"已己巳己"家族

「ん」

三歳の息子が右手を差し出してくる。

その表情は、義実家のアルバムで見た幼い日の夫に瓜二つだ。

どうやら、バッグを持ってくれるつもりらしい。

不器用だけどうれしい気遣いをしてくれるところも、夫にそっくりで思わず笑ってしまう。

島根県　出雲大社。

初めての二人での旅行先に、今回は息子を連れて戻ってこられた。

あの時の夫も、同じ様に「ん」と手を差し出して荷物を持ってくれたっけ。

幼い我が子に荷物持ちをさせるなんて、ちょっと気が引けたけど、息子の成長が嬉しくて好意に甘えることにする。

阻む建物もない抜ける様な青空は前回と同じ。でも、今回は前よりもっと清々しく感じた。

❇︎

左脇に、疲れて抱っこをせがむ息子を抱き上げ、左手に息子のリュックと私のカバンを持とうとする夫に

「ん」

と手を差し出す。

いつの間にか、似たもの家族になってるもんだね。

紅葉が見事で、肌寒くなった出雲に

あたたかい家族の時間が流れていく。