワーク。IT関連企業で働くパパさんに協力を仰ぐことに成功した。グッジョブ母。

中学生だった僕が外で遊んで帰ってくる頃には、すでにPCが「いつでも使ってどうぞ」といわんばかりに我が家に鎮座していた。ありがとうご近所のパパさん。そのパパさんへのお礼として近くの寿司屋をご馳走することになった。家族全員で同伴するとtoo expensiveなため、我が家を代表してヨーダを寿司屋へ送り込んだ。

22時を回ったぐらいだっただろうか。
ご近所のパパさんに担がれて、我が家のヨーダ帰ってきた。


頭から流血しながら。
こんなのプロレスでしか見たことないよ…


我が家のヨーダは、寿司屋で酒に飲まれ、帰宅途中に電柱へヘッドバッドをかましてしまったらしい。なんて頭の固い父親だ。一家の主の醜態に、家族一同大爆笑。

それ以来、我が家のヨーダは外での飲酒を一切禁じられてしまったのである。2001年、ヨーダ外出飲酒禁止令が発布。ヨーダ外出飲酒禁止令が厳格運用され始めたが、仕事上どうしても飲まなければいけないときに限って目をつむることになっていた。

そもそも人見知りであまり交友関係が広くない我が家のヨーダは、基本的に家飲みだ。車通勤だし、まっすぐ家に帰ってくる。家での泥酔は日常茶飯事だったが、家の中であれば再びヨーダの頭から何かが噴火することはあるまい。


時は流れ、2019年春。妹の結婚式の当日を迎えた。
僕はうっかり集合時間を間違えてしまい、両家顔合わせが終わる直前にすべり込んだ。が、先方の顔どころか、身内の顔とも合わせることなくバタバタと本番となってしまった。すまぬ、妹よ。

静まり返るチャペル。
妹の旦那さんが入場し、いよいよ妹の入場の瞬間。一生に一度の晴れ舞台。

チャペルの大きな扉が開くと、そこにはウェディングドレスを着た妹とスケキヨが腕を組んでいた。

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「???」

動揺する来賓の方々。
いつの間に犬神家の挙式に紛れ込んでしまったのかと。


燕尾服を着たスケキヨは我が家のヨーダであった。
いつのまにジョージルーカスと横溝正史がコラボしたのであろうか。
本家はゴム製の被り物だが、こちらのまがい物は顔に包帯をぐるぐると巻かれている。

結婚式に何度も足を運んだことはあるが、顔が分からないスケキヨスタイルで花嫁の父親が入場してくるのは初めて見た。

触れていいのか、笑っていいのか、そんな微妙な空気感の中、チャペルでの挙式は終わった。絶対に笑ってはいけない結婚式2019。

挙式が終わるや否や、母への質問が止まらなかった。

ことの顛末はこうだ。
結婚式前日、年に数回とない仕事の飲みがあり我が家のヨーダは家を出た。もちろん仕事なのでやむを得ない。母は明日が娘の結婚式であることを念押ししヨーダを送り出した。

しかし、0時を回ってもヨーダは帰ってこない。
すると、家の近くを救急車が通る音がした。とっさに母は嫌な予感がしたらしい。

その数分後に、自宅の電話が鳴る。
我が家のヨーダは泥酔して道端に倒れているところを通行人が発見し、救急車で搬送されたとのこと。しかも、今度は電柱に頭ではなく、ブロック塀に顔面という破天荒っぷり。やんちゃにもほどがある。May the Force be with you…

病院での処置や引き渡しなどの対応をしているうちに夜が明けてしまったらしい。娘の結婚式前夜にこんな理由で徹夜をした夫婦を初めて聞いた。

話を聞き、家族一同大爆笑。こんなハプニングも笑い話になる我が家のたくましさよ。

我が家の中では笑い話になるが、とにもかくにも一家総出で妹の旦那さん家族一同に謝り倒した。
温かいご家族で、笑ってくれていた。ナイス嫁入り、妹よ。


ほんと、
うちのヨーダがすみません。

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