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法人COTEN CREWになって、Googleを超える夢のために「浪費」する。 | 石原恒和 × 深井龍之介・楊睿之(ヤンヤン)

法人COTEN CREWになってくださった企業の方々へのインタビュー。今回は、東京・六本木ヒルズにある株式会社ポケモンの石原恒和さん。日本を代表するコンテンツ「ポケモン」をプロデュースする会社の代表取締役を務める石原さんは、なぜ法人COTEN CREWになることを決めたのでしょうか。

石原恒和(いしはら・つねかず)さんプロフィール:株式会社ポケモン代表取締役社長。ゲームプロデューサー、ゲームクリエイター。『ヨッシーのたまご』『MOTHER2 ギーグの逆襲』『ポケットモンスター』シリーズなどのプロデュースを経て、現職。

ウチは、面白いことにお金を使う会社

深井 龍之介(以下深井):今回、法人COTEN CREWになってくださるにあたって、社内の反応はどうでしたか?

石原 恒和さん(以下石原):よかったですよ。むしろ、もっと「どうしてそんなことにお金を使うんだ」と突っ込んでほしかったくらいです(笑)。ウチは面白いことにお金を使う文化がある会社だから、まったく抵抗はありませんでした。

深井:すごいなあ。ありがたいです。そういう判断ができる企業は、多くはないですよね。

石原:僕はもともと歴史は苦手だったんですが、あるときCOTEN RADIOに出会って変わったんです。深井さんたちの「歴史の面白さを伝えたい!」という気持ちがストレートに出ていて、とにかく面白い。

深井:光栄です。ちなみに、石原さんが一番お好きなエピソードは?

石原:玄奘の回ですね。なぜ玄奘が旅立ったのか。その物語が非常に興味深く描かれていて…。なぜかヤンヤンさんと玄奘のイメージを重ねながら聞いていましたね(笑)

楊睿之(ヤンヤン、以下楊):(笑)。中国から来たからかな?

石原:それで僕は個人COTEN CREWになって、COTENが作ろうとしている世界史データベースのことも知って、非常に面白い試みだと思った。そこに法人COTEN CREWの取り組みがはじまったので参加した…という自然な流れです。

深井:法人COTEN CREWへの参加は、短期的なリターンを求めがちな普通の資本主義の枠内では難しい判断だと思うんです。それを通してくれた石原さんには本当に感謝していますし、会社としてのポケモンはすごい組織だな、とも感じています。

石原:僕は資本主義的な投資というよりも、アイデアで協力したいと思っているんです。だからなおさら、従来の資本主義の枠組みから外れた法人COTEN CREWという形で、深井さんたちと話し合えたらいいな、という思いがありましたね。

ゲームの歴史データベースを作ろうとした

石原:法人COTEN CREWになったことには、僕の個人的な思いもありますね。

深井:思い?

石原:実はね、僕も昔、ゲームの「世界史データベース」を作ろうとしたことがあるんです。本なのでデータベースとまではいかないのですが、1988年に作った『テレビゲーム―電視遊戯大全』(U・P・U)という本がそうです。

深井:ああ!僕が以前いただいた本ですね。その頃のゲーム界の膨大な情報を集めた、すごくデザインに凝った本でした。本のページが上・中・下に三分割されていて…。僕も先日、はじめての著書を出しましたけど(『歴史思考』ダイヤモンド社)、普通に文章が続く本でも大変だったのに、こんな複雑なレイアウトの本を作るなんて、ちょっと考えられないな。

石原:僕はそこで、当時のゲーム界の見取り図を作ろうとしたんです。過去にどんなゲームがあって、それを作ったのは誰で、そういったゲームがどのような影響を与えて今に至るのか。

深井:まさに、歴史ですね。

石原:すると、ゲームの現在が見えてくるんです。今、目の前にあるゲームはどういったところからはじまって、どういう風に進化して今に至るか。

深井:過去を知ることで、現代が見えてくると。

石原:そうです。たとえば、世界中のゲームには大別して3つの流れがあるんですね。『指輪物語』みたいな西洋風ファンタジー、『スターウォーズ』みたいなスペースオペラ、そしてテニスなどのスポーツのゲーム。どのゲームも、これらの流れの延長線上のどこかに位置しています。

深井:たしかに、僕が5歳のころにはじめてやったゲームは「スーパーファミコン」でプレイした「ファイナルファンタジーIV」でしたけれど、あれは西洋風ファンタジーでした。そういえば、ヤンヤンも子どものころ、ゲームはやったの?

