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起業が軌道に乗る必要絶対条件?動物学者・島泰三が提唱した「競合しない主食」


上手く行く事業と上手く行かない事業は何が違うんだろう


ちょっと前まで20年ほど、ホームページ制作と運営を主力業務にしていました。


そうすると、ま、小さな個人事業ですので、同じような規模の、起業されたばかりの方や個人事業の方、少し軌道に乗った年商5億円以下の中小企業経営者の方からご依頼いただくことになります。


で、皆さんとお付き合いしていく中で、


「上手く行く人と上手く行かない人は何が違うんだろう」


と、いつも思ってました。ベンチャーとして起ち上がって、年商を億以上に発展させられる人と、そうならない人の違いは何だろう、と。私自身がビジネス下手なので(T_T)参考にさせていだきたいし。


どうも「頭脳明晰」とか「ワーカホリック」とか、そーゆーことは関係ないみたいです。あてはまる人もいれば、あてはまらない人もいました。


また、皆さんが読書家なわけでもないし、皆さんが人間的魅力にあふれているわけでもない。皆さんが優れた直感を持っているわけでもないし、業務に精通しているわけでもないようです。


そればかりか、崇高な理念も必要ないし、正しい姿勢も必要ないみたいです。


以上は、すべて必要絶対条件ではない、と。


おそらく、起業における必要絶対条件は、充分な販売数と利益を得られる商品やサービスを知っており、同時に、その利益を得るための安価な仕入先(あるいは方法)を知っており、その組み合わせを売ることができる、ということだけじゃないか、と


ビジネスが起ち上がって拡大していく必要絶対条件


さらに、ある時思ったんですが、「利益を得られる商品やサービス」というのは、もっと具体的には「競合しない主食」であって、それこそがビジネスが起ち上がって拡大していく必要絶対条件なんじゃないか、と。


「競合しない主食」とは、マダガスカルの猿、特に稀少なアイアイの研究で有名な動物学者・島泰三が提唱した概念です。


日本の文化人類学者で、いわゆる京都学派の雄だった今西錦司の「棲み分け理論」て有名ですよね?島は、この有名な「棲み分け理論」を批判した上で、発展させています。


「棲み分け理論」は簡単に記すと、下記のようなものです。『生物社会の論理』今西錦司 著


「種はそれぞれに、ちがった生活の場を確保し、ちがった生活の場の上に成立している、あるいは、種はお互いに生活の場を棲みわけている。」

つまり、ある森の中で、色々な生物や植物が存在するのは、みんな棲み分けているからだ、ということですね。


が、研究というのは、必ず二段階のステップが必要です。「仮説」と「実証」です。


「棲み分け理論」という仮説を立てたら、その実証をして初めて研究成果になります。


しかし、島によれば、今西は「棲み分け理論」を実証していない、と。


今西は実証のためにカゲロウを取り上げているんですが、なんでカゲロウやねん?と。しかも、今西が「棲み分け理論」の実証で使った文章は、何言ってるかわらかん。と。


いや、私が「何言ってるかわからん」て言ってるんじゃなくて(笑)、東大出の動物学者が何言ってるかわからんて言ってるわけですよ。念のため記しますが。ただ、ま、わたしも同じ感想を持ちましたが。


生物は食べ分けるのだ


島は、今西の「棲み分け理論」を卓抜したアイデアだと評価しつつも、マダガスカルでの多種多様な猿の研究を通じて、生物は棲み分けるのではなくて、食べ分けるのだ、という「棲み分け理論」を発展させた研究にたどり着きます。それが下記の著作です。


『親指はなぜ太いのか』


「種形成の根本原理は、空間を分けるのではなくて、独自の主食を開発し、他の種と食物を別にする「食べわけ」である」


マダガスカルというのはアフリカ大陸の横にある世界で4番目に大きな島です。これが8000万年前に他の大陸から切り離されて、その後一切他の大陸とくっつきませんでした。


つまり、8000万年の間、他の大陸にいる生物とまったく関わりがなかったため、特別な生物/植物が生まれ、独自の進化を遂げた、地球上の他の場所では見ることのできない、非常に多様性のある様々な生物/植物が生息する場所なんだそうです。


で、猿も、猿というか原猿類だそうですが、100種類以上いるそうで、その中にアイアイも含まれます。


マダガスカルの原猿類を調べていくと、指と歯の形が種ごとにみんなそれぞれに違っていて、それは主食と関連して進化したものだ、という仮説に島は至ります。


そこから島は「なぜ人類は直立歩行したのか」という難題にチャレンジしていきます。つまり、我々人間の手と口の形は、何を主食にするためにこのような形になっているのか、ということですが、それは本稿の主題とは違うので置いといて、確かにマダガスカルの原猿類たちは特徴的な手と口を持っています。


アイアイの手の形


例えばアイアイというのは、下記のような手の形を持っています。


指


Rama - 投稿者自身による著作物, CC BY-SA 2.0 fr, リンクによる


つか、霊長類ってのは、ものすごーく様々な手の形をしています。詳しくは本書に図が載っていますが、なんでこんなに手の形が違うんだ?って思うわけです。私が見ても。私たち人間と同じグループの、とても似ている霊長類の中だけで。


それは、主食との関連であり、それぞれの主食を食べやすいように進化もしくは淘汰されたのであろう、と、島は提唱するわけです。


アイアイの主食は、これも島が発見したことですが、ラミーという木の種子です。小さなものです。分厚くて堅く、継ぎ目のない種子の中に詰まっているんですが、そこからクルミのような胚乳だけを器用に取り出して食べるそうです。
「島泰三」の仕事場から写真を引用させていただいてます

https://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/102279.html


そのために、特徴的な手の形が必要であり、それゆえに、他の強力な生物と競合しない主食を手に入れて安定して繁栄することができた、と。


なるほどなぁー。


「競合しない主食」をビジネスで考えると


これをビジネスに応用して考えてみると、以下のようになります。


例えば、色々な外国旅行を扱う様々な旅行社があって、世界各地の目的地を扱っています。


普通に見るだけだとわかりづらいんですが、実はみな、それぞれ利益率の高い主力目的地を持っていて、そこに「競合しない主食」があります。


ハワイなんて日本からの旅行者が毎年150万人くらいいて、とっても数が多くて儲かるわけですが、そうすっと他の強力な生物も狙ってきます。JTBとか近畿日本ツーリストとかの強者が参入してきますから、負けいちゃいますよね。


したがって、モルディブとかメキシコとか、日本からの旅行者数が年間数万人規模の、強者と競合しないリゾートを開発して、そこで多くの利益を得て業績を伸ばし、ほかの目的地で戦うような力をつける、ということなんじゃないか、と。


以上はわかりやすい例ですが、わかりにくい例もあります。


地域で生き残っている商店なんかそうですね。


この大規模スーパーやコンビニやネット通販が全盛の時代に、商店がどんどんなくなっていって商店自体を探す方が難しい時代に、がんばって生き残っている商店があります。


その商店がなんで生き残っているかというと、例えば地域密着で半径5kmくらいの範囲に手厚いサービスを、薄利多売で提供してたりします。そうすると、お客さんのロイヤリティがすごく高くなりますので、何回もその商店で買い物してくれるようになります。


それが「競合しない主食」になります。


大手や資本のあるところはやらないことであり、したがって競争→淘汰を免れられるからです。


というわけで、最近よく「競合しない主食は何だろう?」「いまやっていることは競合しない主食になるだろうか?」と考えます。