114. 偏心固視を有する弱視の年齢増加に伴う治療効率の低下を定量化した。8歳までの患者ではある程度の改善が見られたものの高齢の患者では治療効率が著しく低下した。一方若年層では,初期の視力が低くても3か月後には中心固視が得られ,眼間の視力差が少なかった。

Electronically monitored occlusion therapy in amblyopia with eccentric fixation

Mehmed B, Fronius M, Pohl T, Ackermann H, Schramm C, Spieth B, Hofmann C, Kohnen T, Wenner Y. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2022 May;260(5):1741-1753. doi: 10.1007/s00417-021-05416-5. Epub 2021 Oct 16. PMID: 34655332; PMCID: PMC9007808.


目的(背景):偏心固視を伴う弱視は,特に早期に診断されない場合,中心固視を伴う弱視に比べ視力が低下することが知られており,治療上の課題となっている。そのため,診断が遅れてからの治療は否定されがちである。今回,遮閉の電子モニタリングにより,この稀な小児患者の年齢依存的な投与量反応と治療効率,および固視の移行について,初めて焦点を絞った洞察を得る機会を得ることができた。

方法:本研究では,12か月間の遮閉治療中に偏心性固視を呈した弱視者を対象とした前向きなパイロット研究を行った。視力評価,TheraMon®-microsensorによる遮閉時間の記録,直視型検眼鏡による固視の判定を行った。用量反応関係および治療効率を算出した。

結果:本研究では,2.9~12.4歳(平均6.5歳)の斜視および混合弱視の12名が参加した。遮閉の指示時間の中央値は7.7時間/日(範囲:6.6-9.9),1日の遮閉時間の中央値は5.2時間/日(範囲:0.7-9.7)であった。試験終了時,視力増加の中央値は0.6 log units(範囲:0~1.6),残存眼間視力差(interocular visual acuity difference:IOVAD)は0.3 log units(範囲:0~1.8)であった。治療開始後6か月目以降では,視力増加もIOVADの減少も有意な差はみられなかった。4歳未満の小児では,試験終了時に残存するIOVADが最も少なく,最も良好な効果が認められた。効率性の計算では,最初の2か月は100時間のパッチ適用で約1 line、6か月以降は0.5 lineの視力向上が見られた。治療効率は年齢とともに有意に低下した(p = 0.01)。中心窩での固視は中央値3か月後(範囲:1~6)に達成された。3人の患者(6歳以上)は中心固視が得られなかった。

結論:偏心固視は治療成功に対する課題である。本研究では,電子モニターに基づき,偏心固視を有する弱視者の年齢増加に伴う治療効率の低下を初めて定量化した。8歳までの患者ではある程度の改善が見られたものの,高齢の患者では治療効率が著しく低下した。一方,若年層では,初期の視力が低いにもかかわらず,中央値で3か月後に中心固視が得られ,IOVADが少なかった。したがって,早期診断と集中的な遮閉の必要性が強調されるべきである。

※コメント
偏心固視患者に対する遮閉法がどのように有用であるかを調べた報告です。
やはり,若年期に行動した方が効果が強いようです。早期発見、早期治療ですね。

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