94. 遠見矯正眼から近見矯正眼に刺激が変化すると,モノビジョンに適合した早期老眼者の多くは調節が起こり,近見矯正眼の画質は低下する。これらの結果から,早期老眼のモノビジョンは,最適な調節戦略でないことが明らかとなった

Impact of monovision on dynamic accommodation of early presbyopes

Almutairi MS, Altoaimi BH, Bradley A. Ophthalmic Physiol Opt. 2020 Jan;40(1):47-59. doi: 10.1111/opo.12660. PMID: 31879995.


目的:早期老眼者において,モノビジョンが調節力,瞳孔反応,球面収差,結果としての画質の動的変化に与える影響を検討すること。

方法:屈折状態,瞳孔の大きさ,球面収差のレベルを,Shack-Hartmann式収差計を用いて,両眼開放下で刺激を近づける(2mから40cm),または遠ざける(40cmから2m)ことにより,初期老眼をもつ9人(40~50歳,平均42±2.37歳)の調節力をモニターした。また,完全な老眼(調節力なし:non-accommodating)の被験者2名(46歳と61歳)および若年成人2名(26歳と29歳)の比較データも収集した。各被験者には,4つの異なる測定条件が適用された:(1)両眼とも2mで矯正,(2)両眼とも40cmで矯正,(3)右眼を2mで矯正したモノビジョン,(4)右眼を40cmで矯正したモノビジョン。単色画質は,AreaMTF指標を用いて定量化した。

結果: モノビジョンの場合,多くの早期老眼者は,刺激が片眼の網膜共役面から他眼の網膜共役面に急激に変化すると,矯正された右眼(遠見または近見)優先の調節反応を示した。しかし,初期の老眼の中には,常に遠見矯正眼,近見矯正眼,あるいは輻湊によって調節反応が優先されているものがあった。刺激が近づいたとき,近見矯正眼が高画質となるのは,調節反応がない場合だけであった。しかし,調節反応が始まると画質の低下が観察された。モノビジョン矯正は,両眼遠見矯正と比較して,調節反応と瞳孔反応の潜伏時間は長くならなかった(p > 0.05)。初期の老眼では,近見視の際に球面収差が減少したが,これは主に瞳孔の縮瞳によるもので,レンズ形状の変化によるものでは無かった。

結論:遠見矯正眼の網膜共役面から近見矯正眼の網膜共役面に刺激が急激に変化すると,モノビジョンに適合した早期老眼者の多くは調節し,近見矯正眼の画質は向上するどころか低下する。これらの結果から,早期老眼のモノビジョンは,最適な調節戦略がとられていないことが明らかとなった。

※コメント
調節力がある状態でモノビジョンをすると,遠見視から近見視に切り替える際,近方眼へうまくシフトをすることができず遠方眼に調節がかかってしまう。そのため近見の画像の質も落ちるとのこと。
優位眼の問題もあるのでは?と思いましたがどうなんでしょう。


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