:僕は深井くんと同世代ですけど、その頃は中国にいたから、日本のゲームがワンテンポ遅れて入ってくるんですね。だから、最初にやったゲーム機は「スーパーファミコン」じゃなくて「ファミコン」でした。

深井:あ、中国だとヤンヤンたちがファミコン世代なんだ。

:ファミコンが爆発的に流行った世代ですね。僕は大家族で住んでたんですけど、そこに誰が買ったのかわからないファミコンが一台あって、週末はそれでみんなで遊んでました。

深井:なるほど、ゲームにも歴史があるんだなあ。それを、1988年の時点でまとめたのが石原さんだったんですね。この本は、COTENが作りたい世界史データベースを実現していますね。僕らはまだ形にできていないけど…。

石原:たしかに、この本の切り口は歴史に近かったですね。ただ、これは、テレビゲームの歴史がまだ浅かった当時だからできたことでもあるんです。ゲーム界はその後指数関数的に大きくなりましたから、すべてを視野に収める鳥観図を作るのは、今はもう難しいんじゃないかな。ゲームに限らず、現代社会も同じだと思います。情報量が膨大になってしまって、鳥観図を描きにくくなった。

Googleより大きなミッションに挑んでいるCOTEN

石原:だからこそ、深井さんたちの世界史データベース構想を知った時にはピンと来ました。これは応援したい!と。鳥観図を描きにくい時代に、鳥観図を作ろうとする試みですから。

深井:ありがとうございます。

石原:僕はGoogleとも仕事をしましたが、COTENのやろうとしてることは、Googleにもとても近いんです。いや、ある意味では、Google以上です。

深井:というと?

石原:Googleのミッションって、世界中の情報を整理して、誰もが使える状態に置くことですよね。まず、そこがCOTENの世界史データベースに似ています。
しかし、両者には大きな違いもあります。Googleは横軸というか、世界の「今」を切り取っていますよね。GoogleMapとか。でも、COTENが狙っているのは歴史、つまり縦軸なんです。縦軸の情報は膨大ですから、それを利用できるようにするというCOTENのミッションは、Googleのそれよりも大きいと思うんです。

深井:本当に嬉しいです。データベースの意義って、わかってくれる方とそうでない方がいるんですが、石原さんは初期の段階から応援していただいていましたよね。それは、過去にゲームの歴史をまとめたご経験があったからかもしれませんね。

石原:そう。法人COTEN CREWになった理由には個人的な「歴史」への思い入れもありますし、COTENのミッションの壮大さを僕なりに理解したからでもある。ならば、その夢に乗らない手はありませんよ。

浪費する文化がある会社!?

深井:ところで、石原さんってずっとそろばん勘定ではなくて、個人の関心で動いてくれている印象があるんです。会社の業務に直接関係がない領域でも、今回の法人COTEN CREWへのご参加のように、積極的ですよね。

石原:そもそも、今はCSR(企業の社会的責任)など、企業も利益以外のことを追求しなければいけない時代です。それに、うちはちょっと特殊な会社で、普通の意味での利益追求型企業ではなく、ポケモンのためだけに存在している組織なんです。

深井:株式会社ポケモンは、面白いことに投資できる会社ですよね。普通の会社は、投資に対するリターンが明確に数字にならないとGOサインが下りないものですが…。

:喜捨です!喜捨(笑)

石原:たしかに、そもそも投資じゃないのかもしれないですね。何といえばいいのかな、浪費(笑)?だって、投資のスキームで考えたら、「法人COTEN CREWになったことで〇〇〇〇万円の利益が出ました!」なんてわかりやすいリターンがあるわけがない(笑)

深井:(笑)

石原:ただ、「浪費」だからといって、なんでもいいわけじゃないですよ。まったく面白くないゲームソフトに対しては1円も出したくないですよね。COTENの試みが面白そうだから法人COTEN CREWになったんです。僕にとっての法人COTEN CREWは、価値ある「浪費」であり、とっても面白いゲームでもあるんですよ。

深井:「価値ある浪費」…ありがとうございます。

石原:Googleは主に横軸(共時的)の情報を集めていますけれど、COTENが作ろうとしている世界史データベース、つまり「縦軸」(通時的)のデータベースが完成したら、世の中の見通しはもっとよくなるんじゃないですか。楽しみです。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

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