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穏健な?環境主義革命を求ム

パリ五輪の下にセーヌ川が流れ、われらの下水も流れる。

なぜこんな事態になったのか?答えを斎藤幸平著『人新世の「資本論」』に見つけました。

本書の第五章に、フランスが2020年に開催した市民議会の話があります。元はマクロン大統領の環境保護への呼びかけから始まったこの気候変動防止対策会議に集められた市民150人からの提案は、例えば飛行場の新設禁止、自動車広告禁止、気候変動富裕税導入などラディカルな提案がありました。ヨーロッパでは本気なのだなと思いました。

こうした環境保護意識が伏線となったのが、パリ五輪選手村での「エアコン無し」「ビーガン」だったのでしょう。しかし汚濁したセーヌ川のトライアスロン大会では、その環境劣化をかえってアピールしてしまったのは皮肉です。あるいは世界的規模の大会は、ただ環境を悪化させるという反面教師のメッセージになったかもしれません。余談ですがその市民会議への出席者の選考は「くじ引き」だったそうです。柔道決勝戦でのルーレットにも伏線があったのです。

ベストセラーの本書は、資本主義がいかに地球環境を破壊してきたか、その歴史と思想の系譜を克明に追跡しています。去年今年の灼熱気候もそうだし、年一回以上起きる大規模自然災害も、ブレブレの台風コースも、成長しすぎた経済活動がもたらした気候変動のせいでしょう。もはや人類は脱成長を目指す以外の選択肢はないと思います。

そこで著者はカール•マルクスの資本論を読み直せと主張します。共産主義にこそ解があるというのですが、ロシアや中国の市場経済と侵略的思想を見れば、共産主義が人類のためになるか疑問なのは明白です。そこで地球をひとつの<コモン>として再考した、<晩年の>マルクスの思想に突っ込む、というのが本書の核心です。

筆者なりの答えはあるのですが、読後の感想は「ではどうすればいいの?」一行です。規模が大きすぎてどこから何をすればいいのか、わからないのです。口先で言えば、自動車産業を半減させればいい。しかしそれをどうやって実現するのかがわからない。

日本政府はやれインバウンドだ、やれ観光だ、と航空機使用や消費の喚起にやっきになって気候温暖化に拍車をかけています。日本経済新聞を開くと国際会議が国際基準に満たない、もっと国際会議を増やせとありました。これもまた環境悪化につながります。みんな経済成長が大好きなんです。

ドグマ的に言えば、求められるのはラディカルな共産党主義革命ではなく、穏健な?環境主義革命が某国に起きることです。元首が環境主体主義で独立宣言をして、経済成長を国是としないと決定し、議会が承認し、環境主義憲法が発布される。そういう事態になればですが…

あたしはトランスジェンダーとして何ができるのか?考えました。江戸時代のトランスジェンダーのことを<しつこくもう一度>書き直すことができて、その後も生きていたら、環境主義立国の物語を書いてみたいと思いました。

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